バースデイ・パーティ/天国の暴動 (2023):映画短評
バースデイ・パーティ/天国の暴動 (2023)
ライター2人の平均評価: 4.5
ロックはここまで、恐ろしいアートになる!
2015年時のN・ケイヴがシリアスなアーティストであったことは『~20,000デイズ・オン・アース』を観れば明らかだが、10~20代だった1980年前後から彼がブレていないことがよくわかる一作。
酒と麻薬で景気をつけ、荒々しく痛々しいパフォーマンスを披露するバンド。フロントマンであるケイヴの、のたうち回るようなアクション、それに応える演奏が、とにかく凄まじい。現在はアートに思考が結びついている彼だが、「考えるのではなく、体が勝手に動く」という若さの激情に圧倒される。
切り絵アニメ風の再現映像を除けば、ライブ映像もインタビューも貴重なフッテージで固められ、ファンにはそれだけで嬉しい。
短期間の激走の美しさ
ヴェンダース製作総指揮の本作は『ベルリン・天使の詩』(87年)の“前史”を映し出す。あの劇中に登場した二組のバンド、クライム&ザ・シティ・ソリューションとニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズに分裂したのが、豪州出身、1983年に解散したバースデイ・パーティだ。
このドキュメンタリーが示すのは、わずか数年で空中分解した伝説のバンドの壮絶な狂騒。刹那な魂の燃焼は、のちのニック・ケイヴの長きに渡るキャリアがとても想像できないほどだ。またラインハルト・クライストによるグラフィック・ノヴェル『Nick Cave: Mercy on Me』を援用したアニメパートが、若き堕天使たちの“神話”を補強していく。