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オスカー6部門ノミネートの『ミナリ』、韓国系移民のパーソナルな物語でありながら誰もが共感できる理由

第93回アカデミー賞

末っ子デビッドはリー・アイザック・チョン監督が自身を投影したキャラクター - 映画『ミナリ』より
末っ子デビッドはリー・アイザック・チョン監督が自身を投影したキャラクター - 映画『ミナリ』より - (C) 2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.

 第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞の6部門ノミネートを果たした映画『ミナリ』は、韓国系アメリカ人であるリー・アイザック・チョン監督の幼少期の体験を基にした非常にパーソナルな物語でありながら、広く共感と感動を呼ぶ作品となっている。チョン監督がインタビューに応じ、どのようにしてそれを実現したのかを語った。

【画像】主演は「ウォーキング・デッド」のグレン役でおなじみスティーヴン・ユァン

 1980年代を舞台に、アメリカンドリームを求めてアーカンソー州の高原に引っ越してきた韓国系移民一家を描いた本作。農業での成功を夢見る父ジェイコブ、時に無鉄砲になる彼に不安といらだちを感じている母モニカ、しっかり者の長女アン、好奇心旺盛な末っ子デビッドの4人家族が暮らすトレーラーハウスに、毒舌で破天荒な祖母もやってきて……。チョン監督は、アメリカで一から生活を築いていった自身の両親に思いをはせながら、さまざまな困難に直面してもたくましく生きる家族の物語を描き出した。

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 脚本は書き始めるや、すぐに書き上げてしまったという。「なぜなら、わたしは当時の気持ちや感情を長いこと胸の奥にしまったままにしていたから。だから書き始めたら、それらがあふれ出したんだ。ただ、わたしの人生のあの時期を新しい方法で見るようになったと感じた。自分の両親を一人の人間として、子供が大人を見る目とは違う目で見るようになったんだ」とチョン監督。

 「(執筆作業を通して)当時がどれだけ両親にとって大変な時だったか、母が祖母に長年会えなくてどれだけつらかったかということを学んだと思う。例えば、母が祖母のスーツケースを開けて、韓国の食べ物を見つけて涙ぐむシーン。あれは実際に見たことではなく、書いている時に想像したことなんだ。そうしたフィクションを加えることで、わたしは母を理解し始めたのだと思う。母にとってどれだけ大変だったか、当時の気持ちを想像することでね」

リー・アイザック・チョン監督
ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞の受賞を娘と喜ぶリー・アイザック・チョン監督 - (c) NBC

 そして非常に個人的なところから生まれた物語だけに、制作を通してこだわったことがあった。「この映画を作る上で絶対に譲れなかったのは、誰もが共感できるものにすることだった。わたしだけのための映画ではないし、わたしの家族だけのための映画でもない。誰もがそこに自分たちの姿を、キャラクターたちの中に彼ら自身の父や母、祖母の姿を見るようにしたかった」

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 「だからわたしは、具体的すぎる部分を取り除くことにたくさんの時間をかけた。時に具体的すぎると、キャラクターたちに距離を感じてしまう。具体的な瞬間よりも、とても普遍的な瞬間と感情にフォーカスしようと心掛けた。そういうわけで、“沈黙”にすごくフォーカスしたんだ。キャラクターがただ何かを感じている瞬間こそ、他の人たちが物語に共感できる時だと思ったから。たとえ彼らがどこかへ移民するという経験をしていなくても、アウトサイダーとしての気持ち、孤独、満たされなさは知っているはず。撮影している時、執筆している時に考えていたのはそういうことだった」

 本作を制作するにあたって影響を受けた映画は、ロベルト・ロッセリーニ監督の『ストロンボリ/神の土地』と『イタリア旅行』、そして小津安二郎監督作だった。「『お早よう』『晩春』『東京物語』……家族の物語を、彼がどのように語っているのかをよく考えた。正直に言って、誰も小津の右に出る者はいない。彼は完璧だから(笑)。わたしはただ彼を崇拝していて、彼がやったことを少しだけでも学ぼうとした。彼のやり方はわたしにとって、とても神秘的だから」と小津監督への強い思いを明かしていた。(編集部・市川遥)

映画『ミナリ』は公開中

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