第34回 池脇千鶴にぺ・ドゥナ、INFINITEまで!アジア・フィルム・アワードの舞台裏(中国)
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第34回 池脇千鶴にぺ・ドゥナ、INFINITEまで!アジア・フィルム・アワードの舞台裏 (中国)
2007年に香港国際映画祭30周年と香港返還10年を記念してスタートした、アジア版アカデミー賞ことアジア・フィルム・アワード。2014年には香港国際映画祭、東京国際映画祭、釜山国際映画祭という三つの映画祭が設立したアジア・フィルム・アワード・アカデミーが主催しています。3月25日にマカオで開催された第9回アジア・フィルム・アワードの授賞式に参加した、塚本晋也監督『野火』の俳優・森優作がレポートします。(取材・文:中山治美 写真:森優作)
各国の目利きが選出
三つの映画祭が連動し、その年の優秀な映画人を表彰する同イベント。例年、香港国際映画祭開催期間中に行われている。過去の最優秀作品賞は『グエムル -漢江の怪物-』『シークレット・サンシャイン』『トウキョウソナタ』『母なる証明』『ブンミおじさんの森』『別離』(2011)『二重生活』(2012)『グランド・マスター』といずれも、アジアだけでなくその年の世界を代表する力作ぞろいだ。
選出者は、各国を代表する映画の目利きたち。今年は東京国際映画祭プログラミングディレクターの矢田部吉彦氏や、キネマ旬報社の岡崎優子さんらのノミネーション委員会が、アジア34か国・地域の対象作1,000本以上の中から約100本を選出。そこからさらに東京フィルメックスのプログラム・ディレクター市山尚三氏や日活取締役の杉原晃史氏らノミネーション・アドバイザーが意見を交換し、昨年ノミネートされた是枝裕和監督や第7回で最優秀助演女優賞を受賞した女優の渡辺真起子らが投票を行った上で、14カテゴリーの、42作品74のノミネートが出そろった。「ただセレモニー会場のベネチアンシアターはマカオの中でも新興地区。祭りを行っているような街の盛り上がりは、残念ながら感じられませんでした」(森)。
ザ・芸能界を見る
森は、新作『野火』で最優秀監督賞にノミネートされた塚本晋也監督が海外の仕事で参加できなかったため、代理で出席した。旅程は3月24日~26日の2泊3日で航空費&宿泊費は招待。香港からフェリーでマカオに移動してすぐにカクテルパーティーにディナー、25日はセレモニーと祝宴が続く。森は昨年、『野火』でベネチア国際映画祭参加用に両親が作ってくれたタキシードで現地に乗り込んだ。森を待っていたのは、これまで参加した映画祭でも体験したことがないような華やかな世界。「『野火』をアピールするつもりでポストカードを持って乗り込みましたが、自分が今まで生きてきた世界とは全く別の世界に放り込まれた気分になりました(苦笑)」。
一方で、芸能界の厳しい側面も垣間見たという。「前日のディナーでもセレモニーでも、最も黄色い歓声を浴びていたのはパフォーマンスをするK-POPグループINFINITE。でも『私の少女』(5月1日公開)で最優秀主演女優賞にノミネートされていたぺ・ドゥナさんが彼らのテーブル近くを通ると、そのたびに席を立ってあいさつをしていた。来日する韓流スターの流ちょうな日本語に驚かされますが、教育がしっかりされているのだなと思いました」(森)。
スター大集合で遅延
25日のセレモニーには日本から『紙の月』で最優秀主演女優賞にノミネートされていた宮沢りえ、『るろうに剣心 伝説の最期編』で最優秀主演男優賞ノミネートの佐藤健などが現地入り。『そこのみにて光輝く』で最優秀助演女優賞を受賞した池脇千鶴を見掛けたという森は、「空港をさっそうと一人で歩いていたところをお見掛けし、カッコイイなと思いました」と振り返る。
セレモニーは当初予定の20時から、約30分以上遅れてスタート。各最優秀賞を選ぶのは、メイベル・チャン監督を審査委員長とした14人の審査員たちだ。塚本監督は残念ながら受賞を逃し、『黄金時代』のアン・ホイ監督が最優秀監督賞を受賞した。「でも塚本監督は自分で道を切り開き、国籍とか人種など関係なく、世界中の人にその才能を認められているのだということを改めて実感し、単純にスゴいなと思いました」。
発表の合間には INFINITEのショーなどもあり、たっぷり3時間にわたって行われ、その模様は現地のテレビ局などで生放送された。終了は夜中。その後森は、『喰女-クイメ-』で最優秀衣装デザイン賞にノミネートされていた柘植伊佐夫氏、同じく『サンブンノイチ』で最優秀編集賞にノミネートされた須永弘志氏と連れ立って地元の火鍋店へ。「このとき食べた料理が、マカオ滞在中一番、ホッとしながら味わえました(苦笑)」(森)。
マカオは旧ポルトガル領
マカオの正式名称は、中華人民共和国マカオ特別行政区。日本からは成田空港と関西空港からマカオ航空の直行便も飛んでいるが、香港からフェリーで入るのが一般的だ。今回は往復共に、現地スタッフが香港国際空港―マカオをアテンドしてくれたという。「他のゲストとも一緒の移動だったので、香港のアン・ホイ監督と一緒に記念撮影もできました」(森)。
滞在中の空き時間はマカオ観光へ。向かうのは世界遺産であり、ジョニー・トー監督『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(2009年)のロケ地としても知られるマカオ歴史市街地区だ。ただし森が滞在するコタイ地区から離れているために、タクシー移動を余儀なくされた。「コタイ地区は新興街。部屋から見える景色はディズニーランドのよう。地区にあるベネチアを模したショッピングモールにも行きました」。森は昨年、ベネチア国際映画祭で現地を訪れているが「本物のベネチアと違って、ショッピングモールの方は汚くないし、臭くない(苦笑)」(森)。皮肉なものです。
世界への門戸を開く場
新人である森が、映画の祭典に参加するのはベネチア国際映画祭、東京フィルメックス、大阪アジアン映画祭に続き4回目。「そのたびに、自分が作品とどう関わり、何を考えながら臨んでいたのかを思い出すいい機会になります」。何より、もともと通訳を目指していた森にとっては、海外の人とコミュニケーションを取る絶好の機会で、楽しくて仕方ないという。「今、自分がやっていることで世界へ出たいという気持ちが、より一層強くなりました」(森)。代理ではなく、ノミネート者としてここに戻って来る日は近い!?
写真:森優作
取材・文:中山治美