『ハムネット』とMCU『エターナルズ』に共通点 クロエ・ジャオ監督、新作発表までの4年間【来日インタビュー】

映画『ノマドランド』(2020)でアカデミー賞作品賞&監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督が昨年11月、最新作『ハムネット』(全国公開中)を引っ提げ第38回東京国際映画祭に出席した。映画祭期間中に来日インタビューに応じたジャオ監督が、マーベル・スタジオとタッグを組んだ前作『エターナルズ』(2021)から本作までの空白の4年間について語った。
2020年に発表された小説家マギー・オファーレルの同名小説を映画化した本作。16世紀のイギリスを舞台に、ウィリアム・シェイクスピアによる不朽の名戯曲「ハムレット」がいかにして誕生したかを、シェイクスピア家の愛と悲劇を通して活写する。第98回アカデミー賞では作品賞含む8部門にノミネートされ、シェイクスピアの妻・アグネスを演じたジェシー・バックリーが主演女優賞を獲得している。
『兄が教えてくれた歌』(2015/未)で長編映画デビューを果たしたジャオ監督は「最初の3作品を撮っていた頃の私は、『生き方』『文化』『精神性』に触れていました。30代という時期も重なり、本当に多くのものを吸収し、蓄積してきました」とこれまでのキャリアを振り返ると、巨額の予算と巨大なプロダクションチームを率いて製作した前作『エターナルズ』である種の達成感が込み上げてきたという。
「前作『エターナルズ』は、神々の系譜が人間性の本質について議論し、(超人族)エターナルズが人間と独自の関わりを持つ物語でした。それは、私が抱いていた『なぜ私たちはここにいるのか』『人間であるとはどういう意味か』『どこへ向かっているのか』といった問いが、火山の噴火のように一気に噴き出したような作品でした」
『エターナルズ』はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)における新ジャンルを開拓した野心作だったが、興行面&批評面ともに苦戦を強いられた。「火山噴火の後、辺り一帯に残る溶岩のようなものが私の中に残りました」とジャオ監督は回顧している。「私はその“溶岩”を掘り起こし、形を整え直すための新しいツールを学び、それを習得して新作にするまで4年間もの歳月が必要だったんです。ですから、ある意味で『ハムネット』は、『エターナルズ』での課題を再形成して製作したものといえます」
ジャオ監督はまた「実はこの2作品には、多くの共通点があります」と語り、その中の一つを挙げた。「『エターナルズ』と『ハムネット』の結末を考えてみてください。どちらも男女が見つめ合っています。『エターナルズ』ではユニ・マインド(※ヒーローたちのエネルギーが1人に集約にされること)」でひとつの存在にならなければならず、『ハムネット』では劇場が一体となり、観客がつながる必要がありました」
製作には、巨匠スティーヴン・スピルバーグや 『007 スカイフォール』『1917 命をかけた伝令』などのサム・メンデスが名を連ねている。二人は「クロエ・ジャオの映画が観たい」とクリエイティブ面での参加は最小限に留めたといい、ジャオ監督は「脚本や撮影したカットに対してフィードバックをくれますが、あくまでも、それは私が『自分の映画』を製作するための助言で、非常に的確なものした。彼らは最高のプロデューサーです。スタジオ側が理解しがたいような私の要求を通すとき、彼らが味方でいてくれることは常に大きな助けになりました」と彼らの貢献に感謝した。
ジャオ監督の作品には共通して、クライマックスで観客にカタルシスをもたらす。自ら脚本も執筆する彼女は、ストーリーを紡ぐ際、いかにして結末を導き出すのか。「私は直線的なストーリーテラーではありません。直線的なストーリーとは、一つの目標に向かってモメンタム(勢い)をつけ、そこへ到達することです。私の場合は、螺旋を描きながら深く掘り下げるスパイラル構造な物語です。そこには、明確な『終わり』はありません。目標に向かって進むのではなく、時には以前と同じ場所に戻っていることに気がつく。でも、以前とは何かが少しだけ違っている……勢いが止まった時が物語の終わりなのです」(取材・文:編集部・倉本拓弥)


