是枝裕和監督、キュアロン監督らとアカデミー賞イベントに参加

第91回アカデミー賞

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アカデミー賞外国語映画賞候補たちが集うシンポジウムにて。左からアルフォンソ・キュアロン監督、ナディーン・ラバキー監督、パヴェウ・パヴリコフスキ監督、是枝裕和監督 Aaron Poole / (C)A.M.P.A.S.

 『万引き家族』が第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた是枝裕和監督が、現地時間21日、同賞の候補者たちを一堂に集めて開催される毎年恒例のシンポジウム「オスカーウィーク:フォーリン・ランゲージ・フィルム」に登壇。ビバリーヒルズにある映画芸術科学アカデミー(AMPAS)本部で開催され、是枝監督のほか、『ROMA/ローマ』(メキシコ)のアルフォンソ・キュアロン、『COLD WAR あの歌、2つの心』(ポーランド)のパヴェウ・パヴリコフスキ、『ネバー・ルック・アウェイ(英題) / Never Look Away』(ドイツ)のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク、『カペナウム(原題)』(レバノン)のナディーン・ラバキー監督が参加した。

【動画】『万引き家族』完成披露で“ファミリー”が撮影秘話

 是枝監督に、シンポジウムが始まる前に、授賞式を直前に控えた心境などを聞いた。先日開催された、アカデミー賞候補者たちが一堂に会する昼食会「ノミニー・ランチョン」にも参加した監督は、「こんなに頻繁にロスに来るとは思っていなかったので、嬉しいですけど、大変です。ランチ食べるために、飛行機に10時間乗ってくるんですよ(笑)。でも、来てみたら、スターと裏方が一緒に写真に写るというイベントで、とても素晴らしいと思いました」と語る。また、世界を代表する監督たちとの交流も大いに楽しんだそうだ。

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シンポジウム前にインタビューに応じた是枝裕和監督 写真:細谷佳史

 「バリー・ジェンキンス監督(『ビール・ストリートの恋人たち』)も声をかけてくれましたし、キュアロン監督ともあっちこっちで一緒になっていますし、『COLD WAR~』のパヴリコフスキ監督とも話せたのは、いい時間でした。映画祭もそうですけど、尊敬する作り手と話せるのはとてもプラスになるので、それだけでも来た甲斐がありましたね」

 アカデミー会員たちに『万引き家族』のどんな点が評価されたかを語るのは難しいが、作品に対する反応は、「日本と海外ではそんなに違いはない」そうだ。「この前パームスプリングス国際映画祭での上映のときにちょっと会場を覗きましたけど、やっぱり安藤サクラさん(演じる信代)の取り調べのシーンが始まると、みんな身動きをしなくなるんです。それまで咳をしたりしていた人たちがシーンとなって。それは日本でも、カンヌでも、アメリカでも一緒ですね」。なお、パームスプリングス国際映画祭では外国語映画に贈られる FIPRECI 賞(国際批評家連盟賞)を受賞している。

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シンポジウムが行われた映画芸術科学アカデミー(AMPAS)本部 写真:細谷佳史

 会員内の白人の比率が多すぎると批判されたAMPASは最近、多様性を求めて、女性やマイノリティーの会員をかなり増やした。そういった動きを、是枝監督自身も高く評価している。「素晴らしいですね。僕も会員になったので投票権が与えられて投票しましたが、本当に秋から毎日DVDが届くんです。『見てくれ、見てくれ』ということで。この前ゴールデン・グローブ賞(の授賞式)に出たときに一番感じたのは、やっぱりアメリカ国内のイベントなんですね。(オスカーは)それを大きくしたものですが、外国語映画部門って外に置かれている部門なんです。それに不満があるというわけじゃないですが、そういったことが変わらざる得なくなってきているんですね。会員も、作品も。そして今回、監督賞に『COLD WAR~』の監督の名前があったりするんです。撮影賞もそうですけど。そういったことはいいことだと思います」

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 是枝監督は現在、カトリーヌ・ドヌーヴジュリエット・ビノシュらと組んでフランスで製作した新作『ザ・トゥルース(英題)/ The Truth』に取り組んでいるが、今後ハリウッドで映画を作る可能性について尋ねてみた。「そうですね。今は、それも選択種として考えられるようになってきたかな、という感じです。まず英会話教室に通わないといけませんが(笑)。英語全然出来ませんので」。ちなみに、初めて出席する授賞式で一番楽しみにしていることは「レディー・ガガの歌を楽しみにしています」とのこと。

