ビル・スカルスガルド『ノスフェラトゥ』怪演を支えた驚異のメイク“伯爵”の全貌&メイキング写真公開【ネタバレあり】

映画『ウィッチ』『ライトハウス』などのロバート・エガース監督が、吸血鬼映画の原典を現代によみがえらせた『ノスフェラトゥ』(2024)が公開中だ。本作で最も注目を浴びているのが、『IT/イット』シリーズのペニーワイズ役で知られるビル・スカルスガルド演じるオルロック伯爵だろう。長時間に及ぶ特殊メイクで、今回も大変貌を遂げたビルの姿が、その誕生秘話と共に公開された。(ネタバレ注意。以下、映画のネタバレを含むビジュアルおよび解説が含まれます)
【ネタバレあり】『ノスフェラトゥ』オルロック伯爵の全貌!メイキング写真ギャラリー
本作は、エガース監督が幼少期に夢中になったという、F・W・ムルナウ監督による吸血鬼映画の古典『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)を、独自の視点でリメイクしたゴシックロマンスホラー。19世紀のドイツを舞台に、謎の悪夢に苛まれる女性エレン(リリー=ローズ・デップ)と周囲の人々の運命が、不気味な伯爵と交わる様を描く。
オリジナル版から約100年を経た現代に吸血鬼を蘇らせるため、エガース監督と特殊メイク担当のデヴィッド・ホワイト(『マレフィセント』『ダンボ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)は、医学的、歴史的な研究論文や書籍を参考に、肉と骨の腐敗について徹底的に調査。その後、吸血鬼であるオルロック伯爵を演じるビルの顔や骨格などの型を数種類作るところから始めた。

ホワイトは「顔と頭の型取りは、ビルの顔の特徴を損ねない程度に行ったが、同時に普段とは異なる顔に仕上げた」と証言。造形は、ビルの演技のニュアンスが損なわれないよう、考慮しながら進められたという。
吸血鬼といえば、牙のような歯が連想されるが、エガース監督が希望したのは、曲がって少し欠けたような、左右対称ではない歯形。また、枯れ枝のように細く長く伸びた指の長さにもこだわりが詰まっており、ビルの指に爪付きの細長い球を取り付け、指を約2.5センチという絶妙な長さに伸ばしている。ホワイトは「とても素敵だったよ。彼はその手でとても良い演技をする。暗闇でも上手に手を扱えるように研究を重ねていた」と振り返る。

見事な変身を遂げたビルは、ビジュアルだけではなく、ペニーワイズ役と同じく声でも周囲を魅了。重厚感ある声で、一目で彼とはわからないほど恐ろしい変貌を遂げたビルに、エレン役のリリーは、初めは心底怖いと思ったそう。さらに「恐ろしいほどに朽ち果てて古びた悪魔に変身した人が撮影の合間に冗談を言ったり、丁寧な態度で質問したり、周囲に協力したりする姿を見るのは面白いわ」とビルの和やかな人柄を表すエピソードも明かしている。
本作には、撮影に必要な演出のためにキャンドルの明かりが必要となれば適したカメラレンズを使用し、スタジオに当時の建物を研究した約60ものセットを組み、本物のねずみ約2000匹を使って撮影をするなど、エガース監督の本物に対するこだわりが詰まっている。(編集部・入倉功一)