『踊る大捜査線』伊藤淳史、台本になかった青島&和久の再会 製作陣に直談判して追加「心の中で叫びました」

織田裕二が主演を務める『踊る大捜査線』シリーズで、レジェンドキャラクター・和久平八郎(いかりや長介)の甥である和久伸次郎を演じる伊藤淳史。14年ぶりの新作映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』(全国公開中)でも、主人公・青島俊作を支える仲間として登場している。続投オファーが届き「本当に嬉しかった」と喜んだという伊藤が、14年ぶりとなるシリーズ復帰の心境、自ら直談判して追加されたというシーンについて語った。(以下、本編の内容を一部含みます)
当時の空気感や世界観が一気に蘇ってきた
和久伸次郎は、2010年公開の映画第3作『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』で初登場したキャラクター。湾岸署のベテラン刑事・和久平八郎(以降、和久さん)の遺志を継ぐ者として、主人公・青島俊作(織田)の新たなバディとして活躍した。今作では、八重洲警察署刑事課長という肩書きで登場する。
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012)から、14年ぶりに再始動した『踊る』シリーズ。社会現象を巻き起こした国民的作品の復活は、オファーが届く前から、業界内でも噂になっていたという。
「これだけのビッグプロジェクトですので、業界内の風の噂として『どうやら新作が製作されるらしい』ということを聞いていました。ただ、自分へのオファーがなかなか来なくて(笑)。『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』で一度区切りがついていますし、新たな『踊る』が始まるけど『声がかからないのは切ないな…』と少し寂しく思っていたんです。そしたら、昨年末ごろに正式に出演オファーをいただいて、もうめちゃくちゃ嬉しかったです」
14年という空白期間を経ての再始動は、伊藤にとってもプレッシャーがあったという。「それだけ長い月日が流れているので、『当時と同じように演じられるだろうか?』という不安やプレッシャーがなかったと言えば嘘になります」
しかし、その不安は衣装合わせの段階で吹き飛んだ。「スタッフのみなさんが、本当に変わらない。『踊る』シリーズを支えてきたオールスターのような方々ばかりで、衣装を身につけた瞬間、当時の空気感や世界観が一気に蘇ってきました。実際に撮影現場に入って、目の前にいる青島さんの姿を見たとき、織田さんが変わらないあのスタイルでいてくださったおかげで、完全に和久伸次郎として入り込むことができました」
青島の中で生き続けている和久さんのレガシー
14年ぶりに帰ってきた青島は、連続ドラマ時代に定年を迎えた和久さんに近い年齢になっている。年齢を重ね、渋さが増した青島の姿を目撃した伊藤は「和久さんと深く繋がっている」と感じたという。
「これだけの年月が経っても、和久さんの遺志がしっかりと青島さんの中に生き続けている。和久さんをずっと間近で見てきた青島さんが、その想いを胸に生きてきたんだなということがひしひしと伝わってきて、胸が熱くなりました。『現場が命』という熱い想いが今作の青島さんからも溢れ出ていて、完成した映画を観た時は、一ファンとして本当に嬉しかったです」
和久も「正しいことをしたければ偉くなれ」という叔父が遺した言葉を胸に、『踊る』の世界観で14年間走り続けてきたはずだ。伊藤は、湾岸署時代から変わらない和久の魅力が、今作にも表れていると語る。
「完全には偉くなりきれていなくて、『支援体制を整えろ!』と言ったら『お前が整えろ』というような目で見られたりして(笑)。でも、少し空回りしてしまうようなチャーミングさこそが、伸次郎の良さなのだと思います」
「昇進して立場が変わっても、キャラクター性が変わらず描かれていたのがすごく嬉しかったです。本広(克行)監督や亀山(千広)プロデューサーとも『立場は離れていても、青島さんとは時々会って近況を報告し合ったりしていたんじゃないか』というお話をさせていただきました。青島さんの変わらない姿を見てきたからこそ、和久伸次郎もその熱い気持ちを忘れずに頑張れているんです」
