『キャプテン・アメリカ:BNW』平岳大、米移住5年目で掴んだ尾崎首相役 MCUならではの苦労と奮闘

米エミー賞やゴールデン・グローブ賞を席巻したハリウッド制作ドラマ「SHOGUN 将軍」で、主人公の宿敵・石堂和成を演じて話題となった俳優・平岳大が、新作映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』でMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)入りを果たした。劇中で日本の尾崎首相を演じた平が日本でインタビューに応じ、サディアス・ロス米大統領として対峙した名優ハリソン・フォードとの共演やマーベル作品ならではの裏話、ハリウッドを目指す若き俳優たちへの思いを語った。
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ハリソン・フォードは「神様みたいな俳優」

2002年に舞台「鹿鳴館」で俳優デビューした平は、Netflix制作の英国ドラマ「Giri / Haji」で主演に抜てきされ、同作で英国アカデミー賞テレビ部門で主演男優賞にノミネート。『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』『グランツーリスモ』といった海外作品への出演が続き、昨年ディズニープラスで配信された「SHOGUN 将軍」では石堂和成役という大役を掴んだ。
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の出演オファーが舞い込んだのは、今から2年前のこと。「SHOGUN 将軍」の撮影が終わった後だった。「僕のエージェントから電話がかかってきて、『こんなオファーがあるんだけど……やる?』と言われたので、『やるでしょ!』と答えました。守秘義務があるため、日本の首相という役柄以外は、本番当日までわからない状態が続いていました」
平の言葉通り、MCU作品は情報統制が徹底されており、メガホンを取ったジュリアス・オナー監督とのZoomミーティングも、作品全体ではなく尾崎首相の役づくりにフォーカスしたものだった。「政治家でバチバチにぶつかり合っても、感情的にならない。政治家は、感情的になった方が負けみたいなものがあるじゃないですか。外交的に言葉で押すということを心がけて、役はつくろうとしていました」と限られた情報の中でも、役を全うしようと試行錯誤を重ねた。
映画には、ハリソン演じるロス米大統領との共演シーンが存在する。カメラが回っている時は、日本とアメリカのトップとして対峙するが、撮影外の時は、ハリソンが共演者に積極的に話かけにくる瞬間もあったという。
「ハリソンさんには、スタジオの中に個室みたいなものが用意されていたのですが、僕が他の首相役のキャストと談笑していると、急にハリソンさんがこちらにやってきて、私の横に座り、ボソボソと何かを言い始めたんです。ずっと聞いていたら、自分のセリフを言っていて、僕とセリフ合わせをしているんだと思い、僕も自分のセリフを言いました。その後は、そこに座ったまま、僕たちと政治の話なんかをしていました。あれは、ハリソンさん流のコミュニケーションだったのかもしれません。僕とバチバチにやり合うシーンの時も、僕をスタッフとの輪に入れてくれるんです。本当に神様みたいな俳優です」
コロナ禍で諦めかけた時期「俳優修行は終わった」

平は2020年に米・ハワイ州に移住し、今年で5年が経つ。「やっと今年、楽になった感じはします」とホッとした様子を見せた平は、移住後に起きた新型コロナウイルスのパンデミックで仕事が途絶え、「アメリカでの俳優修行は終わった」と絶望感を抱いたこともあった。「そう思っていたら、『THE SWARM/ザ・スウォーム』という作品のお話が届き、ローマで撮影していたら『SHOGUN 将軍』が受かり、終わったら次の作品という流れになりました」と現在は多忙な日々が続いている。
「SHOGUN 将軍」が世界的に評価されたことで、ハリウッドで日本人俳優が活躍する機会は以前より増えることが期待される。海外で挑戦しつづける平は、その道を切り開いた真田広之を「ヒーロー」と讃えている。
そんな平は、海外を目指す若き役者に向けて「挑戦する」ことの大切さを説く。「僕は昔、日本にいた時、夏休みにアメリカでエージェントを探そうとしたことがありました。アメリカにも実際に行って、1件見つかったんです。当時、無名だった僕は『少なくとも半年ぐらいはLAに住んでくれ』と言われました。今日オーディションがあったら、すぐにスタジオに行って参加する時代だったので、日本にいながら(オーディション参加)は都合が良すぎると言われたことがありました。そういったことも、自分で経験して学んだこと。挑戦してみると、いろいろわかってきたり、人とつながったりすることもあります」
「宝くじは買わなきゃ当たらないということと同じで、 挑戦しなきゃ何も始まりません」と続けた平。「何をしたらハリウッドに行けるのだろうか。英語でやればいいのかというわけでもない。英語ができなくても、ハリウッド作品に出ている人もいます。まずは、挑戦してみることがいいと思います」と力強く語っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2月14日(金)日米同時公開