山寺宏一「まだまだ若手」声優デビュー40周年、“楽しませたい精神”が原動力

1985年の声優デビューから、今年で40周年を迎えた山寺宏一。声優、俳優、司会と活動の幅を広げ、日本のエンターテイメント業界の第一線で活躍し続けている。ディズニー最新作『リロ&スティッチ』では、アニメーション版に続いて実写版スティッチの声を担当。ディズニーの人気キャラクターに再び声を当てた山寺がインタビューに応じ、スティッチへの思い、40周年を迎えた声優活動の原動力について語った。
スティッチの声「いまだに正解がわからない」
試作品626号ことスティッチは、破壊生物として開発された銀河連邦のエイリアン。不時着した地球でひとりぼっちの少女リロと出会い、絆を深めながら、オハナ(=ハワイ語で“家族”という意味)の大切さに気づいていく。
アメリカでは、2002年のアニメーション版を手がけたクリス・サンダース監督がスティッチの声を担当している。山寺は、初めてスティッチの声を聞いた当時から「クリス・サンダースさんの真似をすることを考えて吹き替えています」といい、「吟味した演技というよりも、いかにその声を出せるかどうかの勝負でした」と振り返る。
アニメーション版の続編映画やOVA、テレビシリーズ「リロ アンド スティッチ ザ・シリーズ」などを含めると、山寺は20年以上スティッチに声を当てているが、「いまだに正解がわからないんです」と今も試行錯誤しながら収録しているという。
「クリスさんが好きなように演じていらっしゃるので、超倍音に聞こえる時もあるし、あまり倍音が響いてない時もある。普通の裏声なのか、地声を高くしたのか、どちらかわからない時もあります。とにかく聞いて、それを真似しようと必死です。クリスさんの声を目指して声を当てています」
もふもふとした愛くるしい実写版スティッチは、まるで現実世界に存在するかのようなクオリティーだ。山寺も「鼻の部分は、以前飼っていた犬や猫を連想させます。実際に抱きしめて、その重さを身体で感じてみたいです」と可愛さに魅了された様子だ。「スティッチがもしかしたらこの世にいるかもしれないと、みなさんにも感じていただきたいです。それぞれの可愛がり方で、スティッチを愛してくれたら嬉しいです」
スティッチに限らず、自身が声を担当しているキャラクターは「自分の分身みたいに感じています」と山寺。東京ディズニーリゾートを訪れた際には、自分が担当したキャラクターのグッズがどれくらい展開されているか気になるといい、「お子さんがスティッチのTシャツを着ていたり、カバンを持っているだけでも嬉しくなります」と笑顔で語った。
今までやってきたことを長く続けたい
変幻自在に声色を使い分け、「七色の声を持つ男」としても知られる山寺。その唯一無二の声は、40年経っても衰えを感じない。山寺は「声は年相応で変わっています。出なくなった声もあるし、逆に若い頃出なかったけど今は出るようになった声もあると思います」と自身の声を分析する。
現在も隔週でボイストレーニングを行っているそうだが、「仕事を続けること」こそが声を保つ最大の秘訣なのだという。「無理して声を出すのではなく、効率よく無駄のない出し方をしないと、声が出なくなっていくと思うんです。間違った使い方をしてポリープを作ってしまうと、年齢を重ねたことで治りも遅くなってしまいます」と声の出し方にも気を遣っている。
そんな山寺の活動の原動力は「人を楽しませたい」という気持ちだ。「自分を認めてほしいということより、とにかく楽しませたい。自分が何かやることで、楽しんでもらえる人がいるなら、全力で取り組みたいと思っています。この仕事は、みなさんの反応がわかりやすく、たとえばSNSが発展したことで『あれ面白かったよ』とすぐに反響をもらえる。そういう反応って、本当に嬉しいですよね。起用していただいたからには、絶対に期待以上のもので返したいという意地があります。自分にそこまで才能があったわけではなく、創意工夫して何とかやってきたと思っているので、みなさんの声がある限り、頑張り続けたいです」
デビュー40周年を迎えたが、山寺は「90歳で現役の先輩もいらっしゃるので、僕なんかまだまだ若手だと思っています」と初心の気持ちは忘れない。「喉だけではなく、体も鍛えなくちゃいけない。健康であることが1番なので、真剣に取り組んでいきたいです」と改めて決意した。
今後の活動については「まだやってないことに挑戦するよりも、今までやってきたことを長く続けたいです」と語る山寺。自分が主体となって何かを発信することにも興味があるといい、「今までお世話になった人たちに声をかけて、自分発信でふるさとへ何か恩返しができないかと考えています」と期待を膨らませていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
映画『リロ&スティッチ』は全国公開中


