開戦前夜:映画短評
“日本論”を示すディスカッションアクトの傑作
本作の重要な核心は、戦争責任の所在を単線的な指弾ではなく、日本社会を覆う集合的な“空気”に求めた視点だ。評論家・山本七平が唱えた同調圧力の構造が、若きエリートたちの論理的結論を呑み込み判断を歪めていく。ここに日本では稀なインテリジェンス(情報活動)映画の知的興奮と、歴史の暗がりを照らす批評性が同居する。
総力戦研究所で交わされる議論は、情緒を排し数字とロジックだけで世界を読み解こうとする討論劇の緊張そのものだ。意見がデータによって反転していく過程は観客を模擬内閣へと巻き込み、群像の呼吸まで可視化する。“理詰めで劇の密度を上げていく”作業が、石井裕也の資質にぴったりハマったのかもしれない。
この短評にはネタバレを含んでいます













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