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稲垣吾郎、グループを離れて5年 「より自然体で生きられるように」

稲垣吾郎
稲垣吾郎 - 写真:上野裕二

 年齢を重ねるごとに、俳優としての深みと輝きを増している稲垣吾郎。「芝居には、どうしたって今の自分がにじみ出るもの」と持論を語る彼だが、今泉力哉監督と初めて組んだ映画『窓辺にて』(11月4日公開)では、妻についてある悩みを抱えるフリーライターに。穏やかで優しく、少しミステリアスなキャラクターが、稲垣自身のまとう空気感とピタリと重なり、観客を美しい大人のラブストーリーへと誘う。一見理解し難い男を演じた稲垣が役柄に寄せる共感や、「新しい地図」発足から5年が経った今、実感している俳優としての変化を明かした。

【画像】インタビュー撮りおろしカット<21枚>

稲垣自身も大ファン!今泉監督作品の魅力とは?

『窓辺にて』より稲垣演じる主人公のフリーライター・茂己 (C) 2022「窓辺にて」製作委員会

 本作は、『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』『街の上で』などの今泉監督にとって17作目の完全オリジナルとなるラブストーリー。稲垣にとって初の今泉組となるが、自身が担当する雑誌「anan」の連載「シネマナビ!」で度々作品を取り上げるなど、かねてから今泉監督作品のファンだったという。

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  「今泉監督は、言葉にできないような感情をリアルな目線で表現してくれる監督だなと感じていて。そういうことができるのって、映像表現ならではですよね。とはいえ、身の回りにあふれているような感情や等身大の登場人物を映画で描くのはなかなか難しいことでもあるけれど、今泉監督はあえて挑戦している」と今泉作品に惚れ込んでいる様子。実際に今泉ワールドに飛び込み、「作品によっては、見得を切るような言い方をした方がいいセリフもあったりすると思いますが、今泉監督作品のセリフは日常から出てくるような言葉ばかり。いわば“演技をしない”くらいの感覚が必要で、普段話しているような会話の間やリズムが大切になってくる。僕自身、“知っている感情だ”と思うものも多かったです」と改めてその魅力を噛み締めている。

喜怒哀楽を人に見せたくないタイプ

『窓辺にて』より茂己(稲垣)と妻の紗衣(中村ゆり) (C) 2022「窓辺にて」製作委員会

 稲垣が演じたのは、小説を一冊出したきり、フリーライターをしている市川茂巳。彼は、編集者である妻の紗衣(中村ゆり)が、売れっ子作家・荒川(佐々木詩音)と不倫していることに気づきながら、それを妻に言い出せず、自分自身がそのことに何の感情も湧かなかったことにショックを受けている。稲垣は、そんな市川の心の動きに「共感ができた」と胸の内を語る。

 「あまり動揺しているところを人に見られたくないというのもあるだろうし、何も感じないようにすることで自分の心の平和を保っているとか、そういうことってあるものですよね」と切り出し、「僕自身、喜怒哀楽をあまり人に見せたくないタイプ。特に動揺とか悲しみなど、マイナスの感情はあまり見られたくないかな。喜びもぼかしてしまうかもしれない。ちょっと偏屈なところがあるんですよね」とにっこり。「市川とは、とても重なるところが多かった。それは今泉監督に対しても言えることで、監督とは心で通じ合えているような感覚がありました」とすばらしい初タッグになったようだ。

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 稲垣自身、「印象的なセリフも多かった」という本作。“書かなくなった”小説家である市川が放つ「理解なんかされない方がいいことも多いよ。期待とか理解って時に残酷だからさ」というセリフには彼の葛藤が垣間見えるが、稲垣は「僕がやっているのは、どうしても人から期待される仕事なので。それに応えることも、僕の仕事」と表現者としての覚悟を見せる。

 「ただ僕自身は、人に期待しないことが多いかもしれないですね。期待したものを得られなかった時にガッカリしたり、期待しすぎるとトラブルになる気もして。あまり人に期待しすぎない、頼りすぎないというのは、どこか冷めているのかもしれない。でも執着することが愛だと思っている人もいれば、それが傷になってしまう人もいるから。難しい問題ですよね」と、市川同様に執着しない自身を分析。「僕は人って、どこか寂しい生き物だと思うし、孤独を愛せないとダメなのかなと思っています。だからこそ、ちょっとしたことで誰かと喜び合えたり、分かり合えた瞬間があると、ものすごくうれしい。その思い出だけで一生やっていけると思うくらい、うれしい」とふわりと微笑む。

今は「肩書きは俳優」と胸を張って言える

写真:上野裕二

 今年9月22日に、草なぎ剛香取慎吾と共に立ち上げた「新しい地図」が5周年を迎えた。新しいスタートを切って初めて単独主演を務めた映画『半世界』(2019)では、煤だらけになって働く炭焼き職人で、ダメな夫&父親でもある主人公を演じていた稲垣だが、近年はそういった“市井を生きる人”を演じる機会も増え、さらに役の幅を広げている。

 稲垣は「今まで演じてきたようなものとは、また違ったアプローチが必要になる役が増えてきています」と現状を分析。「それまではパブリックイメージとして、グループの中にいる稲垣吾郎としてのイメージが大きかったと思うんです。最近はより自然体に生きることができているし、そういった僕自身から透けて見えるものをいろいろな監督がピックアップしてくださることで、あらゆる作品、役柄へと繋がっているような気がしています。本作の市川も、まさにそういった役ですよね」と思いを巡らせつつ、「ただパブリックイメージがあることも面白いなと思っていました。三池崇史監督が『意外性のある役を演じたらきっと面白い』と感じてくださって『十三人の刺客』(2010)で僕をヒール役に選んでくれたように、イメージを覆すようなこともできる」と俳優業にあらゆる可能性を感じている。

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 歌やバラエティ番組、MC業などマルチで活躍している稲垣だが、俳優業に興味が湧いてきたのはいつ頃なのか? 稲垣いわく「15歳の時にNHKの朝ドラ『青春家族』(1989)でドラマデビューをしたんですが、その時点で『お芝居ってすごく楽しいな』という気持ちが湧いていました」と、スタート時から魅了されていたのだとか。「その時に、一生この仕事をやっていきたいなと思いました。そう感じたことを今でも続けられているというのは、本当に幸せなこと。舞台をやり始めたことや、その初期につかこうへいさんとご一緒できたことも大きな経験になりました。今では胸を張って『俳優です』と言えるような肩書きになったし、書類の職業欄に書くとしたら“俳優”だと思っています」と誇りと情熱をみなぎらせる。

 「お芝居はやればやるほど、考えれば考えるほど難しいもの。積んできた人生経験や、今の自分がどうしたってにじみ出るので、とてつもなく面白いものでもある。そうして突き詰めてきたという意味では、お芝居に対してより真面目になってきたのかもしれないですね」と柔らかな笑顔と仕事への熱意をあふれさせ、インタビューの場を居心地の良い空気でいっぱいにする稲垣吾郎。今の充実ぶりがうかがえるが、最後に“好き”という感情を掘り下げた映画の内容にちなみ、48歳の恋愛観・結婚観を教えてもらった。「相手がいればいつでも、そういう(結婚するという)人生を歩んでみたいなと思っています。結婚願望があるとか、急いでいるというわけではまったくないんですが、ナチュラルに、自然な成り行きに任せて、そういうタイミングが来たら受け止めたい。流れに身を任せているだけでは、何も変わらないのかもしれないですけれど(笑)」と自然体の姿も何とも魅力的だ。(取材・文:成田おり枝)

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