激怒 (2021)：映画短評

タイトルやポスターイメージでは川瀬陽太版『フォーリング・ダウン』のようだが、じつはそうでもないディストピアが舞台のバイオレンス・アクション。過去に『東京残酷警察』『ヘルドライバー』のスピンオフ作品を手掛けていた高橋ヨシキ監督だけに、随所にその影響が出まくっているところは気になるところ。だが、中原昌也によるノイズミュージックが不穏ながら高ぶらせるオープニングに、藤原カクセイによる絶妙なタイミングで登場する残酷描写、そして溺愛する映画のオマージュ大会など、粗削りながら、やりたいことをやっているところに潔さを感じる。いきなり意外なキャストが登場するなど、遊び心もたっぷりだ。

多くの映画ファンが薫陶を受けた映画ライター・高橋ヨシキの初長編監督作品。
行き過ぎたバイオレンスはブラックなユーモアに繋がらることを改めて感じさせてくれたクライムストーリー。「時計仕掛けのオレンジ」を彷彿とさせる暴力の在り方の物語になっていました。
監督もプロデューサーを兼任した主演俳優も低予算・自主映画に近いものだということを語っていますが、映画自体は絵も音も、演技もしっかりしている。こういった映画には誉め言葉にならないかもしれないがちゃんとしている。荒々しさと粗さを混同している自主映画作家はこの映画を見てその差を体感して欲しい。