『マーティ・シュプリーム』エンディングに込められた意味

映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のジョシュ・サフディ監督が来日時にインタビューに応じ、最初から決めていたという本作の印象的なエンディングに込めた意味を語った。(本編を鑑賞後にお読みください)
「卓球で世界一になる」という1950年代のアメリカでは誰にも見向きもされないような夢を実現するため、ひたすら利己的に人生を駆け抜けていくマーティ(ティモシー・シャラメ)だが、さまざまな経験を経て最後には地に足を付けることを選ぶ。マーティが新生児室の前に立ち、たくさんの赤ちゃんたちの泣き声が響くなか、ティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド(Everybody Wants to Rule the World)」が重なっていくという美しいエンディングだ。
最初からのこの映像とこの音で物語の幕を閉じることを考えていたというサフディ監督。「この映画に関して最初のアイデアの一つは、これが“少年が大人になる物語”だということだった。これは謙虚さ、信念、無限、レガシー、そして無常さについての映画だと」
「最初から決めていたのは、本作を彼の“夢の葬式”であると同時に、“新たな夢の誕生”で終わらせることだった。ティアーズ・フォー・フィアーズのあの曲は、『ようこそ、君の人生へ(Welcome to your life)』という歌詞で始まる。彼が人生をスタートさせるために学ぶべきだった、すべての教訓を経てたどり着く言葉として、これほど詩的なものはないよ」
「わが子の目を見つめる時、彼はそこに“無限”を見いだし、その深遠さに圧倒され、謙虚になる。あの曲は非常に興味深い。1980年代のニューウェーブの多くがそうであるように、歌詞は非常にメランコリーで実存的で悲しいのに、曲自体はとても明るくハッピーだ」
「そしてそれは、この映画のエンディングそのもの。ハッピーエンドではあるが、その裏にはメランコリーが潜んでいる。マーティにとって、もうこれ以上もがき続けなくていいという幸せはあるものの、新たな葛藤が始まろうとしている。なぜなら、彼は“もがき”なしでどう生きていけばいいのか、まだ知らないのだから」とほほ笑んだ。(編集部・市川遥)
映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は公開中


