稲葉友『ゴールデンカムイ』宇佐美は“ナナメに実直” 全てやり切る覚悟で挑んだ強烈キャラ

シリーズ累計発行3,000万部を突破した大人気コミックの実写化プロジェクト『ゴールデンカムイ』。大ヒットを記録した映画第1弾、その直後を描いた連続ドラマに続く待望の映画最新作『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』が公開された。本作から新たに登場するキャラクターの中でも、ひときわ異彩を放ち、原作ファンからの注目度も高いのが、玉木宏演じる鶴見中尉を盲信する第七師団の上等兵・宇佐美時重だ。この難役を演じた稲葉友が、役への向き合い方、キャラクター分析、そして壮絶なアクションシーンの裏側を語った。
【画像】驚愕の再現度!『ゴールデンカムイ』稲葉友が演じる宇佐美
「どこまで行けるか」プレッシャーを熱量に変えて
大ヒットを記録した劇場版、そしてWOWOWの連続ドラマに続く最新作に、宇佐美時重という重要な役どころで参加。原作ファンでもある稲葉は、喜びと同時に大きなプレッシャーを感じたという。
「まず、『すごい役をやらせてもらえる』という思いと、『ゴールデンカムイ』の世界に入れるのだという喜び、そして『自分で大丈夫だろうか』という不安がありました。元々原作も読んでいたので、一気に様々な想像が巡りましたね。ですが、やるからにはどこまで行けるか、という気持ちでした。第一弾の劇場版も非常に面白く、その続編に合流できる楽しみはすごくありました」。
発表されると、SNSを中心にすさまじい反響が巻き起こった宇佐美役。その熱気は、稲葉自身にも届いていた。
「情報解禁の反響で、『ゴールデンカムイ』と宇佐美というキャラクターが本当に愛されているのだと実感しました。もちろん演じる前にもプレッシャーはありましたが、解禁後により強まったように感じます。ただ、撮影は終わっていたので『もう今からでは何もできない』という気持ちでもありました」。
現場では、先に作品の世界観を作り上げてきたキャスト・スタッフの熱が、大きな支えとなった。
「現場に入ると、皆さんの完成度や再現度が非常に高く、その中で実写として立ち上がった時の熱量や興奮を強く感じました。その熱に一緒に乗せてもらった部分が大きいです。特に、共演した柳俊太郎(※「柳」は木へんに夘)くんは付き合いが長く、彼が二階堂を体現している姿を見て、『自分もやらなければ』と現場で士気が上がりました。直接的に話し合うわけではありませんが、彼の姿に勇気をもらいましたし、『どこまででもやっていいんだ』という気持ちになりました」。
最短距離の暴力を振るう、宇佐美の“歪んだ実直さ”
宇佐美というキャラクターを構築する上で、片桐健滋監督(※「片」は旧漢字)やアクションチームと密にコミュニケーションを重ねた。特に、彼の人間性が色濃く表れるアクションシーンは、入念に作り上げていったという。
「宇佐美らしさをどう見せるか。特に豚小屋のアクションシーンは非常に大事だと考えていました。アクションチームの皆さんと『こうすると宇佐美らしいのでは』と話し合い、彼の行動原理を埋めていきました」。
思考を重ねることで、キャラクターの解像度が上がっていく。その過程で、稲葉がたどり着いた宇佐美の本質とは。
「一つは『実直』であるということです。ただ、その実直さはまっすぐではあるのですが、少し斜めというか、歪んでいる。その歪んだ実直さを突き進んでいるからこそ、周りから見るとズレているように見える。しかし、本人はそれを強く信じている。それが彼の行動に繋がっているのだと思います。また、暴力的ではありますが、乱暴な印象がないという点もありますね」。
そして稲葉は、宇佐美の暴力性には、ある種のロジックが存在すると分析する。「彼は状況に対して最短距離を取る頭の良さがあります。目的を達成するための最短距離の手段としての暴力であり、手数が少ない。まず相手に一撃を入れる、というように、ある種ロジカルに相手を倒していく。それが彼の狂気にも見えます」。
普通の人間ならば、ためらったり、様々な感情がわく場面でも、宇佐美はそれを省略できる。稲葉は「そうした部分に、宇佐美の特異性があると感じています。狂気を力で振るうのではなく、ロジカルに正確に目的を遂行していく。そのバランス感覚が面白く、演じていても非常に明確なイメージがありました」と目を輝かせる。
その唯一無二のキャラクターは、メイクや衣装といったビジュアル面からのアプローチによって、さらに強固なものとなった。稲葉は「本当に心強かったです」とチームの力に感謝すると「こんなにも『ゴールデンカムイ』の世界の中にいさせてくれるのなら、小手先の芝居をしても見透かされてしまうぞ、という感じがありました。現場の空気が一つ出来上がったものの中にいられるので、すごく助けられました」と振り返る。
しかし、完成した作品を自身で観た時の心境は、複雑なものだったようだ。「もうわかりません。本当に」と苦笑いを浮かべると「この作品を楽しみに待ってくださっている皆さんがどう感じるか、それに尽きます。公開してみないとわからないというのが正直なところです。物語として単純に面白いですし、実写ならではの面白さも感じています。ただ、自分が出ているシーンはやはり、『大丈夫だっただろうか』という気持ちで観てしまいますね」。
「チームの力によって完成した宇佐美時重」と周囲への敬意をまず口にした稲葉。本人は「自分では評価は分からない」と不安を口にしていたが、原作ファンからはすでに大絶賛が寄せられている。映画公開と同時にその熱い思いはさらに広がっていくだろう。(取材・文・撮影:磯部正和)


