今はちょっと、ついてないだけ：映画短評

シェアハウスを通じて交流していく、3人のおっさんと一人の美女。深川麻衣演じるメイクアップアーティストの夢破れたヒロインは、奇しくも『おもいで写眞』で演じたキャラと被りつつも、おっさんたちを優しく見守る“聖母”キャラとして、しっかり着地。また、玉山鉄二演じる元カメラマンの主人公が淹れるコーヒーの香りが今にも漂ってきそうな癒し映画であることには間違いない。ただ、妙に長い導入部や時間軸をいじった構成が観る側を混乱させるだけでなく、高橋和也と大友花恋の出演シーンが妙に不気味で浮いている感アリ。全体的に冗長と取るか、世界観にどっぷり浸れると取るかが、評価の分かれどころだろう。

　かつてバブル時代に持てはやされた元・人気カメラマンと、軽薄短小なバラエティ番組を作って羽振りの良かったテレビマン。今では仕事も名声も自尊心も失った落ちぶれ中年男性2人を中心に、同じシェアハウスで暮らすワケアリな住民たちが、お互いに助け合いながら人生の再スタートを切るべく奮起していく。人生も世の中もままならぬもの。長引く閉塞感で疲弊しきった日本社会の実像を主人公たちに投影しつつ、それでも前を向いて生きて行こうとする彼らの、ささやかな一歩に微かな希望の光を見出そうとする。シビアではあれど決して深刻になり過ぎず、痛みを知る人間同士の温かな交流を優しいタッチで描いたところが良い。