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妻夫木聡、〇〇俳優からの脱却「ようやく本当の第一歩」

妻夫木聡、〇〇俳優からの脱却「ようやく本当の第一歩」
プライベートの変化で新たな課題も - 写真:高野広美

 18日に公開される映画『愚行録』で一家惨殺事件を追う週刊誌記者をストイックに演じた妻夫木聡。「役によって顔の印象が変わる」と共演者の満島ひかりが言うように、『怒り』『家族はつらいよ』『殿、利息でござる!』『ミュージアム』など、昨年出演した作品だけでも、そのカメレオンぶりには目を見張るものがある。現在36歳、輝かしいキャリアを積み重ねながら、「ようやく俳優としての一歩を踏み出せた」と語る妻夫木が、これまで歩んできた道のりを振り返った。

 夢に向かってがむしゃらに駆け抜けた10代。大人になろうと背伸びしていた20代。そして周囲を見る余裕が生まれた36歳の妻夫木は、現在の心境をこう語る。「言葉遊びじゃないですが、新人俳優とか、若手俳優とか、ずっと“〇〇俳優”というものが付いてきた。それが30代になり、ようやくただの“俳優”になって、本当の意味で第一歩を踏み出せた感じはありますね」。

 いつの間にか、業界の中でいろいろな知恵を植え付けられ、「こうやれば、自分はこう映るんじゃないかとか、ここらで差し入れでもしておこうかとか、だんだん無駄なことを考え始めた」と苦笑いする妻夫木。だが、30歳を超えたあたりで、「芝居をやる上で一番大切なことは何だ?」と自問自答したときに、「そうだ、芝居だ!」という極めて当然の答えに改めて気付いたという。「僕ら俳優は、芝居のことだけ考えていればいい。この作品を良くするために、なんてことも、監督が知恵を絞ればいいこと。とにかく芝居に集中する、そう考えるようになったら、また自由になれた」と述懐する。

 もちろん『ジョゼと虎と魚たち』(2003)のころのように、若さゆえの自然な演技はもうできない。芝居を楽しむといっても10代、20代にはない新たな苦しみも生まれる。「当時と同じようなことをやっても『ああ、リアリティーのある芝居をしたんですね』と言われるわけで、そこが違うんですよね。若いときは自然にやれていたことが、今は芝居としてきちんと取り組まないと表現できない。当然、役への入り方、捉え方、取り組み方が変わってくる」と語気を強める。

 さらに、プライベートでの変化も、仕事に対する姿勢に少なからず影響を与えていると妻夫木はいう。「僕は役に入り込んでしまうと、まったく周りと連絡を取らなくなっちゃうんです。でも結婚したら、それは有り得ないこと。将来、子供ができたらなおさらですよね。そういった意味でも、役への入り込み方をどうするかが今後の課題かな」と表情を引き締めた。

愚行録
(C) 2017『愚行録』製作委員会

 そんな俳優として進化し続ける妻夫木が、2017年、新たに挑んだ最新作『愚行録』は、人気小説家・貫井徳郎の直木賞候補作を実写映画化した衝撃のミステリー。未解決の一家惨殺事件の真相を追う妻夫木演じる記者・田中武志が、被害者夫婦と関わりのあった人物を取材するうちに、思わぬ真相にたどり着く。

 育児放棄の疑いで逮捕された妹・光子(満島)をめぐる苦境の中、一人一人、取材相手と対峙しながら、ジワジワと真実に近づいていくストイックな役どころをこれまでにないアプローチで表現した妻夫木。「田中がフィーチャーされているわけではないけれど、ストーリーテラーとしてとても重要な役割を担っている。そこのバランスが特に難しかったですね」。人間の“愚かさ”を俯瞰(ふかん)で観ていたはずの観客が、いつの間にか妻夫木演じる田中に底なし沼へと導かれる。この映画には、そんな不気味な恐怖が潜んでいる。(取材・文:坂田正樹)

映画『愚行録』は2月18日より全国公開


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