 さて、今年の外国語映画賞の候補者たちが集結するシンポジウムは、今年は特に質の高い作品がズラリと並んだこともあり満員の大盛況。是枝監督が登場すると、大きな拍手が巻き起こった。「なぜ今、今作を作ろうと思ったのか」という質問に、是枝は「去年9月に亡くなった樹木希林さんとここ10年間ほどで6本一緒に作ったんです。これが最後かな、と思いながら。彼女ともう1本やりたいと思ったのがモチベーションの最初でした」と語り、海辺のシーンの撮影の裏話を披露。

左から司会のラリー・カラゼウスキー、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、アルフォンソ・キュアロン監督、ナディーン・ラバキー監督、パヴェウ・パヴリコフスキ監督、是枝裕和監督 Aaron Poole / (C)A.M.P.A.S.

 「僕は撮影を生き物のようにとらえたいと思っています。樹木希林さんもまさにそういった人でした。海辺のシーンは撮影の初日で、それは彼女にとって一番最後のシーンだったんです。まだその時点では脚本はしっかり出来ていませんでしたが、夏のシーンだけ先に撮ることにしたわけなんです。そこで彼女が、信代さんという女性に『あなたきれいね』という一言と、家族に向かって、声に出さずに『ありがとう』と呟くところがあるんですが、それは僕が書いたものではないんです。それを見ながら、僕はその前と後の冬のシーンを書き直していったんです。そういう役者とのキャッチボールがうまくやれた時は幸せな時間になりますね」

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外国語映画賞の候補たちに『万引き家族』裏話を語る是枝監督 Aaron Poole / (C)A.M.P.A.S.

 また、日本での反応を聞かれた是枝は、公開されてしばらく経った今だから話せる思いを語る。「この作品は、僕の作品の中では今までで一番多くの人たち、380万人ぐらいの人たちが劇場で観てくれて、とても良い反応でした。カンヌのパルム・ドールということが大きかったと思います。でも、一部に、映画を観る前に、万引きで繋がっている家族というだけで、『そんな恥ずかしいものを日本の外で上映するのか?』といった批判が出たり、『あんな家族は存在しない』という声がネットで僕に寄せられたりしました。この映画の中で僕は、『あんなものは家族じゃない。あんな家族は存在しない』と言う人たちが(主人公の)周りにいて、彼らを見ようとしない、存在しないものとして片付けていく目線を描いたつもりなんですけど、その目線と同じものがこの映画に対しても向けられるということを経験しました。それはあまり気持ちのよいものではなかったですが、何か一つの示唆を与えてくれたというか、もしかしたらその反応も含めて、今この映画が日本で作られたことの価値なのかなと思っています」

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 また、作品賞を含む10部門にノミネートされ、今年のオスカーで最も注目を集めている『ROMA/ローマ』のキュアロン監督は、自身の子供時代に基づくパーソナルな作品を今作ることになった理由を「6、7年考えていたけど、もうこの作品をやらないでいいという言い訳を見つけられなくなった」と説明。従来の映画のように明確なプロットがなく、メキシコ・シティの中流家庭で家政婦をする先住民族の女性の物語を淡々と描く本作で、キュアロン監督は、映画作りにおいて、すべてをコントロールしようとしてきたこれまでのアプローチとは全く違うやり方を試みた。「映画は最終的には時間です。映像は時間です。僕は今までのキャリアで初めてそういったことにフォーカスしました。この映画は時間の感覚についてのものなんです」

『ROMA/ローマ』が作品賞、外国語映画賞含む10部門にノミネートされたアルフォンソ・キュアロン監督 Aaron Poole / (C)A.M.P.A.S.

 同時に、本作が、メキシコで大きな議論を巻き起こすきっかけにもなっているという。「面白いのは、この映画がメキシコで、人種差別や国内労働者についての議論をするきっかけとなっていることです。(先住民族で初めてオスカーにノミネートされた)ヤリッツア(・アパリシオ)はすごく感受性があって頭がいい。その象徴的価値を理解していて、威厳を持って、彼らの声を広めている。こういった議論は長い間必要でした。今、国が、人種差別があることを認めています。社会の構造はそれを反映しているんです。それが一番興味深いことなんです」

 今年の外国語映画賞は、『万引き家族』や『ROMA/ローマ』だけでなく、どの作品が受賞してもおかしくないほど質の高い作品が揃ったこともあり、シンポジウムも、映画作りへの愛と情熱に溢れた、映画ファンには実に聞き応えのある楽しい一夜となった。(取材・文:細谷佳史、吉川優子)

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