『ゴールデンカムイ』大谷亮平、原作再現シーンも大真面目 谷垣源次郎を支える“誠実さ”

アイヌの埋蔵金を巡るサバイバルバトルを描く『ゴールデンカムイ』。実写化シリーズは劇場版、連続ドラマを経て、ついに劇場版第2弾『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』へと突入する。個性豊かなキャラクターの中でも、東北マタギの谷垣源次郎は誠実さで異彩を放つ。演じる大谷亮平が、谷垣の本質、そしてファン待望の原作再現シーンの舞台裏などを語った。
【画像】驚愕の再現度!『ゴールデンカムイ』キャラクタービジュアル
変わらない「一本筋を通す」生き様
劇場版、そして連続ドラマを経て、物語はさらに激しさと混沌を増していく。登場人物たちの関係性が変化する中で、谷垣という男の在り方は、観る者に確かな安心感を与える。シリーズを通して、その人物像を演じる上で意識したことはあったのだろうか。
「根本的には変わっていません。物語の状況変化に谷垣なりに対応していく形です。彼はシンプルで真面目な人間。いつ裏切るかわからない人たちの中でも、変に模索せず、まっすぐに自分の生き方を貫きます。周りが動く中で、自分は一本筋を通すという意識の方が強かった。だから必要がなければ、変わらない方が良いというスタンスで演じていました」
“黄金”という名の欲望が人々を狂わせるこの物語で、谷垣の目的はあまりにも純粋だ。金塊ではなく、ただ一人の少女を守る。その異質な立ち位置こそが、谷垣を谷垣たらしめている。
「登場人物の多くは、裏切りも厭わず自ら動きます。そんな中で谷垣は受け身の立場です。アシリパ(※リは小文字)を守り送り届けることが生きがいとなり、いわば『なぜか争奪戦に巻き込まれてしまった』人物。何かを成し遂げる目的ではないので、周囲を引っ張るよりは、起こることに対して受け身で対応していく感覚でした。結果、彼が巻き込まれていく様子が面白く、可愛らしく見えるのではないでしょうか」
“ラッコ鍋”ストイックな舞台裏
原作の野田サトルは、大谷と対面した際に「ご飯をいっぱい食べて、もっとムチムチになってください」と伝えたという。原作者からの異例の指令。それは、俳優にとって最大の賛辞であり、同時に過酷な挑戦の始まりでもあった。
「できる限りのことはしました。私にできることといえばトレーニングくらいですが、結果的に体重は増えていました。ただ、衣装などに助けられた部分も大きいです。撮影の関係で、どうしても体毛が必要なので、体全体に特殊メイクに近いような準備は必要だったんです」。
だが、特殊な造形はあくまで鎧に過ぎない。その鎧に魂を宿すため、大谷は自らの肉体を削り、そして鍛え上げた。執念ともいえる役づくりの内実が明かされる。
「増量はしていました。メイクの準備で衣装合わせをした際には、『胸に関しては(自前で)パンプアップできているので、(特殊なものを)付けなくてもいいくらいだ』と驚かれました」。
肉体的なムチムチ感は、谷垣の人間性を象徴しているように感じられる。原作ファンのなかでも、特に人気が高い谷垣。その理由について大谷は、役の根底に流れる「誠実さ」が大きく起因しているのでは……と仮説を立てる。
「一作目から『(原作者の野田サトル)先生が喜んでくれている』と聞き、なぜ谷垣が愛されているのかを考えました。きっと、彼の生き様や作中で一番真面目なところが光っているからだと思います。周りは卑劣な人物も多いですから。その部分を大事に演じました」
そして、その誠実さは、物語で最も狂気に満ちた宴で試されることになる。原作ファンが映像化を熱望し、同時に危ぶんだ伝説の「ラッコ鍋」。その撮影現場で、谷垣はただひたすらに、真面目だった。
「あのシーンに意味はあったのでしょうか(笑)。物語には繋がりませんし、サービスショットですよね。ああいったおかしなシーンこそ、谷垣は至って真面目に演じることを心がけました。彼は一番洗脳されやすいタイプだと思うので、『これは何だ?』と疑問を持たず、ひたすら真面目に楽しんでいるように演じました」
画面に映し出されるのは、理性が溶けていく狂乱の光景。しかし、その裏側では、俳優たちによる、静かで熱い戦いが繰り広げられていたという。
「撮影は淡々と、1対1で順番に静かに進みました。やっていることは突飛ですが、現場は真面目でしたね。皆、体を披露することへの思いが強かったようです。誰かが持ってきたウエイトマシンが待合室に常にあり、出番の合間にトレーニングをし、直前にパンプアップして臨む、ということを繰り返していました」
“谷垣源次郎”と共に過ごしていく
本作で物語は、血と硝煙が渦巻く最終局面「網走監獄」へと雪崩れ込む。今後のシリーズの行方はわからないが、その人気ゆえに、この先、何年にもわたって共に歩むであろう、谷垣源次郎という男。大谷亮平の俳優人生において、この役との出会いはどのような意味を持つのだろうか。
「とても大きな存在であることは間違いありません。この長いスパンで嘘偽りなく演じられることが特別です。日本の俳優活動がまだ10年ほどなので、そのキャリアの半分近くを共に過ごすことになるかもしれないと思うと、非常に特別な役だと感じます」。
役柄の誠実さは、いつしか大谷自身のイメージと重なり合う。だが大谷は、悪戯っぽく笑いながら、「私は自分自身を誠実な人間だとは思っていませんし、真面目でもありません」と回答する。しかし谷垣というキャラクターへのアプローチ方法や、嘘なく作品に向き合う姿勢には、谷垣の誠実さと重なる部分が垣間見える。(取材・文・撮影:磯部正和)
映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』は全国公開中
ヘアメイク 堤紗也香/スタイリスト 菊池陽之介


