巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督、日本未公開の秀作を語る

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 映画『眺めのいい部屋』『日の名残り』など数々の秀作を手掛けてきた巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督が、自身の過去の作品『ボストニアン』(日本未公開)について、11月30日(現地時間)、ニューヨークのクォッドシネマで行われた特別上映後のQ&Aで語った。

【作品写真】脚色を手掛けた『君の名前で僕を呼んで』

 同作は、ヘンリー・ジェイムズの「ボストンの人々」を映画化。南北戦争後、北部で成功を狙う南部の紳士ランサム(クリストファー・リーヴ)は、ボストンで男女平等実現のために活動する、いとこのオリーヴ(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)と参加したある会合で、見事な演説を披露する女性ヴェリーナ(マデリーン・ポッター)と出会う。オリーヴは、ヴェリーナの演説の才能にほれ込み、彼女と男女平等実現のための活動を始めるが、ヴェリーナはランサムに惹かれていき、一方オリーヴは、ヴェリーナに秘めた恋心を抱き始めていく。

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 数多くの作品の中で、今作がお気に入りの一つであると語るアイヴォリー監督は「ヘンリー・ジェイムズなのだから、当然かもしれないが、原作のキャラクターそれぞれのせりふが驚くほど素晴らしいんだ。それに今作は、ヘンリーの作品の中では珍しく、舞台がアメリカなんだ。もし、彼の作品を読んだことがない人がいたとしたら、この原作から読み始めてみるのも良いかもしれないね」と薦めた。

 今作は1984年に手掛けられ、オリーヴとヴェリーナのレズビアンの関係も描いているが、現場では誰もどのように描くべきと、アイヴォリー監督に指摘してこなかったそうだ。「(原作を読んだ)女優たちが、自分ができると判断して、原作以上のものを表現してくれたのだと思うよ。ヴァネッサが演じたオリーヴはとても強い女性で、もし原作が今日の設定だったら、彼女たち二人の関係はより深いものになっていただろうね」

 当時は、男性からの経済上のサポートを受けずに、女性同士が結ばれていく関係をボストン・マリッジと呼んでいた(レズビアンの関係だけでなく、女性同士が単に経済的なサポートをし合っているだけでもそう呼んでいた)そうで、それは、南北戦争後に多くの男性が家に戻ってこずに、経済的に女性同士が支え合わなければいけなかったためだという。ヘンリー・ジェイムズの妹アリス・ジェイムズもまた、原作の女性たちのような関係があったそうだ。

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 キャスティングについては、クリストファーを最初から第1候補にしていたが、望んでいた時期にはすぐに仕事ができなかったそうだ。「彼は当時『スーパーマンIII/電子の要塞』に出演していて、あの作品の撮影を終えるまで、僕らは撮影ができなかったんだ。だがいったん彼が現場に来ると、彼はしっかりと準備をしてくれていて、地方のアクセントも見事にマスターしていたよ」

 オリーヴ役については、実はグレン・クローズが主演予定だったのだとか。「だが彼女は、当時ロバート・レッドフォードの『ナチュラル』にも同時に出演していて、2作品の現場を行ったり来たりしながら撮影を行っていたんだ。だがある日、彼女のマネージャーが、今作のプロデューサー、イスマイル・マーチャント(アイヴォリー監督と共にマーチャント・アイヴォリー・プロダクションを設立した人物)に、『彼女がこの映画に出演するのは、彼女が現場に来ることができると言って、僕らがそれを認めたときだ』と度が過ぎた発言をしたんだ」

 結果、グレンが解雇され、ヴァネッサがオリーヴ役に。だが、ヴァネッサも当初は題材的に出演を拒否していたそうで、「当時の彼女は政治的な発言やデモなどの参加で、雇われづらい女優として、しばらく仕事がなかったんだ。そんな背景もあり、最終的には引き受けてくれたよ」と紆余曲折の製作秘話を明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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