「青島さんと一緒のシーンを!」自ら懇願して誕生したシーン
そんな和久は、湾岸署時代の懐かしいメンバーが多数登場するアバン(※タイトルが出る前)で青島と再会する。
「あの構成は『ずるい!』ですよね(笑)。『踊る』ファンには堪らない演出です。過去作の細かい小ネタや人物まで散りばめられていて、まさに長年愛してくださったすべてのファンへ向けた壮大なサービスシーンだと感じました。強行犯係のメンバーが、時間を重ね、それぞれの場所で活躍している姿が見られて、いち視聴者として深く感動しました」
伊藤によると、当初の台本では和久の登場シーンは「電話またはリモートでのやり取り」だけだったとのこと。大金を運ぶ青島のもとへ、水を渡しに駆けつけた和久のシーンは、伊藤の発案で追加されたものだった。そこへ制作陣が、電動キックボードに乗りたいという織田発案のアイデアを融合。結果として、八重洲署から和久がキックボードで水を届けに来るものの、肝心の水ではなく電動キックボードを青島に持っていかれてしまうというシーンが完成した。
「台本を何度読んでも、青島さんと同じ空間にいるシーンがなくて…。『これだと撮影で青島さんに一度も会わずに終わってしまう!』と思ったので、衣装合わせの時に本広監督と亀山プロデューサーに『青島さんと一緒のシーンを作ってください! 会いたいです!』と懇願しました(笑)」
「そうしたら『そうか!』と言ってくださって、脚本の君塚(良一)さんにも掛け合っていただき、後から青島さんに水を届けるあのシーンを追加してくださったんです。本当に言ってみるものだなと思いましたし、OKが出たときは『よっしゃ!』と心の中で叫びました」
撮影現場でも、織田が率先して「もっと面白くしよう」と声をかけていたといい、全員でアイデアを出し合いながらシーンを組み立ていった。「ピンポイントでの出演でしたが、みんなで一緒になって一つのものを作り上げているという熱い手応えを実感できる、本当に素晴らしい現場でした」
和久ノートを今度こそ…『踊る』シリーズの“次”に期待
伊藤が和久伸次郎としてシリーズに参加してから16年、叔父・和久平八郎は「偉大すぎる人物」として今も刺激を受けている存在だという。
「再放送などで観返しても、やはり偉大すぎます。歩いている背中の空気感ひとつとっても、僕が到底出せるものではありません。『僕が和久さんの遺志を継いで……』なんて口にするのもおこがましいくらい、僕にとってはあまりにも大きな存在です。いかりやさんご自身もそうですし、作品における和久さんという存在は、登場人物全員に絶大な影響を与え続けている方です。いただいた和久伸次郎という役を、『踊る』の世界観を大切にしながら、精一杯演じることだけに集中して取り組んできました」
また『踊る大捜査線』シリーズへの出演は、伊藤の人生においても特別な機会となった。「3児の父になり、パパ友や周囲の方とお話ししていると『僕は「踊る大捜査線」を観て警察官を目指しました』という方に出会うことがあるんです。人の人生を左右するほどの大きな力や影響力を持った作品なのだと、改めて実感しました。役者としても、誰もが知っているような作品に出会えることは滅多にありません。僕にとって『踊る大捜査線』は胸を張って言える代表作であり、一生の財産です」
「THE ODORU LEGEND STILL CONTINUES」の通り、『踊る大捜査線』は新境地へ向かいはじめたばかり。伊藤も「映画のラストを観たら、誰だって『絶対次回作に続くでしょ!』と思います」と早くも“次の展開”が気になるようで、「もし、次があるのなら、まずは和久伸次郎が湾岸署に異動できることを切に願っています(笑)。また、室井さん(室井慎次)のように、上の立場になりながらも現場の想いを理解し、同じ熱量でサポートできるような存在になれたらいいです。あとは、今回披露できなかった和久ノートを今度こそ開いて、名言を言いたいです」と想像を膨らませていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)



