『死霊館』モデルの言葉が変えた幽霊への思い パトリック・ウィルソンが語るロレインさんとの時間

12年前、映画『死霊館』(2013)から始まった、心霊研究家ウォーレン夫妻の恐怖の物語が、最新作『死霊館 最後の儀式』(10月17日公開)でフィナーレを迎える。ロレイン・ウォーレン役のヴェラ・ファーミガと共に、夫のエド・ウォーレンを演じてきたパトリック・ウィルソンが、その旅路を公式インタビューで振り返った。
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『死霊館』は、『ソウ』『アクアマン』などのジェームズ・ワン監督が、実在の心霊研究家ウォーレン夫妻が体験した事件を基に描くオカルトホラー。その恐怖は『アナベル』『死霊館のシスター』などのスピンオフにまで拡大し、一大ユニバースを形成した。そのフィナーレを飾る『死霊館 最後の儀式』では、夫妻にとって最後の調査となった、1986年のアメリカ・ペンシルベニアでの事件を基に、二人の娘ジュディを狙う邪悪との対決を描く。
12年にわたった『死霊館』ユニバースの旅路について「全く予想していませんでした」と語るパトリックは「ジェームズ・ワンの手腕にかかれば、少なくとも2作はいけるだろうと確信していました。だが、4作になるとは思わなかったし、2作を(『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』『死霊館 最後の儀式』を監督した)マイケル・チャベスと一緒に作ることになるとも思っていなかった。本当に恵まれた経験です」と振り返る。
最初の2作品の撮影前には、シリーズのモデルとなった、生前のロレイン・ウォーレンさんと話す機会にも恵まれたといい「非常に大きな意味がありました」とパトリックは述懐する。「夫妻の呪物部屋を見て回ったり、庭で鶏と遊んだり、いつも神父が一緒にいたりしました」
「僕たちが見たものを、ジェームズに電話で伝えていたんです。『エドが絵を描いていたのを知ってる? 家中に絵が飾られているんだ。昔は絵を売って生活していたらしい』と僕が伝えたことで、エドが絵を描いているシーンを入れたり。彼らの家には鶏もいました。そこで1作目の撮影前にジェームズが『絶対に鶏を出さないと』と言ったので、それ以来、全作品で鶏が登場しています」
そんなパトリックが、今も心に刻んでいるというのが、ロレインさんから送られた「幽霊が全部悪いわけじゃない」という言葉だ。それはパトリックが、彼の家を訪れた異なる二人の知り合いが、“子供の声を聞く”という共通の体験をしたことを伝えた時に、ロレインさんがほほ笑みながら伝えた言葉だった。
「彼女はこう言ったんです……正確な言葉は忘れましたがー『きっとただ遊びたかったんでしょうね』と。『遊びたかった?』と驚き聞き返す僕に、彼女は『そうよ、幽霊が全部悪いわけじゃない』とね」
それ以来、パトリックの中で幽霊に対する“恐怖”が変化したという。「もし自分が幽霊になったら、人を怖がらせたいとは思わない。ただ一緒にいたいだけでしょう。例え、それが馬鹿げているとしても構わない。僕は何年もかけてそういう考え方を身につけたんです。誰かが『(幽霊の)声を聞いた』と言っても、まったく動じません。もしかしたらただ遊びたかっただけかもしれない。友達になりたかっただけかもしれない。ロレインが僕に教えてくれたのは、『怖がるな、大丈夫だ』ということなんです」
そのうえでパトリックは、エド役と永遠に別れるつもりはないことを示唆する。「その質問に答えるのは難しいですね。複雑な気持ちです。1年半後かそのくらいに、ヴェラ(・ファーミガ)と一緒に仕事の準備をしていない自分を想像できません。でも、本当に難しいのは『すべて終わったんだ』と完全に受け入れることです。自分の中にはまだ『ヴェラと一緒に何かやらないと』という思いがあります。それが何かはわかりませんけど、引退するわけではないので、エドと自分を完全に切り離すのは難しい。エドは僕自身なんです。本物のエドとは違いますが、僕の“エド・ウォーレン”は僕です。だからどうなるかは、これからわかることです」(編集部・入倉功一)


