JOIKA 美と狂気のバレリーナ (2023):映画短評
JOIKA 美と狂気のバレリーナ (2023)
ライター2人の平均評価: 4
名門バレエ団の不都合な裏側を暴くバレリーナ残酷物語
ロシアン・バレエの殿堂ボリショイ劇場に憧れ、ボリショイ・アカデミーの生徒として受け入れられた米国人少女ジョイ。才能と実力さえあれば必ず入団できると信じ、血の滲むような努力で過酷なレッスンをこなしていくのだが…?ボリショイ・バレエ団の不都合な舞台裏を暴露して世間に衝撃を与えたアメリカ人バレエダンサー、ジョイ・ウーマックの実話。なにかと『ブラック・スワン』と比較されがちだが、実際は『セッション』のテイストに近いと言えよう。そのうえで一部の天才以外は実力よりもコネと金がものを言い、人権侵害とやりがい搾取がまかり通る名門バレエ団の腐敗した実態を告発する。それでも夢に食らいつくジョイの執念に感服!
壮絶な努力に壮絶な執念が結びついてこそ、見出せる道
米国人として初めてボリショイバレエ団への入団が認められたダンサーの実話に基づいており、『ブラック・スワン』のようなサイコ演出はない。それでもヒロインの凄まじい意志の強さは伝わってくる。
名門アカデミーでのレッスンは厳しく、お約束のようにライバルとの足の引っ張り合いもある。それより高い壁となるのが、ロシア人以外はボリショイに入れないという事実。乗り越える突破力は狂気というより執念に近い。
ひたすら芸を磨く自己鍛錬、舞台に立つことへの意欲や、それによって失うものにフォーカス。そういう意味ではサスペンスというより、壮絶なドラマだ。6月公開の邦画の話題作『国宝』と見比べるのも一興。