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安藤政信、ジョン・ウー監督製作のアカデミー賞台湾代表映画に出演…日本人としての政治的質問には困惑

安藤政信、ジョン・ウー監督製作のアカデミー賞台湾代表映画に出演…日本人としての政治的質問には困惑
安藤政信 - Photo:Harumi Nakayama

 日本統治下時代の台湾で起こった抗日運動「霧社事件」を描いた台湾映画『ウォーリアーズ・オブ・ザ・レインボー:セディック・バレ(英題)』がこのほど、第84回米国アカデミー賞外国語映画賞の台湾代表に選ばれたことが同国行政院新聞局より発表された。日本人的には複雑な部分もあるが、日本人キャストの安藤政信は同作品が参加していたベネチア国際映画祭でインタビューに答え、「今回、初めて台湾で仕事をし、今後いろんな人たちと繋がっていくであろう中で、こうした歴史を知らずにいるのと、知ってから仕事をするのとでは捕らえ方が全然違うと思う。本作に出演できてよかった」と胸を張った。

 同作品は1930年の台湾で、日本からの抑圧に耐え切れずに蜂起した原住民と日本兵らの血で血を洗う攻防戦を描いた歴史大作。中国のジョン・ウー監督がプロデューサーを務め、『海角七号/君想う、国境の南』のウェイ・ダーション監督がメガフォンを執っている。ベネチアでは上映時間150分のインターナショナル・バージョンで公開されたが、台湾では約4時間を前編・後編に分けて上映。9日に台湾68館で公開された前編は、初日興行収入1,088万台湾ドル(約2,810万円)を叩き出し、台湾映画の過去最高成績を記録する好スタートを切っている。

 そんな中で安藤が演じたのは現地勤務の警察官役で、当初は原住民と友好的な関係を結んでいたが、闘争の最中に家族を殺害されて憎しみに転じる。安藤は、2009年にチェン・カイコー監督『花の生涯~梅蘭芳(メイ ラン ファン)~』にも出演しており、日本占領下の中国を舞台にした同作品では日本軍少佐を演じている。『ウォーリアーズ・オブ・ザ・レインボー:セディック・バレ(英題)』への出演は、この『花の生涯~梅蘭芳(メイ ラン ファン)~』での実績や、北野武監督『Kids Return キッズ・リターン』と深作欣二監督『バトル・ロワイアル』と世界的に知られる作品に出演していることもあって安藤の元へ届いたようだ。しかしいかんせん、アジアで、歴史の暗部をあぶり出す作品に登場する日本人役となると敵役になってしまうことが多い。

 安藤も「ベネチアで取材を受けていても、大半は『日本人として霧社事件をどう思うのか?』という質問が集中するから辛いし、『日本人がやり込められる場面に快感を覚えた』と言うような人もいると聞くと正直、傷つくところもあります。でもそれは仕方がないことだと理解しています。そもそも自分は、作家性に惚れ込んだ監督であれば(悪役だろうが)良いと思って出演しているし、映画は映画であって、政治とはかけ離れたものだと思っています。役者として、そこまで責任を背負うことはないと考えています」と出演を決めた理由を語る。

 撮影は2010年1月~4月に台中の、山の中で行われた。厳しい撮影環境に加え、劇中で駆使する台湾語のセリフも豊富にある。安藤は「台湾語は音の出し方も喉を使って出すとか、結構細かいんです。でも、役者としてカタコトで表現するよりはきちんと表現し、いつも高い志で芝居をしたいと思っているので結構練習しましたね。撮影は、中国に比べるとラクでした。撮影は山の中だけど、ちゃんとホテルに宿泊できましたから。中国の場合はアバウトだし、田舎に行くと食事もツライものが……(苦笑)。でも、自分は映画が好きだから、そういうことにも耐えて、いろんな監督に出会いという気持ちの方が強いですから」と笑顔で語った。どんな質問を投げても前向きな答えが返ってくる。日本を離れて、アジアで孤軍奮闘した経験が安藤を一回りも二回りも大きく成長させたようだ。

 しかし、縁と言うものはどこで繋がるか分からない。『ウォーリアーズ・オブ・ザ・レインボー:セディック・バレ(英題)』撮影後、石井克人監督『スマグラー おまえの未来を運べ』(10月22日公開)のオファーが来たのだ。安藤にとっては、三池崇史監督『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』以来、4年ぶりの日本映画。しかも、背骨という名の過激な中国人の殺し屋役だ。今度は中国語に挑むことになったが、前述した2作品で、中国語圏と人たちと触れた安藤の語学能力は自然に培われていたようだ。『スマグラー おまえの未来を運べ』の中国語指導を担当したスタッフが「安藤君に教えることはないよ」と舌を巻いたほど、発音は完璧だったという。それを聞いた安藤は、「そう言って頂けるとうれしいですね。4年間、アジアの作品をやってきたからこそ背骨の役をいただけたと思いますし。日本では僕が役者を辞めたんじゃないか…と思っている人もいるかもしれないけど、この4年間、自分がやってきたことは無駄じゃなかった。自分自身、良い芝居をすれば周りの人の心に引っかかって、絶対オファーが来ると信じていたから」と胸の内に秘めていた、役者に賭ける情熱を吐露した。

 もっとも、『スマグラー おまえの未来を運べ』の撮影であばらを骨折して体調を崩し、東日本大震災では「自分はここまま役者を続けていいのか?」と一時、悩んだ時期もあったという。だが7月に岩手県大槌町に土嚢(どのう)を造るボランティアに参加し、逆に「自分には役者しかない」とエネルギーを得て帰って来たという。仕事の方も、ベネチアに続いて『ウォーリアーズ・オブ・ザ・レインボー:セディック・バレ(英題)』と『スマグラー おまえの未来を運べ』の2作がトロント国際映画祭に出品、そしてアカデミー賞台湾代表と追い風が吹いている。

 安藤は「アジアにはジャ・ジャンクー監督に、ツァイ・ミンリャン監督、そしてウォン・カーウァイ監督と気になる監督がまだまだいます。絶対、一緒に仕事をしたい」と今後も日本のみならず、広くアジアで活躍していく野望を語った。(取材・文:中山治美)


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