ADVERTISEMENT

リブート版『新幹線大爆破』衝撃タイトルも変更せず JR東日本特別協力の裏側

JR東日本の特別協力が映画の「本物らしさ」を演出した
JR東日本の特別協力が映画の「本物らしさ」を演出した

 1975年に高倉健さん主演で公開された同名映画を、半世紀ぶりにリブートしたNetflix映画『新幹線大爆破』。昭和から令和という時代の移り変わりのなか、作品をどのようにリブートしていったのだろうか。プロデューサーを務める佐藤善宏氏が、前作では成し得なかったJRの協力など、制作の裏側を語った。

【ネタバレ】「ALFA-X」と「はやぶさ」が併走『新幹線大爆破』場面写真&メイキング

 50年という長い年月を経てリブートされた『新幹線大爆破』。企画のあらましについて佐藤プロデューサーは、高倉さんとタッグを組んだ映画『あなたへ』(2012年)の現場での会話で、高倉さんが『新幹線大爆破』をお気に入りの映画にあげていたことが、作品への最初のアプローチだったと明かす。

ADVERTISEMENT

 「高倉さんが『台本を読んだとき、オファーされた役とは違う犯人役が面白かったので、そちらをやった』とおっしゃっていたんです。そのとき私も初めてこの映画を観て、高倉さんのおっしゃっている意味を理解しました。そこからこの映画がずっと心に残っていて、様々なことが高度化された現代ならもう少しやれることはあるのでは……と思うようになったんです」。

 そんななか、実写版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年)で樋口真嗣監督と出会った佐藤プロデューサーは、樋口監督が怪獣映画以外で「好きな映画3本」のうちの一つに1975年版の『新幹線大爆破』をあげていたと知る。続く2本は『太陽を盗んだ男』と『日本沈没』。『日本沈没』は、今回の映画で主演を務める草なぎ剛とタッグを組んだ樋口監督が、2006年にリメイクした。

樋口真嗣監督

 「いろいろなことがつながっていくなか、私もNetflixに入ることになり、樋口監督と新しい企画について話をする機会があり、『新幹線大爆破』が浮かび上がってきたんです」。

ADVERTISEMENT

 新幹線の爆破予告をする犯人グループと、新幹線の安全な運航を守る総合指令所とのスリリングな攻防が描かれた1975年版。新幹線の並走シーンなど、映像も話題になったが、令和の時代では新幹線を取り巻く環境が大きく変わり、リブートは至難の業だという見方もあったという。そんななか、樋口監督と佐藤プロデューサーは熟考の上、勝算を見出した。

 「まず一番大きかったのは、いまのVFX技術で表現できることが増えたこと。もう一つはJR東日本さんの協力です。今回“特別協力”という形で参加くださってますが、様々なご縁と伝手でリサーチをしていくなかで、JR東日本さんは、すごくフレキシブルに協力していただける可能性があるのでは……という手ごたえを感じたんです。そこで最初は(新幹線が)西から東京へ向かうというシナリオだったのですが、東北から東京へ向かう新幹線という形にすべて書き直したんです」。

 1975年といまでは、さまざまな社会情勢が変化している。新幹線を取り巻く環境も、当時とは全く違う。何よりも決定的なのが列車の本数。現在の新幹線は分単位で運行されている。1975年版のようなストーリーラインでリアリティを持たせることはできるのか。そこは大きな問題だった。

ADVERTISEMENT

 「JR東日本さんのご協力を得たなか、東日本大震災のときに災害対応をされた方にもお話を聞かせてもらったんです。そのときダイヤを空けるというのがどれだけ大変で、多くの手順が必要かということを知りました。一方で、話を聞いていくうちに、高度にシステム化され、緻密に運行されているからこそ、できることも浮かび上がってきました」。

 新幹線同士のすれ違いシーンや、救出号との物の受け渡しをするシーンは、リブート版でも是非入れたいという強い思いのなか、徹底的なリサーチをかけ、シナリオを書き上げていった。佐藤プロデューサーと樋口監督といえば『シン・ゴジラ』でもタッグを組んでいる。あの作品でも、リアルな怪獣災害シミュレーションの描写は話題になった。

 「ほぼ『シン・ゴジラ』を作っているときに近い感覚で、実際にこういう事件が起きたらどういう対処をするのか……ということはリアルに描いているつもりです。しかし、協力をいただけるとは言っても、ある種世界のIPである新幹線というのは企業秘密の塊なわけで、安全対策として見せてはいけない部分も多々ありますし、我々にも教えてもらえないこともある。そこはフィクションにせざるを得ない部分もありました」

ADVERTISEMENT
本作では事件に遭遇した鉄道人たちをメインに物語が展開

 さらに主人公が乗客の安全を守る車掌となったことも、今回の特別協力となったJR東日本との親和性も高かった。

 「JR東日本さんの、東日本をエンターテインメントで盛り上げたい、活性化していきたいという思いは、以前から我々にも伝わってきていたんです。また東日本と言えば、2011年に起きた東日本大震災で大きな被害にあわれた地域。そんななかで、Netflixで東北の地、東日本の地を駆け抜けるシーンを全世界190以上の国に配信することで、映像としても残りますし、エンタメとしても世界に大きくアピールできる良い機会と思って頂けるのではと思ってご協力をあおぎました」。

 それでも当初、佐藤プロデューサーは協力してもらえないのでは……という思いが強かったという。実際、1975年版は、国鉄からの協力を得ていない。「やっぱりタイトルが『新幹線大爆破』じゃないですか。お話させていただく際も『タイトルは変えませんから』ということは何度も確認させていただきましたが、それにしても自分たちの大切な電車を爆破してしまうわけですから。ものすごく手応えのある交渉ということではなく、どこか寂しさを抱えた交渉だったのも事実です」。

ADVERTISEMENT
草なぎとのんは、社員が受ける研修にも参加した

 しかし蓋をあければ、とても協力的だったという。車掌を演じた草なぎ、運転手に扮するのんは、社員が受ける研修に参加し、JR東日本の社員たちの矜持も胸に刻み込めた。

 映像技術の進歩、新幹線というIPを持つ鉄道会社の協力によって出来上がった『新幹線大爆破』。ミニチュア撮影では、本来なら10分の1、25分の1という規模のサイズ感だというが、本作では6分の1というスケールの模型を使い撮影が行われた。そこまでのこだわりを持って作り上げられた作品に、佐藤プロデューサーは「見せたい部分を脚本でも先に決めてこだわりを持ってしっかりと描いた作品です」と力強くアピールした。(取材・文・撮影:磯部正和)

Netflix映画『新幹線大爆破』は世界独占配信中

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT