ホラー版『蒸気船ウィリー』殺人ミッキーの動きはオリジナル版に忠実 『テリファー』主演俳優が“魔改造”

2024年にパブリックドメインとなったミッキーマウスのスクリーンデビュー作『蒸気船ウィリー』(1928)をホラー映画として“魔改造”した『SCREAM BOAT スクリームボート』(全国公開中)。殺人鬼と化したウィリー(ミッキーマウス)を演じたのは、残虐ホラー『テリファー』シリーズの殺人ピエロ“アート・ザ・クラウン”役でお馴染みのデヴィッド・ハワード・ソーントンだ。初代ミッキーマウスを大胆にアレンジしたデヴィッドがリモートインタビューに応じ、演じる際に心がけたことや撮影の裏側を語った。
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『SCREAM BOAT スクリームボート』の舞台は深夜のニューヨーク。スタテン島を通るフェリーの船内には、異様な存在・ウィリーが潜んでいた。無邪気なウィリーはやがて狂気に変貌し、船上で逃げ場を失った乗客たちを血祭りにあげていく。
ホラー映画化が発表されたのは、『蒸気船ウィリー』がパブリックドメインとなった翌日の2024年1月2日。『テリファー』シリーズのプロデューサーであるスティーヴン・デラ・サラ&マイケル・レヴィは、その1年前にデヴィッドへ同作の企画を持ちかけたという。「二人が僕のところへ来て『蒸気船ウィリー』を題材にしたホラー映画を作りたいというアイデアを話してくれました。私はその話を聞いた瞬間、『素晴らしい企画だ』と思いました。脚本を読んで『これは本当に面白くなる』と確信し、ぜひ参加したいと伝えました」
ミッキーマウスを殺人鬼へと変えるにあたり、デヴィッドは「『蒸気船ウィリー』に登場した初代ミッキーマウスに忠実でありたい」というこだわりがあった。「彼はほとんど喋らず、小さな声や音を発する程度でしたよね。だから、動きもできるだけオリジナル版に寄せたかったんです。音楽に合わせて身体を弾ませながら動いていたので、その軽快さを今作のウィリーにも残したかった。実際にスーツを着てみると、動きに制限がかかり、演技プランを修正する必要もありました。どうやってミッキーらしく見せるか試行錯誤しながら、原作の雰囲気をできる限り保つように工夫しました」
二次創作が可能になったのは、あくまで初代ミッキーマウスだけ。他のミッキーの商標はディズニーが保持しているため、少しでも間違った描写をすれば、大トラブルになりかねない。『SCREAM BOAT スクリームボート』の製作現場では「やってはいけないことリスト」が存在したといい、「例えば、ミッキーの象徴的な赤いパンツや黄色い靴は絶対NGです。僕らが使えるのはオリジナル版に基づくモノクロのデザインだけでした。喋り方も、当時のように、『ハハッ!』と小さな笑い声だけにとどめました」とデヴィッドは振り返る。
デヴィッドはまた、「年月と共にミッキーマウス自身も変化しています」とも語る。「『蒸気船ウィリー』や初期の短編作品では、今のキャラとは異なり、いたずら好きで、今で言うバッグス・バニーに近い存在でした。同作では“原点回帰”している部分もあると思っています」
『テリファー』でグロテスクな殺戮描写を数多く経験しているデヴィッドだが、意外にも『SCREAM BOAT スクリームボート』ではあまり血しぶきを浴びる機会がなかったと言う。「今作では、僕がその場にいない別撮りだったんです。クルーはまず、先にフェリー船内の様子を撮影し、僕は(カリフォルニア州)バーバンクのスタジオで、背景を投影した状態で演技をしました。なので、血が飛び散る心配はありませんでした(笑)。今作はむしろ、すでに撮影された映像と動きを正確に合わせることのほうが大変でした」
ハリウッドでは近年、「クマのプーさん」「ピーター・パン」などパブリックドメインになった作品のホラー化が後を絶たない。デヴィッドは昨今のトレンドについて「ホラーというジャンルに新しい息吹を吹き込み、新しいクリエイティビティーが生まれることは賛成です」と肯定的な姿勢を見せており、「昔から子供向けの物語にダークなひねりを加えることが好きなんです」と目を輝かせていた。
そんなデヴィッドは、今作が公開されてから本家ミッキーマウスとはまだ会えていないという。「僕があまりにもダークな方向に解釈してしまったので、(テレビなどでミッキーを見ると)前とは違う感覚になります」と複雑な心境を明かす。ちなみに、彼の友人はディズニーランドに『SCREAM BOAT スクリームボート』のミッキーがプリントされたTシャツを着ていく大胆な行動に出たそうで、「よくパークから追放されなかったと思いました」と笑いながら明かしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
『SCREAM BOAT スクリームボート』は新宿ピカデリー、池袋HUMAXシネマズほか全国公開中


