『ミュンヘン』スティーヴン・スピルバーグ 今週のクローズアップ 2006年2月6日 先日、アカデミー賞に見事ノミネートされた『ミュンヘン』が、2 月4日よりいよいよ公開されます。『カラーパープル』以来、常に社会派映画にも意欲的に関わってきたスピルバーグ。60歳にして、続々と監督作を発表してノリに乗っている彼を今週はババンとクローズアップ! ホロコーストの悲しい歴史をもつユダヤ人として、平和への祈りを込めた作品を作りつづけるスピルバーグ。監督としての彼の生き様に感動です! スピルバーグは1949年にオハイオで生まれました。幼いころから、たくさんの映画を観て育った彼は12歳のときに始めての8ミリ映画を制作。14歳にして、『プライベート・ライアン』のベースとなった40分の戦争映画を監督してしまうほどの映画少年でした。 カリフォルニア州立大学に入学しますが、ユニバーサルの社長に監督としての才能を買われて、大学を中退。そして初TV監督作『夜のギャラリー』の撮影中、熱心な青年監督のスピルバーグに心奪われた大女優がひとり。その人の名前は『グランドホテル』で知られるジョーン・クロフォード。『夜のギャラリー』に主演した彼女は、近くにいた記者にこう語ったそうです。 「あの子のところへ行ってインタビューしてきなさい。彼は、これから一生ハリウッドを引っ張っていく映画監督になるから」それから数年後、彼女の言葉のとおりスピルバーグはテレビ映画『激突』以来次々にヒットを飛ばすヒットメイカーに! ジョーンとの友情も、彼女が亡くなる日まで続いたのでした。 中退しちゃったけど、最近ようやく卒業しました。 ヤッタネ! スピルバーグ監督は、日常の生活についてインタビューでこんな風に語っています。「僕は、夕方5時半に帰って家族みんなで食事をする。それから子供たちをお風呂に入れて、ベッドでおやすみの絵本を読んで寝かせるんだ。朝は必ず学校に送っていくよ。だから普段は、9時半から5時半までしか働かないって自分で決めているんだ」 心から子供たちを大切にするスピルバーグは、子どもたちが大喜びする映画がどんな映画なのかもちゃんと分かってます。そんな彼が作った作品だからこそ、『E.T』も『インディ・ジョーンズ』シリーズも、世界中の子供たちからいつまでも愛され続けているのでしょう。 また若いころに両親が離婚したことが影響してか、彼の映画にはたびたび両親が離婚している子供が登場します。そんな普通よりちょっぴり寂しい子どもたちが、突然夢のような出来事に遭遇するのがスピルバーグ映画のすてきなところ。1人の観客として、観客の目から映画を作るというスピルバーグの目には、いくつになっても子どものころの夢がうつっているのかもしれませんね。 『E..T.』のドリューとは、今でも親子のように仲良し! 『ジョーズ』、『E.T.』、『インディジョーンズ』シリーズとエンターテイメント性を重視した映画が人々に愛されていたスピルバーグでしたが、1985年に突如『カラーパープル』という黒人差別をテーマにした社会派映画を監督。もともと大衆映画を毛嫌い=大衆向けのスピルバーグ映画は大嫌い! だった批評家たちから散々けなされてしまいます。ところが、映画を見た黒人たちはスピルバーグを支持し、受賞のなかったアカデミー協会に対して抗議するという事態にまで発展する騒ぎになったのでした。 その後もスピルバーグはエンターテインメント映画を作りながら『シンドラーのリスト』、黒人奴隷船の悲劇を描いた『アミスタッド』など、歴史の陰に隠れた悲劇に焦点を当てた社会派作品にも挑戦しつづけます。 スピルバーグいわく、これらの作品は「楽しんで撮っている普段の作品とは違って、撮らなければいけない映画」だそう。 ユダヤの血をひいた彼が「人々にホロコーストの真実をもう一度理解してもらうために」作ったという『シンドラーのリスト』も、まさに「撮らなければいけない映画」だったんですね! やるときゃやりまっせ…… ヒット作≠不朽の名作という皮肉な公式が出来上がっているアカデミー賞。 どんなに大ヒットを飛ばしても批評家たちに認められないスピルバーグはついに超歴史大作に挑みます。ユダヤ人の迫害を描いたモノクロ、約3時間の重厚な『シンドラーのリスト』は、興行的にもまったく振るわず大失敗に終わりますが、なんとなんとそんな大失敗の本作で“アカデミー賞に見放された男”スピルバーグが、ついに受賞したのです! それも受賞したってもんじゃない。『シンドラーのリスト』で獲得したアカデミー賞の数は7部門。さらに驚くのは、同じ年に発表してこちらはメガヒットだった『ジュラシック・パーク』も3部門を受賞。まさに1993年度のアカデミー賞はスピルバーグのために行われたような「スピルバーグ祭り」となったのでした。 まさに10年の時を経て、ついに勝ち取った栄光に会場はスタンディング・オベーションの嵐!!! スピルバーグにとって1993年はまさに超ハッピーな年だったのでした。 やったね! ルンッ! そして2006年、スピルバーグが新たな歴史の陰に光を当てました。1972年のミュンヘンオリンピックでイスラエル選手団のアスリート11人が殺され、首謀者であるパレスチナゲリラへの報復を命じられるイスラエルの暗殺者。 実際に起こった事件をもとに報復するものの苦悩、報復という行為の哀しさ、人間としてさまざまなことをもう一度考えさせられる映画『ミュンヘン』はパレスチナ、イスラエルといった問題を取り扱ったことで公開当初さまざまな議論を呼びました。 しかし! 1月31日に発表されたアカデミー賞候補で、スピルバーグはこの『ミュンヘン』で見事に作品賞、監督賞にノミネートが決定しました! 「スタジオのためではなく、自分のために撮った」という本作。作品に込められたスピルバーグの平和への願いが、たくさんの人に届きますように! ジョージくん……、 キミ監督のくせにかっこよすぎだよお…… 文・構成:FLiXムービーサイト編集部 [PR]