季節はこのまま (2024):映画短評
季節はこのまま (2024)
ライター2人の平均評価: 3.5
知的でウィットに富んだ会話とフランスの田舎の美しい景色
コロナ禍のロックダウンによって、全てが止まってしまった5年前。フランスの片田舎にある先祖代々の古い実家に避難した映画監督の兄と音楽評論家の弟、彼らのガールフレンドたちの4人が、降ってわいたおうち時間の中でそれぞれが自身の人生や生活を見つめ直していく。ロケ地は監督の実家、主人公も監督がモデルという極私的な作品。こだわりも自己主張も強い頑固なインテリ兄弟と聡明で軽やかな女性たちの、ちょっと毒があるけど知的でウィットに富んだ会話の面白さと、自然豊かなフランスの田舎の美しくもノスタルジックな風景が何とも魅力的。エリック・ロメールがパンデミックを題材に映画を撮ったらこうなったかもしれませんな。
オリヴィエ・アサイヤス流、停まった時間の庭
監督の実体験を反映した本作は、良い意味で最もユルいパンデミック/ロックダウン映画(笑)。感染の恐怖や不安に怯えながらも、日々の様子は微温的な幸福感に満ちている。仕事に追われる怒涛の時間の流れが一旦ストップして、少年期に住んだ実家でのんびり過ごす想定外のヴァカンス。これも確かに2020年のリアルな側面だったと思う。
コメディの強度は『冬時間のパリ』からアサイヤスと組み始めたV・マケーニュの力が大きい。冒頭の“Amazon論争”から笑えるし、キャラ的には『ハンナとのその姉妹』のW・アレンみたい。撮影はE・ゴーティエで、やはりコロナ禍を撮ったジャ・ジャンクー『新世紀ロマンティクス』との比較も一興。