トレイン・ドリームズ (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 4.5
一人の小さなドラマが「人生とは何なのか」を伝える珠玉の一編
20世紀初めのアメリカで、森林伐採を生業とする主人公…と、「静かな」物語を予感させ、実際にそのとおりの展開だが、じっくりと見えてくる「人間の真理」が中盤から激しく心を揺さぶる。紡ぎ出されるセリフの中から、もしかしたら「人生を変える」言葉が見つかるかも。そんな名文学のような逸品。
自然光の効果を駆使した映像がひたすら美しい。主演ジョエル・エドガートンは決して感情を露わにせず、内にたたえた喜怒哀楽を伝える高難度の演技を達成。
現在より「死ぬこと」が身近だった時代。それでも主人公が体験する喪失は超深刻レベルなのだが、世の中が大きく変わる終盤、その喪失も含め、すべてを至福と陶酔で包み込む演出にも感心。
大きな目で見た人ひとりの人生の小ささと重さ
20世紀はじめを生きた孤独な男の半生を静かに見つめていく、しんみりした詩的な作品。「ジョッキー」でもクリント・ベントレーと組んだ撮影監督アドルフォ・ヴェロソによる、照明を使わず自然光だけでとらえた大自然の光景や、昔の写真を見るようなフラッシュバックシーンが、繊細な形で感傷を高めていく。悲しいストーリーながら絶望的にはならず、人ひとりの人生は大きな視点から見るととても小さいが、そこにはたくさんのことが詰まっているのだと感じさせる。そして、アメリカという国は、主人公ロバートのようなごく普通の人や、移民、さまざまな事情を持つ人などよって作られたのだということも。J・エガートンの演技も最高。




















