歌麿の闇が深すぎた…“師匠”鳥山石燕と悲願の再会に涙「全ての絵描きに刺さる」

横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほかで放送中)の10日放送・第30回では、染谷将太演じる喜多川歌麿が転機を迎えるエピソードが展開し、自身の過去と向き合う過程で想像を上回る闇を抱えている事実が浮かび上がり、SNSでは悲痛の声が上がった。かつて蔦重と再会して過去のトラウマから解き放たれたかのように見えた歌麿だったが、彼が抱えている闇は想像以上に深く、壮絶なものだった(※ネタバレあり。第30回の詳細に触れています)。
第30回「人まね歌麿」では「時が来た」のキーワードを巡り、松平定信(井上祐貴)、一橋治済(生田斗真)、そして歌麿らが新たな一歩を踏み出すさまが描かれた。黄表紙の「江戸生艶気樺焼」が売れ、日本橋の耕書堂は開店以来の大盛況となるなか、蔦重(横浜流星)は狂歌師と絵師が協業した狂歌絵本を手掛けようと始動。そのころ、歌麿は“人まね歌麿”と噂になり始め、蔦重は今が売り時と判断し、歌麿ならではの絵を描いてほしいと新たに依頼する。蔦重のためと一念発起する歌麿だったが……。
蔦重が歌麿に提案したのは、多くの絵師を名を上げたという枕絵(性風俗にまつわる絵画)。気は進まないものの“やらねぇといけねえ気がする”と腹をくくった歌麿が、“好きな女”と聞いて思い浮かべたのは……幼いころ、“なぜ生まれてきたんだ”と自身を痛め続けた母(向里祐香)の顔だった。やがて歌麿は“あたしを描いて名を上げようってのかい? 殺しただけじゃ飽き足らず”と恨みのまなざしを向ける母の幻影を見るようになり、さらには母と共に自身を苦しめたヤス(高木勝也)の幻も出現。「こりゃあ俺を殺した時のことかい?」と嘲る。視聴者の間では「歌麿には酷だわ…」「歌麿にとって女はおっかさんなんだね」「過去の亡霊が蘇る…」「闇が深すぎる…」と同情や先行きを不安視する声が上がっていたが、蔦重の妻てい(橋本愛)が「苦行にしか見えない」と案じる通り、歌麿はろくに食事もとらず自室にこもるようになり追い詰められていく。
ある時は、すたれた神社で見かけた女の顔が痛々しい打撲痕のある母に見え、そばにいた男をヤスと見まがい石で殴打する歌麿。歌麿は母が男に殴られていると思い込んだようで錯乱状態となり、偶然気付いた蔦重が阻止したことで惨事は免れた。“描けねぇんだよ……”“役に立ちてぇとは思ってんだよ”とぽろぽろ涙を流す歌麿。そんな彼を救ったのが、少年時代(唐丸)に共に絵を描き、絵を描く喜びを教えた妖怪画の大家・鳥山石燕(片岡鶴太郎)だった。
歌麿が幼いころ、母に殴られてできたたんこぶが割れているのを見た石燕はそれが目玉のように見えるといい、「三つ目」と呼んでいた。石燕は歌麿と再会すると「やはり歌麿は三つ目であったか~」「なんで来なかった? いつくるか、いつくるかと待っておったのじゃぞ」と大層喜び、「けど、よう生きとったな、よう生きとった」としみじみ。戸籍もなく、母に生まれてこなければよかったと虐げられ続けた歌麿にその言葉が心底響いたのか、「覚えててくれたんですか……? ちょいと遊んだだけのガキの事を……」とうれし涙を浮かべた。
絵を描く才に恵まれた者の使命を歌麿に説く石燕に、SNSでは「すべての絵描きに刺さる言葉」「歌麿のことわかってくれてる」「さすが先生」「待っててくれたんだねえ」「蔦重以外の理解者は初めてか」「よかったね歌麿」「泣いてる」と感極まる声が続々。歌麿が石燕に弟子入りしたのちは憑き物が落ちたように穏やかな表情になり、“俺も本当にそんな目持ってるんですか?”と問う歌麿に“多分持ってんじゃねえかな。待ってりゃそのうち何か見えてくるさ”とのんきに答える石燕のやりとりも微笑ましく、早速庭先で花の絵を写生し始める歌麿に「笑顔が戻った」「いい顔してる」と安堵の声が上がっていた。
なお、歌麿が神社で出会った“女”を演じる藤間爽子は「のちの歌麿の妻」として発表されており、どのようなルートで結ばれるのか注目を浴びている。(石川友里恵)


