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漫画家・押見修造が吃音と向き合うまで 青春の痛みを描く理由

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押見修造

 2013年放送のテレビアニメ「惡の華」、2014年公開の映画『スイートプールサイド』、2017年放送のテレビドラマ「ぼくは麻理のなか」など映像化が相次ぐ漫画家・押見修造。2011年12月から2012年10月にかけて、太田出版WEB連載空間ぽこぽこに連載された、自伝的漫画を実写映画化する『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』が7月14日より公開される。長きにわたって、少年少女の切実な青春を描き圧倒的な支持を受ける押見が、原作誕生の経緯、吃音というコンプレックスと向き合った体験、実体験を描く理由までを語った。

【動画】押見修造の漫画を映画化する『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』予告編

 うまく言葉を発することができない吃音に悩んできた押見が、その体験をベースにした「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、周囲とのコミュニケーションが苦手な高校1年生の志乃(南沙良)と、音楽好きだが音痴な同級生・加代(蒔田彩珠)の絆、成長を描く物語。原作誕生のきっかけは、2002年に「真夜中のパラノイアスター」でデビューしてから約10年後、担当編集者から単行本1巻分ほどの分量の企画を持ち掛けられたことによる。

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押見が吃音に悩んだ実体験をベースにした原作に基づく映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(C) 押見修造/太田出版 (C) 2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会

 「当時、割とえぐい漫画を描いていたので、それとは違うものを描きたいと思っていました。そういう内容を考えていたときに、ちょうど自分の吃音に関する引き出しを使ってなかったので、しかもそれをポップに描けたら自分の青春時代も浮かばれるんじゃないかと思ったのが動機です」

 作品を通して自身のコンプレックスと向き合うことには覚悟が必要のように思えるが、実際には作品にすることで逆に楽になることもあったという。「割と気持ちよかったですね。僕も(映画のヒロイン・志乃と同じく)自分の名前がうまく言えないんですが、あまり人に真剣に話すような機会がなかったので。友人などは(吃音があると)わかっていたと思いますし、僕自身は笑いに変えて乗り切っていたところがありますが、漫画の形にすることでようやく吐き出せたような気がします」

 劇中、志乃に劇的な変化をもたらす加代には、押見の「こんな人がいてくれたら」という願望が込められていると言い、志乃と加代の関係にはスカーレット・ヨハンソンの出世作として知られる2001年の青春映画『ゴーストワールド』を参考にしている。「女の子二人が、中途半端な田舎で行き場所がなくてうだうだしているイメージは、『ゴーストワールド』の影響が大きいかなと。それと、あの映画では片方の女の子がどうなったのか、あいまいなラストを迎えるんですが、きっと二人はあの年齢のあの時期だけ親密で、その後別々の道を歩んでいったということだと思うんです。ある種の自立を獲得したら離れていく。志乃と加代もそういった関係なのかなと」

押見が映画ならではの魅力を持つシーンとして挙げた、志乃&加代の歌唱シーン (C) 押見修造/太田出版 (C) 2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会

 現在連載中の2本のうち、母親の息子への異常な愛を描く「血の轍」(ビッグコミックスペリオール・小学館)も、部分的に実体験がベースになっているというが、こちらは着地点は見えてきているものの「描きながら大分具合が悪くなってきている」と苦笑い。押見にとって、青春期の痛みはいつになっても過去にはならないという。「よく自分のつらかった経験を語る際に黒歴史とかそういう言葉が用いられますけど、そういうことを言う場合って、もう過ぎ去ったものとして捉えている、客観化しようとするような感覚があると思うんです。でも自分の場合はいまだに囚われている感覚がある。もちろん、そのまま描くと作品として面白くならないので膨らませたりアレンジはしていますが、読んだ人に共有してもらいたい、わかってもらいたいというか、漫画の形で追体験してもらうのが理想です」

 押見が長年抱き続けた苦悩を投影した本作には、映画初主演の南沙良と蒔田彩珠、そしてこれが長編商業映画デビューとなる湯浅弘章監督というフレッシュな顔ぶれが集結。押見は、「(南が)泣くシーンは漫画ではなかなかできない生々しさがあると思いましたし、歌のシーンが素晴らしい。生身の役者さんが歌うことに意味があると実感しました」と評している。(取材・文:編集部 石井百合子)

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