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フランシス・マクドーマンド、名演の数々!

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 第93回アカデミー賞のノミネーションが発表されましたね。ゲイリー・オールドマン主演のNetflix映画『Mank/マンク』が最多10部門でノミネートされました。そして、『ノマドランド』も作品賞、監督賞、主演女優賞など6部門でノミネートを果たしています。ランドつながりの『ラ・ラ・ランド』好きとして『ノマドランド』主演の名優、フランシス・マクドーマンドを特集していきます!(編集部・海江田宗)

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■スクリーンデビュー作『ブラッド・シンプル』

ブラッド・シンプル
USA Films / Photofest / ゲッティ イメージズ

 フランシス・マクドーマンドのスクリーンデビュー作はジョエル&イーサン・コーエン兄弟にとってもデビュー作の『ブラッド・シンプル』です。1985年にサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞した傑作です。この作品を経て、マクドーマンドはジョエル・コーエンと結婚し、その後も『赤ちゃん泥棒』『ファーゴ』などコーエン兄弟の映画に数多く出演しています。

 『ブラッド・シンプル』で若き日のマクドーマンドが演じたのは、アメリカ南部の田舎町に住んでいるアビー。アビーの夫・マーティ(ダン・ヘダヤ)が事件に巻き込まれ、アビーとマーティに関わる登場人物たちのそれぞれの思惑が交錯します。緊張感のある映像の中でマクドーマンドは、徐々に死の淵に追い詰められていくアビーを好演。思わず見入ってしまう、マクドーマンドにしか出せない「顔」はこの作品ですでに確立されていて、観る者をストーリーの深部へと誘います。

■アカデミー主演女優賞受賞作『ファーゴ』

ファーゴ
Gramercy Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 「フランシス・マクドーマンド」と聞けば、この作品が最初に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。コーエン兄弟が製作総指揮に名を連ねているドラマ版も人気ですね。映画『ファーゴ』は1996年に公開されました。なんともう25年前の作品とは……。

 狂言誘拐をきっかけに癖のあるキャラたちが躍動し、怖いし、なぜか笑えるし、見応えがありすぎるブラックコメディーな作品。マクドーマンドは事件の真相を追う妊婦の警察署長マージ・ガンダーソンを演じて、アカデミー賞の主演女優賞を獲得しました。「イエス」を「ヤー」と発音するマージ。仕事に対して真面目な、ある意味「普通の警察署長」なのですが、人生において大切なものを知っているという説得力が、マクドーマンドの内側からにじみでています。

ファーゴ
Gramercy Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ついつい観てしまう作品で、観るたびに作品の面白さとマクドーマンドの演技の深さに恐れ入るのですが、マクドーマンドの何がすごいのかを理解することがいまだにできません。例えば、わかりやすく号泣のシーンがあれば、「熱演がすごい!」と納得できるのかもしれませんが、そんなシーンはなく、マクドーマンドが飄々とすごいことをやってのけています。表現者としての彼女の唯一無二の魅力を誰よりも知るジョエル・コーエン監督とのコラボだからこそ、マージという名キャラクターが生まれたのでしょう。

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■スピーチもすごかった!『スリー・ビルボード』

スリー・ビルボード
Fox Searchlight Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 マクドーマンドが自身二度目のアカデミー賞主演女優賞に輝いたのが、日本では2018年に公開されたクライムサスペンス『スリー・ビルボード』です。娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(マクドーマンド)が、警察を批判する看板を設置したことで、事態は思わぬ方向へと動き出します。マクドーマンドは怒りと悲しさを抱えたミルドレッドを、パワフルかつ繊細に演じていました。

 ウディ・ハレルソンが演じたウィロビー署長とミルドレッドが互いの意見を交わすシーンは見応え抜群でしたが、ミルドレッドと『ファーゴ』のマージ・ガンダーソン署長の対決も見たくありませんでしたか(私は見たいと思いました)。という話もありつつ、ここではあえてマクドーマンドのオスカーでのスピーチについてピックアップしてみました。

スリー・ビルボード
Kevin Winter / Getty Images

 マクドーマンドはスピーチで「インクルージョン・ライダー」という言葉を全世界に向けて発信しました。「インクルージョン・ライダー」の意味についてはここでは割愛しますが(こちらで取り上げています)、そのワードを発する前、スピーチでの立ち振る舞いがお見事でした。

 名前を呼ばれて登壇したマクドーマンドは高揚した様子で「オッケィ~、過呼吸気味だから、もし倒れたら起こしてちょうだい」と口を開いたあと、一気に表情を変えて「cuz, I’ve got some things to say.(なぜなら、私には言いたいことがあるから)」と続けます。その間わずか10秒弱。嬉しそうな笑顔から一気にシリアスな表情になり、声色もグラデーションさせました。会場中を魔法のように引き込んだマクドーマンドはさすがとしか言いようがなく、スクリーンの中で見せる確かな演技力の一端をのぞかせています。

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■そして新作『ノマドランド』

ノマドランド
Kevin Winter / Getty Images

 26日公開の『ノマドランド』はジェシカ・ブルーダーのルポルタージュ「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送るファーン(マクドーマンド)の姿を映し出すロードムービーです。マーベル・スタジオの新作『エターナルズ(原題) / Eternals』のメガホンを取るクロエ・ジャオ監督の作品で、ベネチア国際映画祭の最高賞にあたる金獅子賞、さらにはトロント国際映画祭の観客賞も受賞しています。

ノマドランド
(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

 マクドーマンドは今作のファーン役と『スリー・ビルボード』のミルドレッド・ヘイズ役について、「二人とも私自身でした」と語っています。「私自身はミルドレッドとファーンの両方であり、中でもファーンは区切りのような存在です。(中略)ミルドレッドとファーンは、明らかに同じ世界にいます。彼女たちは、労働者階級のバックグラウンドを持っています。同じく私も、労働者階級のバックグラウンドを持っています」(公式インタビューより)

 『ノマドランド』には実際に路上生活を送っている人たちが本人役で出演しています。ドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜた新しい表現を切り開いており、ジャオ監督の巧みな技法によってとらえられたマクドーマンドは、ノマドたちの一人であるファーンそのものです。

ノマドランド
(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

 マクドーマンドら映画のクルーたちは、アメリカの7つの州を5か月かけて旅をしながら撮影を行いました。撮影の途中、マクドーマンドは買い物のために立ち寄ったお店で「常勤か一時雇用のどちらを希望するか」と問われたそう。本当のノマドと思われて仕事の提供を受けてしまうほど、役とシンクロしたマクドーマンド。これまでの作品同様、強烈で忘れられないキャラクターとの出会いを観る者に届けてくれます。

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