『トイ・ストーリー5』偉そうな子育てアドバイスだけはしたくなかった…子供とデバイスを描いた製作陣の思い

映画『トイ・ストーリー5』の監督アンドリュー・スタントンと共同監督のマッケンナ・ハリス、そしてプロデューサーのリンジー・コリンズがインタビューに応じ、デジタル全盛の時代にデバイスに囲まれて生きる子供たちを描くにあたっての思いを明かした。
子供たちが1日のうち何時間もデバイスにくぎ付けになったり、SNSでいじめられたり……。子供たちとデバイスの関係に悩まされている親たちは多いだろう。スタントンは、本作がそんな現代的な問題の“答え”になっているかはわからないとしながらも、「状況に対する一つの“処方箋”ではあると思う」と語る。
「人間にはいつでも、デバイスを置いて自分の想像力を使うという選択肢がある。想像力は、すべての人間が生れた瞬間から授かっている才能であり、昔も今も持っているもの。だから、それがスクリーンタイム過多に対する“解毒剤”のようなものになると思う」(スタントン)。その言葉通り、本作では単にデバイスを悪と切り捨てるのではなく、想像力との共存を鮮やかに描いた。
「ピクサー映画は『トイ・ストーリー』や他の作品もそうですが、多くの場合、わたしたち自身を映し出す鏡のようなものになっているからこそ、これほどパワフルなのだと感じています」と分析したのはハリスだ。「本作でも、現実世界でわたしたちが目にしているものに非常に近い形で、テクノロジーに対処している子供たちや、同じような課題に直面しているキャラクターたちを映し出しています。でも、わたしたちはキャラクターたちの視点からしか“答え”を出すことはできません。カウガール人形ジェシーの答えは何だったのか、最先端タブレットリリーパッドの答えは何なのかを提示することはできるけれど、それだけです」(ハリス)
ハリスは「だからこそ、本作を観て自分の姿がそこに映し出されていると感じた人々を、何らかの形で力づけることができたならと願っています。そして、自分にはどれほどの力があるのかを実感し、これからの人生でテクノロジーとどう関わっていきたいか、自分自身で選択するきっかけになってくれたらうれしいです」と願いを込めた。
コリンズは「本当にその通りだと思う。わたしたちはここに座って『すべて解決しました』なんてフリをするつもりは毛頭ないしね(笑)」とハリスに賛同し、スタントンも「ないない(笑)。このインタビューが終わったら、僕たちもすぐにスマホをいじるだろうし」と笑って応じる。
「その通り(笑)。だから、そこはポイントではなかったの。みんなが今まさに経験し、直面している“現実”を誠実に描写することが目的だった。そして、それをキャラクターを通して見てみる。『テクノロジーのキャラクターってどんな姿だろう? どんな性格で、子供の抱える問題にどうアプローチするだろう?』って。そこに、ジェシーとの対比としての面白さがある」(コリンズ)
「例えば、リリーパッドが入ってきて、『よし、ここにすべてのデータがあるわ。それによれば、〇〇を実行すれば約30秒でこの問題はすべて解決する』と言ったら、ジェシーは『一体何を言ってるの!?』となる(笑)。そういうシーンは脚本を書くのも演じるのもすごく楽しくなるし、“経験はゼロだけどデータだけは大量にある”テクノロジー機器が子供の問題にどうアプローチするかという描写として、すごくリアルで本物らしくなる」(コリンズ)
「そうやって、子供たちの生活におけるテクノロジーの実際の問題について、“キャラクター中心の場所”から語り始めることができるの。わたしたちが答えを知っているかのように偉そうにしたり、誰かに子育てのアドバイスをしようとしたりするのではなくてね。そんなことは一番やりたくないことだから。わたしたちみんなが直面している現実をどう描き出すか、それがすべてだったの」(コリンズ)
デバイスが良くも悪くも子供時代の絶対的な一部となった今、わたしたちに何ができるのか? 奮闘するおもちゃたちの姿を通して本作が説教くさくなることなく真っすぐに語り掛けてくる理由は、製作陣のこんな真摯な姿勢にあったといえそうだ。(編集部・市川遥)
映画『トイ・ストーリー5』は公開中



