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ジョエル・コーエン、日本映画の巨匠を参考に 単独監督で挑んだ『マクベス』

才能あふれるカップル! フランシス・マクドーマンドとジョエル・コーエン監督
才能あふれるカップル! フランシス・マクドーマンドとジョエル・コーエン監督 - Gregg DeGuire / FilmMagic / Getty Images

 先日、ジョエル・コーエン監督の新作映画『マクベス』のIMAXスペシャルイベントが、アメリカのみならず、世界各国における主要都市のIMAXシアターで同時開催された。同作は、ジョエルが初めて手掛けるシェイクスピア作品にして、デンゼル・ワシントンフランシス・マクドーマンドが共演した話題作。スコットランド王マクベス役のデンゼルが、魔女の予言に翻弄(ほんろう)される将軍の野心、苦悩、狂気を見事に体現している。上映後のQ&Aには、脚本・制作も担当したコーエン監督と、マクベス夫人を演じたフランシスが夫妻そろって参加。新作にまつわる裏話を語った。

 本作でゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートされたデンゼルは、舞台や映画で幾度もシェイクスピア作品に参加してきたが、マクベスを演じたことはなかった。しかし、本作のアイデアを夫に提案したフランシスにとって、デンゼル以外にマクベス役はあり得なかったという。「どうやってデンゼルをマクベス役に選んだんですか? と誰かに聞かれたけど、デンゼルを『選ぶ』ということではないんです。彼は、私たちの世代のマクベスなのだから。全ての世代にマクベス(になるべき俳優)が生まれて、その役を務めるようにね」

 そして幸運にも、デンゼルは二つ返事で出演を承諾したとコーエン監督は振り返る。「撮影の1年ほど前に彼に会って、『マクベス』をやるのはどうかな? と聞いたら、すぐにイエスと言ってくれたんだ。この作品が、久々にシェイクスピアに戻る良い機会になると思ったんじゃないかな。しばらく考えていなかったような形で、演技について考えることができるんじゃないかってね」
  
 本作は、コーエン監督にとって初のIMAX作品ともなった。名優たちの演技だけでなく、衣装の細部まではっきりと確認できる白黒の映像美が実に見事だ。コーエン監督が「この作品では舞台のフィーリングを維持することが大事だった」と語るように、舞台と映画をハイブリッドさせたような、今までにない『マクベス』となっており、そのために撮影は、スタジオ内のセットで行われた。

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 「どうやってセットを作り、どういうことができるのかを見るために、『サンライズ』(1927)といったサイレント映画やドイツ表現主義映画、日本映画を観た」というコーエン監督。特に日本映画では、黒澤明小林正樹の白黒映画を参照したという。黒澤監督が「マクベス」を戦国時代に置き換えた『蜘蛛巣城』(1957)はもちろん参考にしているだろうが、意外にもコーエン監督は、小林監督の『怪談』(1965)について詳細に語った。

 「『怪談』は短編を集めた映画で、サイケデリックなカラー作品だから、この作品とは正反対だ。でも彼は白黒撮影の巨匠なんだ。たとえカラー作品であっても、小林はセットで撮った。実に舞台的なんだ。日本映画からは、そういうところを参考にした。能とか歌舞伎とかいうんじゃなくね」。

 本作のもう一つの大きな見どころは、フランシスが「彼女は作品にマジックを持ち込んだ」と絶賛する魔女/老人役のキャスリン・ハンターだ。ロンドンで野田秀樹の芝居にも出演したことのあるベテラン舞台女優のハンターが、あり得ないと思える身体の動きで魔物を表現する演技には、目が釘付けになる。

 トークの最後に「私たちはスコットランドについての映画を作ろうとしたわけじゃない」と切り出したフランシス。「政治的なことを主張しようとしたわけでもない。結婚について描こうとしたのよ」と語る姿が印象的だった。(取材・文:吉川優子 / Yuko Yoshikawa)

映画『マクベス』はApple TV+ にて配信 2022年1月14日より全国5館で期間限定上映

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