『踊る大捜査線 N.E.W.』おなじみの“アレ”がなくなった理由 本広克行監督、14年ぶり再始動に込めた思い

14年ぶりに帰ってきた青島俊作
14年ぶりに帰ってきた青島俊作 - (C) 2026フジテレビジョン BSフジ ビー・エー・シー

 織田裕二が演じる刑事・青島俊作の活躍を描く『踊る大捜査線』シリーズが、新作映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』(全国公開中)で14年ぶりにスクリーンに帰ってきた。多くのキャラクターが交錯し、スピーディに進む物語は、『踊る』シリーズの根幹の1つであるコメディー要素満載だ。「皆さんに喜んでもらえるもの」を目指したという本広克行監督がインタビューに応じ、14年ぶりとなる再始動作の撮影秘話、コメディーに対する自身の思いを語った。(以下、映画の内容を一部含みます)

【画像】みんな変わらない!「踊る大捜査線」青島ら湾岸署メンバー

「もっと映画館で笑いたい」最新作に込めた思い

(C) 2026フジテレビジョン BSフジ ビー・エー・シー

 映画公開の直前、本広監督は「この映画はふざけまくってるんです。だから、どういうふうに評価してもらえるか、ちょっとわからないです」と胸中を明かす。「映画って、テーマがしっかりある重厚な作品のほうが、周知されたり評価されたりするじゃないですか。僕は、映画館がどっかんどっかん爆発するような笑いに包まれる体験を、子供の頃にしていたので、もっと映画館で笑いたいだけなんです。笑いって、人生にとって大切なものでしょ?」。そう語る本広監督は「どうやって人を笑かすか、それを詰め込んだのが今作です」ときっぱり。

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 今作では、捜査第一課の所属になった青島が、誘拐や殺人ウイルスによる脅迫、3Dプリンター拳銃が使われた連続殺人事件などに立ち向かい、さまざまなシーンが目まぐるしいまでに展開していく。本広監督は、特に印象深かった3つのシーンの撮影を挙げ、それぞれ裏話を明かした。

 まず1つ目は、次々とキャラクターが登場してテンポよく進むアバン(※タイトルが出る前)。「キャストのスケジュールと撮影場所の許可取り、そしていっぱい入ったパロディーをいかにまとめるか。たくさんある点と点を全部結んで成立させていかないといけなくて、本当に大変でした。しかも長い(笑)。でも『どこまでやり続けるの?』という笑いにもなればいいなと思いました。僕は撮ってて楽しかったです」

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 2つ目は織田の芝居。特に物語後半の大会議室での青島のスピーチだという。脚本の君塚良一が「アリアのシーン」と呼ぶ、周囲に向けてせつせつと訴えるシーンだ。「君塚さんの脚本もいいし、織田さんの芝居も素晴らしい。ここまで成熟してるんだと感動しました」と感嘆を表す。

 さらに、青島と彼の同期で捜査第一課長・北丘雲斗(佐々木蔵之介)のシーンも絶賛する。「蔵之介さんは23年ぶりの参加ですから、現実的には積み重ねた過去はないのに、ああいう会話を過去にしたことがあったみたいに感じられる。それを当たり前のように表現するお2人の佇まいが素晴らしかったです」

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 続けて「だから、僕は何も演出していません」と笑う本広監督。もちろんそれは“何もしない演出”だということ。「せっかくいい台本で、いい役者なのに、カメラワークとかいろいろやりすぎると崩れるんです」と解説する。特に織田のアリアのシーンは「カメラを3台用意して、通してやってもらった芝居を一気に撮りました。そうすれば途中で台詞を止めなくてすみますからね。俳優さんがやりやすいのが一番。特に織田さんは1テイク目勝負なので。案の定、あのシーンも最初のテイクが一番よかったです」

 そして3つ目は、クライマックスで登場する青島の「未来の記憶」のシーンだ。「普通の回想シーンなら、過去の映像をつないでそれなりに音楽をつければ何とかなるんですが、どうしても“もう1人の青島が外側で見ている”という形がやりたかった。スタッフみんなに相談して、アイデアを出し合いました。いつもこういうシーンは自分のイメージでコンテを切るんですが、イメージを持たないで現場に入るのも手だなと思いました。周囲のみんなが助けてくれるから(笑)」

タイトルバックがなくなった背景

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 『踊る大捜査線』シリーズのオープニングでは、毎回レギュラーキャスト1人ひとりにスポットを当てたタイトルバック(※タイトルやスタッフクレジットが入る部分)が登場するが、今作ではそれがない。「久しぶりに『踊る』が帰ってきたのに、先にキャストクレジットを見せちゃうと、つまらなくなっちゃうかなと思いました。最初の『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』でやった時は面白いと思いましたが、だんだんと、同じことやってもしょうがないと思いはじめて……。今回はアバンにいろいろなキャラクターが登場するので、それが人物紹介代わりということです」

 本広監督は、すでに“次”はどうしようと考えはじめているという。「いろんな映画を観て、これは参考になる、とか考えてます(笑)。本とかも、この構図は面白いなとか。もちろん、僕の一存では何も決められないんですけど(笑)」

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 とはいえ、シリーズを当初からプロデュースしている亀山千広プロデューサーや、『踊る』の大部分の脚本を書いてきた君塚良一ら製作チームは、今『踊る』を続けていくのにちょうどいいタイミングだという。

 「亀山さんは社長業を終えてプロデュース作業に専念できるようになって、今作はほぼ毎日撮影についてくれていました。君塚さんは、バラエティーのコント作家、ドラマや映画の脚本、映画監督とやられてきて、次はどうされるんですか? と聞いたら『本広組の座付き作家になるよ』とおっしゃってくれて。お2人とも僕の恩師。その恩師たちがそういう感じで、作りたいものを作ろうというモチベーションが上がってるんです」。監督自身も、会社員を辞めたところだ。「僕と織田さんは“次”の話を待っている状態です(笑)」

『踊る大捜査線』が“体験を共有する”きっかけに

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 今作には、新キャストたちが驚くほど多くのファンがエキストラとして参加し、差し入れなどでも協力した。「ありがたいですよね。昔は『コアは相手にするな』と言われましたが、僕は、コアな方々がいないと物事が進まないと思っています。ムーブメントを起こすには、そういう方々のお力がないと。だからオフ会みたいなものをたくさんやって、僕も参加していますし、そこに来てくださった方に満足していただけるよう、特別な映像を作ったりもしています」とファンファーストの姿勢を見せた。

 「昔みたいに、あれもこれも自分でやろうというのではなく、『踊る』をやっていきたいからみんな力を貸してくれない? という形でやっていければいいなと思っています」と本広監督は言う。「そのためにはみんなを手伝うし、僕が出来ることはやる。クリエイターの仲間たちに力を貸してもらえるようにご飯会もします! というか、やってます!(笑)」と決意を語った。

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 さらに「映画がコミュニケーションの1つとして機能すればいいなと思うので、今作でもそこはめちゃくちゃ考えました。昔はよく、友達と語り合ってましたからね」と本広監督は明かした。「映画をみんなで観て、一緒に笑えるとか、一緒に泣けるとか、観た後に飲むお酒が美味しいとか。みんなと話したくなる映画を目指しました。『普通あんなことしねーよ』でもいい、見終わって語り合える体験のきっかけに、『踊る』がなるといいなと思います。ある意味、話せるポイントがたくさんあるじゃないですか、『踊る』は(笑)」とアピールしていた。(取材・文:早川あゆみ)

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