あつい胸さわぎ (2022)：映画短評

一見、ヘヴィな難病モノに見えながら、じつは母と娘の絆を軸としたハートウォーミングな群像劇であり、意外と笑えるシーンも多い。そういう意味では『湯を沸かすほどの熱い愛』に似た感覚を覚えるが、あそこまで作り手のあざとさを感じないうえ、葛藤するヒロイン・千夏を演じる吉田美月喜がとにかく魅力的。常盤貴子や前田敦子相手に、さまざまな感情を表現し、本年度の新人賞を総ナメしてもおかしくないほどの好演である。また、原作となる戯曲の完成度が高いなか、映画オリジナルとなる佐藤緋美演じるター坊を重要なキーパーソンに据えた高橋泉による脚色も見事。いろんな意味で、エールを送りたくなる一本である。

思わぬ拾い物といった表現は作品に対して失礼に当たるかと思いますが、本作はまさにそんな感情を抱かせるステキな映画でした。吉田美月喜演じるヒロインがまずとても魅力的。儚さ、弱さとどこか開き直るような強さが絶妙なバランスで、彼女の好演で作品が数段上に上がった感があります。常盤貴子、前田敦子の巧さは改めて言うまでもないのでしょうが、やはり絶妙です。西で過ごしていたこともあるので常盤貴子の関西弁も自然でした。奥平大兼の背伸びしたがる青年像も良かったです。テーマと少ない人数でちょっと手が伸びにくいかもしれませんが良い映画です。