『アバター3』イカが人間を襲うシーンで大歓声!キャメロン監督「それが映画の素晴らしい点」

人気シリーズ第3弾『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(公開中)のジェームズ・キャメロン監督が来日時にインタビューに応じ、本作のアクションがなぜ観客にカタルシスをもたらすのかを分析した。
「わたしたちは実際、“人間を殺すエイリアンを応援したくなる映画”を人間の観客に観てもらっている」と切り出したキャメロン監督。「わたしたちはすべての人間が悪で、すべてのナヴィが善だとは言っていない。ナヴィはわたしたちがリスペクトする、われわれ自身の要素を象徴しているんだ。もっとああいう風になりたいという要素をね。そして人間のキャラクターたちは、好ましくない人間性の要素を象徴している。強欲、侵略、植民地化、天然資源の破壊といった悪い価値観だ。そして彼らは自らを邪悪だと証明し、この映画の最後には、わたしたちは自らの種族の敵を応援している」とクスっと笑う。
すぐに真面目な顔に戻したキャメロン監督は「それが、映画というものの素晴らしさだと思う。人々をキャラクターたちの心の中に入れ、普通なら持ちえない視点を持たせることができる」と映画が持つ力に言及。「そしてわたしたちが発見したのは、観客は人間がひどい死に方をすればするほど、歓声を上げるってことだ。イカのようなクリーチャーが人間たちをつかんで引きずり込めば、観客は大歓声だ! だがそれは映画の特性であり、わたしたちが人間たちを邪悪なものとして描いたからだけどね。自分たちがより良いと信じる価値観の側に立つことは、観客にカタルシスをもたらすのだと思う」と分析した。
なお、アクションシーンの数とその残酷さが増したという声もあるが、キャメロン監督は「第1弾と第2弾にもたくさんアクションはあって、本作にそれよりも多くのアクションがあるとは思わない。より多いのは、小さな、親密な、エモーショナルなシーン」と断言。本国アメリカでのレイティング決定のために暴力描写については徹底的にチェックをし、前2作を逐一参照してトーンも合わせたため、それは間違いないという。本作では“より感情面を追求すること”が目標だったといい、量や程度は変わらずともアクションのインパクトが増したということは、キャラクターにより感情移入させることに成功したということかもしれないと語った。
本作ではさまざまな主義の陣営がぶつかり合うことになる。「トゥルクン(パンドラの海に住む、クジラのような巨大生物)は完全なる平和主義者で、戦いや殺しはいかなる理由でも許されないと考えている。その一方で、非常に暴力的な敵(人間)がいる。彼らはこの惑星を破壊し、全てのトゥルクンを殺し、そのためには必要なだけナヴィも殺そうとしている。(主人公の)ジェイク・サリーは中道だ。彼は暴力を望んでおらず、ナヴィたちが殺されることになる“完全なる戦争”を始めることを望んではいない。彼の子供たちだって殺されるかもしれないから、彼はそれをできる限り止めようとする」
「だが、あるポイントに達したら、誰もが“自分が信じるもの、自分のコミュニティや人々のために戦わなければならない”ということに向き合わなければならない。つまり、道徳的な綱渡りを試みているようなもので、それらはわれわれが人間として、常に自問自答している問いでもある。いつ、立場をはっきりさせないといけないのか? 殺しと暴力はすべて、常に間違ったことなのか? それとも重要なものを守るための“正義の戦い”があり、そのために勇気を出して戦わなければならないのか?──それらは人類がその歴史を通して葛藤してきたものであり、一つの映画で解決できるとは思わない」と本作における戦争描写について語っていた。(編集部・市川遥)


