『キングダム』信VS万極戦をフィーチャーした理由 構想はシリーズ第3弾の頃から

原泰久の人気漫画を山崎賢人(※崎=たつさき)主演で実写映画化するシリーズ第5弾『キングダム 魂の決戦』(上映中)でフィーチャーされていることの一つが、主人公・信(山崎)と、山田裕貴演じる万極との戦い。原作で長きにわたって展開される「合従軍編」の中で、なぜこのバトルを重要視したのか? その理由を、松橋真三プロデューサーが明かした(※一部ネタバレあり)。
【画像】新キャラずらり『キングダム 魂の決戦』場面写真<12点>
紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く戦災孤児の少年・信(山崎)と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政(※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記/吉沢亮)を壮大なスケールで描く本シリーズ。第5作では、敵国・趙軍の総大将で軍師の李牧(小栗旬)が興した楚・趙・魏・韓・燕・斉という秦以外の全ての国から成る合従軍が、秦を滅ぼさんとする。
万極は、第3弾『キングダム 運命の炎』(2023)から登場。かつて長平の戦いで秦国に敗れ、投降した40万人の兵を生き埋めにされたことにより、秦国に凄まじい恨みを持つ。松橋Pによると、第5作で信VS万極戦をフィーチャーする構想は原作者の原、脚本・黒岩勉と話し合い決めたことであり、山田に万極役をオファーする際にも示唆したという。
「信と万極との戦いを重点的に描くことは、山田さんにオファーする時から考えていました。第3弾で山田さんに出ていただくときに、“まだ作れるかどうかはわからないけれど、第5弾を作るときには信との一騎討ちを撮るからね”というお話はさせていただきました」
信VS万極戦を重要視した理由の一つは、「切り込んでいかなければならないテーマがあった」ことだった。
「万極は、いわば戦を象徴する人物。人間の負の遺産を一身に背負う人。かたや信は平和のために、戦のない世の中を作るために戦をするということでいろんな矛盾を抱えていたりもする。その犠牲になったのが万極であり、彼の怨念っていうのは、もうずっと人間が業のように背負っているようなものと等しい。そこに切り込んでいかなければ『キングダム』はありえないのではないだろうかと。ですから今回は、テーマはひょっとしたらすごく重くなってしまうかもしれないけれども、そこに我々なりの結論というものを、信を通じて見せていくことがこのシリーズの新しい地平線を切り開くことになるんじゃないかなという風に思ったんです」
以下、一部映画のネタバレを含みます~
そうした課題に取り組んだ結果、山崎と山田の凄まじい演技によって「自分がやりたかったのはこれだったんだ」と気づかされたとも語る松橋P。
「万極は人間の闇を象徴するような存在である一方で、同情、感情移入もできる。だからといって、万極の側に堕ちていいのかといえば、そうではない。だから、万極の対極にある、人間の希望や夢や光を象徴する信が戦って絶対に勝たなくてはいけないんですけれども、ただ勝つだけではダメで。万極の闇を受け止め、人間の負の遺産を断ち切るように勝つという、深いところにまで切り込みたいと思っていたんですが、それはかなったと思います。今はこうして言葉が整理されて出てきているんですけども、これは完成した作品を観た後に感じたことなんです。山崎さんと山田さんの演技がすごすぎて、米津玄師さんから上がってきた主題歌が素晴らしすぎて。そうか自分がやりたかったことはこれだったんだっていうことに完成したものを観て腹に落ちたというのは、これまで経験したことがないことです」
信VS万極戦は本作の要ともなるシーンだが、山崎と山田への信頼も厚く、演技面は二人に任せていたという。
「2人のことはとても信頼しているので、突っ込んだ話をするよりも2人に任せたところが大きいかもしれないですね。信は信のまま大人になってほしいし、万極は今までの物語で培ったものをそのまま出してほしい、心の中に湧き上がるものをそのまま表現してほしい、といったことはお伝えしたと思います。加えて、山崎さんと山田さんも撮影期間に食事に行ったりして、お互いに高め合っていたようです」
第3作から参戦の山田にとって、満を持しての見せ場が用意された本作。4日間を費やして撮影したという信VS万極戦は、熾烈なアクションシーンもさることながら、人間の業を背負った万極の苦しみが胸を揺さぶる切ないシーンに仕上がった。(取材・文:編集部 石井百合子)



