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小津安二郎、黒澤明、市川崑ら映画人は終戦の日に何を考えたのか?膨大な調査で迫る「映画人たちの8月15日」

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「映画人たちの8月15日」
「映画人たちの8月15日」 - 写真提供:小津家

 1945年8月15日の敗戦の日、日本の映画人たちが何を考え、何をしていたかに迫ったノンフィクションW「映画人たちの8月15日」が8月8日、15日の2週にわたってWOWOWにて放送される。長谷川一夫さん、池部良さん、小津安二郎さん、黒澤明さんといった映画人たちの敗戦当日、さらには戦前・戦後の日本映画界をめぐる状況までをとらえた貴重なドキュメンタリーとなっている。

 同番組は、今から約50年前に組まれた映画雑誌「キネマ旬報」の特集「八月十五日の日本映画」を基に、戦前・戦中・戦後の日本映画界の実態に迫ったドキュメンタリー。同特集には1960年当時第一線で活躍していた、片岡千恵蔵さん、田中絹代さん、山田五十鈴さんといった40名あまりの映画人たちが寄せた、終戦の日にどこで何をしていたかという証言がまとめられており、史料としても非常に貴重なものだ。同番組では、それらの証言を映像として再構成しており、中には製作当時に検閲で削られてしまったシーンを絵コンテから再現したものも含まれている。

ノンフィクションW「映画人たちの8月15日」番組ページ

 本ドキュメンタリーのもう一つの柱になっているのは、戦前・戦中・戦後における映画製作をめぐる状況。検閲にまつわる出来事はそれほど山の数ほどあるが、日本における代表的なものとしてよく取り上げられるのは昭和14年に制定された「映画法」と戦後GHQによる映画製作についての注意事項。とりわけ後者は「時代劇の禁止」といった内容も含まれる非常に厳しいものであり、このために終戦直後に完成した黒澤監督の『虎の尾を踏む男達』や市川崑監督の『娘道成寺』はそれぞれ上映禁止という憂き目に遭っている。また、戦後は映画『晩春』『お茶漬の味』といった上流階級のホームドラマを好んで撮り続けた小津監督も、一見戦争とは無関係に見えるものの、実はその作品群には戦争の影が見え隠れしていることを同番組は明らかにするなど、当時の映画作品と戦争が切っても切れない関係にあることがよくわかる。

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 くしくも、「キネマ旬報」の特集記事が組まれたのは1960年。1950年代後半より訪れたという日本映画最盛期の真っただ中のことだ。当時はすでにGHQの検閲もなく、映画人たちは久々に自由な環境で映画製作に取り掛かることができた。今回のドキュメンタリーからわかるのは、当時の映画界隆盛は決して偶然ではなく、戦前、戦中から続く出来事の流れの一つとして存在しているということ。だが昨年亡くなった池部良さんをはじめとして、当時の日本映画界を支えた名優・名匠の多くはこの世を去ってしまったため、それを直接確かめるすべはほとんど残されていない。「キネマ旬報」の寄稿者で唯一現在も現役で活躍しているのは、日本最高齢の映画監督としてまもなく映画『一枚のハガキ』が公開される新藤兼人だけ。だからこそ、今回の番組が終戦から66年たった今年に放送されることの意味が重く感じられる。

 2週にわたって放送される同番組は、8月8日放送の第1回では主に戦前から戦中の流れを、15日放送の第2回では戦後の流れを追う予定となっている。戦争、そして終戦とそれまでの価値観を百八十度転換することを強いられた当時の映画人たち。今年の3月に東日本大震災に襲われた現在の映画人にとっても、本作で描かれているようなことはあながち無関係とはいえないかもしれない。(編集部・福田麗)

ノンフィクションW「映画人たちの8月15日」は8月8日、15日にWOWOWにて放送

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