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【ネタバレ】『片思い世界』ヒロイン設定の裏側 脚本家・坂元裕二、自身の死生観を語る

坂元裕二
坂元裕二

 脚本家の坂元裕二が13日、都内で行われた映画『片思い世界』(公開中)の公開記念ティーチインイベントに出席し、本作の物語に込めた思いを語った(※ネタバレあり。本編を鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします)。

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 ドラマ「カルテット」(2017)、映画『怪物』(2023)などの坂元が土井裕泰監督と大ヒット映画『花束みたいな恋をした』(2020)以来のタッグを組み、広瀬すず杉咲花清原果耶が主演を務めた本作。12年の強い絆で結ばれた3人の女性が、それぞれ片思いをしながら東京の片隅にある古い一軒家で共同生活を送る姿を描く。

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~以下、本編のネタバレを含みます~

 事前に美咲(広瀬)、優花(杉咲)、さくら(清原)が実は亡くなっていたという物語の設定が公式で明らかにされたが、坂元は自身の死生観や物語の着想のきっかけを熱っぽく回想した。

 坂元は、物語の着想を「親戚が亡くなったその日の帰り道に思いついた」と紹介。「ただ思いついたのではなく、これはもしかしたら自分が子供の頃に考えていたお話だったんじゃないかって思った」といい、「人が亡くなったりすると、子供の頃によく布団の中で泣いていたんです。人が亡くなることを4、5歳の頃に認識して、自分の家族や、おじいちゃん、おばあちゃんは死んでしまうんだって。それをなかなか受け入れられなかったんです」と振り返る。

 幼少期、坂元は天国と地獄の概念などを知り、死後の世界に恐怖を感じていたという。「それが受け入れられなくて、自分で考えたお話が(死者は)いなくなっていないんだという物語です。死んでも、ただ別の世界に行って、普通に同じように暮らしていて、ご飯も食べるし、滑ったり転んだりしているんだって布団の中で考えたんです。(本作の物語を思いついた時に)これは大昔に考えていたことだってすぐ気づきました」

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 坂元は「僕はその頃から天国や地獄の概念がピンとこなくて……。人の死の物語は数千年前からあった。それ(天国や地獄の概念は)は現世においてちゃんとしなさいよって秩序や統治をするために考えられたものであって、人の悲しみや人への思いを癒やすための物語ではないということにも気づいたんです。今回、それとは違うものがあった方がいいんじゃないかっていう、それが始まりでした」と続ける。

 客席からは「映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)などと違い、死んでいる人の世界、生きている人の世界が交わらないで終わった」との指摘も。それに対し坂元は「昔から天国から戻ってくる話はたくさんあったけど、自分はとても現実的な人間で、亡くなった人と交わった経験がないんです」とその理由を説明。「うちの母は幽霊がいると言ったりする人でしたけど、私自身は見たことがなくて、そこの嘘は自分の書き方としてつけなかった」といい、「この物語を作りながら、(この世界観を)どこか疑わしいという気持ちも同時に持っていた」と吐露した。

 坂元は、劇中のラジオから聞こえてくる津永悠木という男性が「自分だと思っていた」とも述べ、「あいつは嘘を言っているかもしれない、もしかしたら全部が嘘かもしれない。ああいう本当のことを言っているのか嘘のことを言っているのかわからない人が自分の立場だった。エッジの白黒がついていないところに自分が立っているので、(死者とは)交わらないのが自分のスタンスだった」とコメント。また、ラジオの声の人が松田龍平であることも紹介し「気づいていない人、多いでしょ」と話して笑顔を見せていた。(取材・文:名鹿祥史)

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