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『ゴジラ-1.0』幻となった対ゴジラ兵器とは 山崎貴監督が明かす制作過程

対ゴジラ作戦の全容は劇場で! 『ゴジラ-1.0』より
対ゴジラ作戦の全容は劇場で! 『ゴジラ-1.0』より - (C)2023 TOHO CO., LTD.

 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』など数々のヒット作を手がけた山崎貴監督が最新作『ゴジラ-1.0』(全国公開中)のイメージの源泉や幻のゴジラ撃退法など製作秘話を明かした。(以下、一部内容に触れています)

【画像】絶望しかない…戦後日本を破壊するゴジラ『ゴジラ-1.0』場面写真

 太平洋戦争直後の無(ゼロ)の日本を負(マイナス)へと突き落とす、壮絶なスペクタクルを繰り広げる本作。子供の頃にテレビを通して『ゴジラ』シリーズに魅了されたという山崎監督は、いつか怪獣映画を撮りたいという長年の思いを実現させた。オファーを受ける以前からゴジラのアイデアを温めていたといい、これまでのシリーズの要素を取り入れながらかつてない理想のゴジラを追求した。

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 戦争からの復興期という舞台設定は「こんなゴジラが観たい」と以前から構想していた山崎監督。最初にゴジラの具体的イメージが浮かんだのは『アルキメデスの大戦』の製作中のことだった。「準備をしていた頃だと思いますが、ちょうど、(イラストレーター)生頼範義さんの画集『生頼範義 戦記画集』が出たので参考によく見ていたんです。その時にふと『ここにゴジラがいてほしいな』と思って。生頼さんはポスターも描かれていてゴジラとは切っても切れない存在なので、自然に思い浮かびました。生頼さんの戦艦の絵の構図そのままにゴジラがいたら、すごいですよね」と回想する。

 さらに、街ではなく海で暴れるゴジラというシチュエーションにも惹かれた。そのためか、完成した映像にゴジラがかぶって見えたと明かす。「『アルキメデスの大戦』の序盤の沈没シーンで、ひっくり返る大和の映像が怪獣映画のように見えたんです。ここにゴジラがいたらめっちゃかっこいいよねと、みんなで話をしてました」

 ゴジラが日本に出現するのは1947年。実は、この年代にもこだわりがあった。「どうしてもゴジラと軍艦を戦わせたかったので、海軍の船がいつまで残っていたかを考えました」という山崎監督。戦後、日本の軍艦は連合国に接収され爆破などにより処分された。時代設定はその時期から逆算して決められた。「実は46年に沈められた船も出てきますが、ゴジラの存在が明らかになり、そのごたごたで自沈を免れたと考えれば47年でも大丈夫(笑)」。もちろんゴジラと軍艦のバトルにもこだわりがあった。「軍艦との戦い方でこだわったのが零距離射撃。ゴジラがすぐ目の前にいて、本当に近い距離から砲撃する画が見たかったんです。生頼さんの画集を見た時から、ゴジラ映画が撮れたら絶対にやりたいと思ってました」とポイントを聞かせてくれた。

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ゴジラによって徹底的に破壊される日本(C)2023 TOHO CO., LTD.

 ゴジラ出現ポイントのひとつとなるのが、東京・銀座。劇中では当時の街が克明に再現されている。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで昭和30年代の街並みを、『海賊とよばれた男』でも戦中・戦後の景観を再現してきた山崎監督。長年にわたり山崎作品を支えてきた美術監督の上條安里とVFXの白組が、本作でも腕をふるっている。

 「調べていくと銀座の街は、焼け残った立派な建物と焼け跡に作られた粗末な建物が混在した、とても特徴的な状況だったんです。でもきちんと作らないと(デビュー作から組んでいる)阿部秀司プロデューサーが怒るんですよ。『こんな銀座あるかよ』って(笑)。当時はともかく、昔の東京を知ってる人なので」と山崎監督。そこで可能な限り写真など資料をあたり、CGを中心に克明に再現された。ただし、逃げる人々をとらえた移動撮影など画面が大きく揺れるカットは、CGの背景との合成作業が困難になる。「揺れるカメラと背景の位置合わせはとても大変な作業です。ところが、数年前に白組に入った新人君が、カメラ合わせの天才だったという(笑)。難しいカットもどんどん仕上げてくれて、デジタルネイティブ世代のクリエイターに助けられました」

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 限られた装備でゴジラとの戦いを強いられる日本。攻撃力ほぼゼロの状況で大怪獣にどう立ち向かうかは、脚本も手がけた山崎監督がもっとも苦心した箇所だった。第1作『ゴジラ』では、水中の酸素を破壊する架空の兵器オキシジェン・デストロイヤーが使われた。それに倣って本作でも、超兵器を開発する案が検討されていた。「ゴジラは強い再生能力を持っているので、その力を暴走させて殺そうと考えました。それが“ゲノムアクセラレータ”です。でも最先端すぎて、あまり現実的じゃないんですよ。そこで『アルキメデスの大戦』でもお願いした後藤一信さんに、今回も軍事監修兼作戦立案で参加してもらいました」と山崎監督。

 当時の状況に当てはめながら、多くの案が検討された。「後藤さんはアイデアマンで、当時の日本でゴジラとどう戦えるのか、いろんな作戦を考えてくれました。そのひとつがフロンガスの使用。今回のように泡で包んで沈めつつフロンガスは温度を急激に下げるので、ものすごい氷の柱ができてゴジラが突き刺されるという後半部分のアイデアも考えてくれたんですが。なかなかすごい画になりそうだけど、一撃で終わっちゃうので映画としてはちょっと面白みに欠けるかなと前半だけ採用させてもらいました」と山崎監督はふり返る。脚本に費やした期間は足かけ3年。多くのスタッフが総力を結集したことで、かつてない『ゴジラ』が誕生したのだ。(取材・文:神武団四郎)

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