実写『ゴールデンカムイ』原作ファンも高評価の理由

シリーズ累計発行部数3,000万部を突破する(2025年8月時点)野田サトルの人気漫画を山崎賢人(「崎」は「たつさき」が正式表記)主演で実写化したシリーズの映画第2弾として公開中の『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』。初日アンケートの満足度は96%(東宝調べ)、Filmarksの初日満足度ランキングでも1位(Filmarks調べ)だった。今後のさらなる続編も期待される本作について、原作ファンにも評価が高い理由を分析してみた(※一部ネタバレあり)。
本シリーズは、明治時代末期の北海道で、アイヌ民族から強奪された莫大な金塊を隠した男“のっぺら坊”が網走監獄に収監後、そのありかを全員で一つの暗号になる刺青として24人の囚人の身体に彫り、彼らを脱獄させたことから、その刺青囚人を巡って争奪戦が勃発するサバイバル・バトルアクション。2024年に映画第1作『ゴールデンカムイ』が公開され、同年にその続編「ゴールデンカムイ-北海道刺青囚人争奪編-」をWOWOWで全9話の連続ドラマとして放送・配信。そのさらなる続編が、網走監獄を舞台に熾烈な激闘を描いた本作にあたる。
~以下、一部映画の詳細に触れています~
シリアスとコメディのふり幅がより大きく
争奪戦の中心となるのは、主人公の元軍人・杉元佐一(山崎賢人)&アイヌの少女・アシリパ(山田杏奈/アシリパの「リ」は小文字が正式表記)のバディ、北海道征服を目論む鶴見中尉(玉木宏)率いる大日本帝国陸軍第七師団、そして戊辰戦争で戦死したはずの新撰組“鬼の副長”こと土方歳三(舘ひろし)という三つの勢力。この三つ巴の争奪戦に様々な思惑を持つ個性的なキャラクターが加わるが、裏切りも共闘もあるため、その勢力図や相関図は複雑に入り乱れる。この物語そのものとキャラクターの面白さが本作最大の魅力だが、命懸けの争奪戦は血生臭い戦いも多い。しかし本シリーズは全編にユーモアがあり、アシリパが人を殺すことを望んでいないことや当時の食文化なども描かれるため、殺伐としたハードでシリアスなだけの物語ではなく、アイヌ文化のリアリティを背景とした宝探しの冒険物語としても楽しめる。
特にユーモアの部分では、個性の強い各キャラクターの変人ぶりの面白さや下ネタも満載で、長編ストーリー漫画原作の実写化では削られそうなコメディ要素の強いエピソードまでも実写化。映画第2弾でいえば冒頭のラッコ鍋など、本筋とは絡まないエピソードも活かされ、そこではラッコ肉を煮込んだ匂いの催淫効果で杉元たち男性キャラ5人が欲情し、なぜか裸で相撲をとりあうというシュールな展開を見せる。そんな笑えるシーンの多さは、本作をハードなアクション映画と思っている人に、いい意味で驚きを与えるはず。シリアスとコミカルがバランスよく絡み合う作風こそ原作の持ち味だが、今回は特にそのテイストが活かされた映画となっていることも、原作ファンからの評価も高い理由だろう。
期待を裏切らない人気キャラの再現度の高さ
また、各キャラクターの再現度の高さは前作でも絶賛されたが、今回の新作公開に併せて映画第1作とドラマシリーズの特別編集版が地上波初放送された際も、「そっくりすぎ」「似てるだけじゃなくみんなハマってる」「本人連れてきた!?」「キャスティング最高」「漫画のまんま」「これほど忠実な原作漫画の再現は初めて見た」などの話題で、初見の原作&アニメ版のファンが改めてSNSで盛り上がった。そして新作では、第七師団上等兵の宇佐美時重(稲葉友)や盲目の刺青囚人・都丹庵士(杉本哲太)らが初登場。
さらには、鯉登音之進(中川大志)や犬童四郎助(北村一輝)らドラマ版からの参戦組も本格的に活躍するほか、ついにのっぺら坊の正体も明かされる。また、性格も容姿もどんどん変化していく二階堂浩平(柳俊太郎/「柳」は「木へんに夘」が正式表記)は、さらに奇行や幼児化が進行。柳の怪演がドハマリした二階堂は、クレイジーだが可愛げもあり、愛すべき敵キャラとなっている。
原作者監修&ドラマと映画の併用により原作に忠実に
物語も、尺の都合やあまりにも実写化に不向きな過激すぎる内容などから、原作の本筋やテイストを損なわない形で削ったと思われるエピソードはあるが、アニメ版では外されたエピソードも含め、かなり過激な内容にもギリギリまで踏み込んで原作に忠実に映像化。映画第1作とドラマシリーズでは原作コミック第1~11巻収録の第102話あたりまで、今回は原作コミックの第12~14巻収録の第115~139話あたりを映像化している。また、原作エピソードの入れ替えや改変・再構成などは、原作者の監修を経て行われている。
今回でいえば、夜の温泉で入浴中の杉元たちが敵襲を受けるシーンは、原作だと林の中を逃げながら戦うシリアスさが素っ裸による苦戦とコミカルさを交えて描かれるが、映画としての構成や撮影時の安全性などから服を着た展開に変更されたものの、原作者のアイデアで逃げ出す際に服を取り違えた形でユーモアを残している。ほかにもクライマックスで杉元が「俺は不死身の杉元だ!」と叫ぶオリジナルシーンも、原作者からの提案でよりキメ台詞が活きる位置に最初の脚本から変えるなど、原作者との密なやり取りを経た理想的な実写化が実現している。
そして今回最大の見せ場が、のっぺら坊を探す杉元やアシリパたちが潜入する網走監獄でのアクションシーン。この機に乗じて網走監獄へ突入してきた第七師団の兵士たちの銃撃戦に、収監中の700人の囚人たちが肉弾戦で挑む大乱戦が描かれる。ここに杉元も巻き込まれるが、集団戦だけでなく因縁深いキャラ同士の一騎打ちもあり、各キャラクターの個性が活かされたバリエーション豊かなド迫力のアクションで、前作を上回る激闘が見られる。
この網走監獄では主要キャラが総登場し、大きく動いた物語は節目を迎える。人気ドラマが続編を映画として展開した例は多いが、本作のように最初から映画とドラマの併用で長編原作の忠実な実写映像化を目指した例は、同じクレデウス制作の『沈黙の艦隊』など多くない。原作全314話・全31巻の約半分までの実写映像化に成功した本作は、ようやく折り返し地点でまだ先は長いものの、もしもさらなる続編が実現するならば完結までの構成の見通しは立ったのではないかともいえる。この挑戦的かつ野心的なエンタメ大作が、完結まで実写映像化に成功することをぜひ期待したい。(文:天本伸一郎)


