「午後のロードショー」25周年も攻めの精神貫く プロデューサーに聞く番組の未来

25周年を迎えた午後ロー、今後の展望は?
25周年を迎えた午後ロー、今後の展望は? - (C)テレビ東京

 1996年にスタートし、“午後ロー”の愛称で知られるテレビ東京の映画番組「午後のロードショー」(毎週月曜~金曜・午後1時40分~)が、4月1日で25周年を迎えた。NetflixやAmazon Prime Videoといったストリーミングサービスが台頭し、映画の地上波放送が減少傾向にある中、視聴者がワクワクするような特集を次々とオンエアする「午後のロードショー」は、映画関係者からも一目置かれる存在だ。そんな同局きっての名物番組について、テレビ東京映画部の岡本英一郎プロデューサーが現在も色褪せない番組の魅力、次の50周年に向けての意気込みを語った。

【画像】オンエア時の反響が想像以上だった衝撃作『ミスト』

話題作は積極的にオンエア 映画好きスタッフが揃った番組

 「当然ですが、映画好きじゃないとこの番組は作れません」と語る岡本は、仕事を含め年間300~400本は鑑賞するというかなりの映画好きだ。「1年で200本以上の作品を放送しなければならないので、やはりたくさん映画を観ているスタッフでないとラインナップを考えるのはなかなか難しいと思います。例えばラインナップを組む場合、映画の内容を知らないと、『今週は大作がズラリと並び、来週はなぜかマイナー作品ばかり……』という状態が起きる可能性があります。そうなるとラインナップのバランスは悪いし視聴率的にも凹凸が出てしまうので、作品の強弱を考えながら、バランスが良い作品の配置を考えるんです」。

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 映画が好きだからといって、自分の趣味に走りすぎると「視聴者を無視した番組」になってしまうと警鐘を鳴らす岡本。「自分の好きな映画=視聴者が観たい映画、とは限りません。僕自身、スプラッターものや昆虫パニックものが苦手なので、個人的には避けたいところですが(笑)、その作品が話題作で人気があるのであれば、積極的に放送します。そういった意味では、個人の好き嫌いではなく、時代の潮流を読むことも必要になってくるので、頻繁に映画館に足を運んで、しっかりマーケティング・リサーチすることも重要になってきますね」。

前身番組から継承されてきた“攻め”のDNA

 「午後のロードショー」の前身番組「2時のロードショー」(1982年3月~1994年9月)、「シネマタウン」(1994年10月~1996年3月)では、マニアックなB級映画や劇場未公開作品などを中心に放送していたが、そのイメージが強烈に残っているせいか、「午後ロー」も“攻めの姿勢”を取り沙汰されるケースが多い。これに関して岡本は、「実は『午後ロー』で放送される作品は、映画ファンなら誰もが知っているメジャーなものが多いのですが、例えばサメ映画シリーズなど、『午後ロー』ならではのエッジの効いた作品も、番組の“スパイス”としてお届けしているので、皆さん、ここに引っ張られているのかもしれませんね」と分析する。言い換えれば、メジャー作品をメインにしながらも、前身番組の“攻め”のDNAもしっかり受け継いでいる、ということでもあるのだ。

 さらに、“攻め”のDNAを感じさせるのが、単体作品ではなく「午後ロー」ならではの特集推しだ。「いろんなくくりのパターンがありますが、例えばシーズナリティーを考えたラインナップ。日本には四季があり、目で季節を楽しむ文化がありますが、サメ映画などは海水浴のシーズン、つまり夏ですよね。猛暑が続く時には“凍結モノ”とか寒さを感じる映画を持ってきて涼んでいただくとか、そういった季節に即したラインナップは常に考えています。人気俳優特集やシリーズものなどは、最新作公開との連動企画を考える場合もありますが、放送の権利期間が作品によってそれぞれ違うので、揃えるのもなかなか大変です」と苦労を口にする。

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 ちなみに、2020年1~4月に放送した『007』特集は、岡本がプロデュースした肝煎り企画。「シリーズ20作品の一挙放送は地上波初の試みだったので、思い入れがすごく強かったですね。最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開に合わせた連動企画だったのですが、コロナ禍の影響で公開が延期になってしまったのが心残り」とうれしい反面、若干の悔しさも残っているよう。また、単独放送では『ミスト』の反響が想像以上だったとのこと。「ラストシーンがあまりにも衝撃的で、放映終了後もツイッターの数字が伸び続け、午後ロー公式ツイッターのインプレッション数が歴代最高を記録したんです」と声を弾ませた。

時代はサブスク全盛期 「午後ロー」がいまできること

 「午後のロードショー」がスタートした頃は、昼の時間帯にエロティックなシーンや血飛沫が飛ぶバイオレンスシーンなどを放送しても、笑って許される大らかな時代だった。ところが今は、コンプライアンス重視の時代。逃亡シーンもシートベルトを着用する世の中だ。この風潮を受けて岡本も変化を余儀なくされた。「特に今は、コロナ禍で学生さんも家にいる機会が多いので、過剰な暴力や性的表現は注意が必要です。『午後ローらしくない!』と言われるかもしれませんが、もはや『面白ければいいじゃん!』では放送できない時代。世の中の空気を読みながら、その上で攻めるところは攻める。そういったバランスも必要なのかなと思っています」。

 時代は、サブスク型配信サービスの全盛期。映画の地上波放送も軒並み減少しているのが現状だが、その中で「午後のロードショー」が生き残っていくために、岡本は何を武器として戦うつもりなのか。

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 「視聴者の皆さんにとって、馴染みのある声優さんの声を通して映画を楽しむという吹き替えスタイルは、根強い文化だと思います。何かをしながら気軽に楽しめるし、日本語なので内容に集中することもできる」と強調する岡本。「また、配信サービスは膨大な作品数を揃えていますが、その中から自分で作品を選ぶ作業は、人によっては大変ですよね。いざ選んでも、ハズレの作品だと、つらい2時間を過ごすことになる。ところが『午後ロー』は、映画好きのスタッフが皆さんに代わって面白い作品を選りすぐって提供しているので、視聴者は何も考えず、しかも無料で、かなりの確率で面白い作品に出会うことができます。これは大きなメリットだと思います」。

 「午後ロー」の目利きを信じ、その世界観を享受するならば、無料で、吹き替えで、気軽に楽しめる、こんなハッピーな映画ライフはない。もはや途中で入るCMさえも、この番組の魅力の一部のようで愛おしい。「午後のロードショー」は、庶民派の映画ソムリエとして、次の50周年に向かって我が道をどんどん極めていきそうだ。(取材・文:坂田正樹)

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