『国宝』トロントの観客が喝采 李相日監督「チャレンジになると思っていた」制作振り返る

現地時間11日、カナダで開催中の第50回トロント国際映画祭 Special Presentation 部門に出品された、吉沢亮主演の大ヒット映画『国宝』の北米プレミアとなる公式上映の模様が公開された。李相日監督が現地を訪れ、上映終了後には客席からスタンディングオベーションが巻き起こった。
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トロント国際映画祭は米アカデミー賞の前哨戦として広く知られ、第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した 『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)は2021年に Special Presentation 部門に出品。『国宝』もアカデミー賞の日本代表に選出されている。
上映会場となった Royal Alexandra Theatre では、1,244席が満員に。上映前、観客の前に登壇した李相日監督は、トロントについて「Apple TV+の『Pachinko パチンコ』の撮影で長期滞在しており、スーパーマーケットに買物に行って、お米を炊いてサーモンを焼いていた」と明かし、トロントを「So Beautiful Town」と評して会場は大盛り上がり。さらに上映終了後には、スタンディングオベーションが巻き起こった。
拍手喝采の中、再び登壇した李監督は、MCのジョバンナ・フルディ(トロント国際映画祭インターナショナルプログラマー)から「歌舞伎を題材とした映画は『残菊物語』(1939年/溝口健二監督)が基準となっていますが、歌舞伎関連に限らずこの映画に最も影響を与えた映画や映画監督は誰ですか?」という質問され、「学生時代に見たチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』の影響は大きいです」と回答する。
また、日本において、同作が邦画実写史上2位の興行収入を記録していることについて「この成功を想像できていましたか? またどう感じていますか?」と聞かれると「想像できるわけないじゃないですか」と返して会場を笑いに包み、「この映画を制作する当時は、日本映画にとってのチャレンジになると思っていました。歌舞伎の映画で大ヒットすることはないと、どこかで感じていたかもしれないし、どこか様子を見ていたと思います。様々な難しい条件が揃っていると、関係者全員が思っていました」とあらためて制作当時を振り返り、観客からの握手やサインに応えながら会場を後にした。
映画『国宝』は、作家・吉田修一が3年の間、歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験をもとに書き上げた同名小説の映画化作品。『サマーウォーズ』の奥寺佐渡子が脚本を担当し、極道の息子として生まれるも数奇な運命をたどり、歌舞伎役者の家に引き取られた主人公・喜久雄の激動の50年を追う。稀代の女形となる喜久雄を吉沢、喜久雄のライバルとなる歌舞伎役者の息子・俊介を横浜流星が演じた。日本国内の興行収入は130億円を突破する記録的な大ヒットとなっており、2026年初めにGKIDS配給で米公開されることが決定している。


