『侍タイ』外伝ドラマに白石和彌監督!「心配無用ノ介」安田淳一監督&田村ツトムが明かす夢のタッグの裏側

第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画『侍タイムスリッパー』(以下『侍タイ』)の外伝ドラマとなる連続時代劇「心配無用ノ介 天下御免」。映画で描かれた劇中劇のヒーローが、いかにして連続ドラマの主役へと躍り出たのか。そして、23日に放送された第2話に、鬼才・白石和彌監督(『孤狼の血』『十一人の賊軍』など)が参加した経緯とは。企画・監督・脚本・撮影を務める安田淳一監督と、主人公・心配無用ノ介/錦京太郎を演じる田村ツトムがドラマの裏側を明かした。(以下、第2話までの内容を含みます)
心配無用ノ介が帰ってくる!『侍タイ』外伝ドラマ「心配無用ノ介 天下御免」
本企画の出発点は、『侍タイ』の舞台あいさつだった。ロングラン公開となり、舞台あいさつを重ねる中、心配無用ノ介の予想外の人気ぶりを目の当たりにした安田監督が、冗談交じりに「心配無用ノ介でスピンオフを撮れたらいいですね」と語ったところ、観客から大喝采が起こった。その様子を見た安田監督は、応援してくれたファンへの恩返しができないかと考えるようになったという。
そんな折、安田監督は東映太秦映画村50周年の目玉企画として、「心配無用ノ介の公開撮影」を提案する機会を得た。「『侍タイ』の主演と同じくらいファンの皆様に愛されている、『心配無用ノ介』というキャラクターがおりますから。セットや木本、制作費も太秦映画村が持ってくれるなら、制作費をおさえてできると思いますよ、と伝えたんです」
しかし、その話がいつしか『侍タイ』配給を担当したGAGA、そしてBS-TBSへと話が伝わり、本格的なドラマ制作へと話が急展開していった。「最初は僕がお金をもらってやるはずだったのに、なぜか僕がお金を出す側に話が変わっていった」と笑う安田監督。「BS-TBSの計算だと若干の赤字になると言われたんですけど、このくらいの赤字やったら、やる意義はあると思うんで。僕としては出資をきちんとさせた上でやりますと。時代劇を廃れさせないためには、お客さんの前に新作を提示し続けることが大事やし、形にすることが何よりも大事ですからね」
一方の田村も、企画が正式決定するまでやきもきする日々を過ごしていた。舞台あいさつを重ねるたびに、ファンからは当然の決定事項であるかのように「ドラマはいつから始まるんですか?」と尋ねられるようになり、「なんとも言えない生殺しのような状況が1年くらい続いたんです」と当時の心境を明かす。だがこの準備期間があったことで「僕の中では、すぐ始まるよりも、1年間の心の準備みたいなものがあったので。無用ノ介を演じる錦京太郎の人物像をゆっくり考えて、熟成されていった。だからあまり緊張することなく現場に入ることができた」という田村。すかさず安田監督が「浅い熟成だけどね」と軽口で返すなど、ふたりの信頼関係もしっかりと熟成されていた様子だった。
本作のサプライズとなったのが、映画『十一人の賊軍』『孤狼の血』などで知られる日本映画界の鬼才・白石和彌監督の参加だ。京都映画賞の授賞式後に飲みの席で、安田監督が企画を話したところ、白石監督自ら「やりたい」と名乗りを上げたのがきっかけだった。
スケジュールの都合上、白石監督が担当するのは第2話のみで、安田監督はカメラマンとして参加している。「僕は自主映画の現場でやってきたわけですから。無理やなと思うようなショットでも白石さんは平気で言ってくるわけですよ。自分じゃ絶対にやらないだろうなというアングルもあって。僕が得るものはあまりにも大きかったですね」と述懐する安田監督。「やはり世界の白石ですからね。僕の時とは東映のスタッフもまったく態度が違うんですよ」と冗談めかすも、「とにかく白石さんって本当にいい人。現場もめっちゃ楽しいし、毎日定刻か、むしろちょっと巻いて終わったりするから。俺なんて普通に時間もオーバーしますからね。反省せなあかんなと思いましたよ」と笑ってみせる。
だが白石監督自身、勧善懲悪のヒーローを撮るのはなかなかない機会だった。安田監督曰く、白石監督は「自分の映画では、やっつけられる方の人ばっかり撮ってるから。いい人が主人公というのは撮ったことがないから、よくわからないところもあるんですよ」と言っていたというが、「(大もうけをたくらむ米問屋の番頭役で出演した)本山力さんも『十一人の賊軍』に出ていたので、最後、峰打ちで歯を折られて、口から血だらけの歯をババッと転がすみたいな絵を撮りましょうかとおっしゃっていたんですけど、『おじいちゃん、おばあちゃん、子どもが見るやつやから、それだけは勘弁してください』『ダメなの?』みたいな感じでした」と安田監督は笑ってみせた。
また第2話の見どころであり、笑わせどころでもあった「時代劇のふすまは誰が開けているのか?」のシーンでは、安田監督自らが演出を担当したという。「あそこは絶対に笑わせなきゃいけないシーンだったんで。白石さんがやると決まってからは細かく脚本に書いて、こんな感じでやってほしいと話していたんですけど、ほんなら安田さん、ここだけやってくださいと白石さんから言われて。世界の白石から、京都の安田がそこだけ演出を変わることになったんです」と明かす。
一方の田村も「白石監督はものすごい気さくな方で。でもいざ撮影に入ると、頭の中に描いている画を的確に伝えてくれたんです。ここはこうやって歩いてください、こういう風に撮りますからという感じで撮影がはじまり、驚くほどスムーズでした。安田監督は熱量があるので、こういう画で撮りたいというのもあるし。だから両方体験できたというのが、僕の中ですごく貴重な体験でした」と絶賛する。
さらに「僕が何よりも楽しかったのは、安田監督と白石監督がニコニコしながらひとつのモニターをのぞき込んで話し合っている後ろ姿。まるで映画が大好きな中学生のやり取りを観させてもらっているようで。それを見ることができたのはとても幸せでした」と現場の温かい雰囲気を振り返った。
本作の撮影現場では、安田監督率いる自主映画のチームが半分、東映京都撮影所を中心としたプロスタッフが半分の混成チームで進められたが、現場の熱量は非常に高かったという。田村も「打ち上げの席では、このスタッフでパート2をやりたい、このチームにまた会いたいとごあいさつをされた方がたくさんいらっしゃったんですよ。僕、あんな打ち上げははじめてで、感動しました。普段ならあんなことないですからね」と語気を強めた。
安田監督が特にこだわったのが、心配無用ノ介のキャラクター像だ。田村は当初、心配無用ノ介を粋でかっこいいヒーロー像として考えていたというが、安田監督から「かっこつけるのではなく、相手のことや庶民のことを思って怒りが込み上げ、落涙するぐらいのセリフ回しで言ってくれ」と強い要望を受けたという。「このドラマを観てくださる方たちが、そうだ! そうだ! と思うような、彼らの代弁者として、あなたの口から喋(しゃべ)ってほしいと言われ、自分の中で1つ筋が通りました」
そして、田村は改めて「『侍タイ』の中では点でしか描かれていなかった心配無用ノ介が、このドラマを通じて線としてつながった。ひとつの人物を通して演じられるし、深掘りもできる。それこそが役者が一番やりたいことなので、それが本当にうれしかったです」と喜びをかみしめていた。(取材・文:壬生智裕)
連続時代劇「心配無用ノ介 天下御免」はBS-TBSにて毎週木曜夜11時より放送中



