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ゴーストライター騒動と佐村河内守、森達也が見た報道の闇(4/4)

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ドキュメンタリーを撮るには人を傷つける覚悟が必要

A2
オウム真理教の信者に密着した映画『A2』(C)「A」製作委員会

Q:最後に、長編映画の新作を作るのに15年もインターバルが空いた理由を教えていただけますか?

そもそも情報や表現には加害性があるけれど、現実を素材にしますから、ドキュメンタリーの加害性は特に強いです。人を傷つける。被写体はもちろん、場合によっては観る人も傷つける。だから撮りながら、いつも後ろめたい。だって自分の表現のために多くの人を犠牲にしているわけですから。A』や『A2』でも、メディアの人、警察官、一般市民、オウム真理教の信者も含めて、僕はたくさんの人を傷つけたと思います。撮っている途中は鬼畜になりますけど、撮り終えたらそのことがつらくて、本当に消耗するんです。

Q:『A2』から回復するのに15年かかったということでしょうか?

……たとえていえば、失ったHP(RPGなどのゲームで、プレイヤーの体力や生命力を表す数値のこと)が少しずつ溜まってきた、そのタイミングで佐村河内さんに会ったということかな。あと強いて言えば、今の日本社会の歪みの一番の起点は、1995年の地下鉄サリン事件だと思っています。これを言葉にすれば集団化。その帰結としてセキュリティー意識が過剰になる。その状況がその後も加速して、さらに2001年のアメリカ同時多発テロ以降は、テロをキーワードにしながら世界中で集団化が進行している。その帰結として二元化が起きる。特に日本においては去年から今年にかけて、安全保障法制の強行採決であったり「武器輸出三原則」に代わって「防衛装備移転三原則」が閣議決定されたことであったり、改憲や核武装を主張する人がとても増えたりしたことなど、ずいぶん遠くに来ちゃったなあという思いがあります。

Q:ドキュメンタリーは人を傷つけるとおっしゃいましたが、作品が完成したときに「あの場面はカットしてほしい」と言われることもありませんか?

もちろんケースバイケースだけど、基本的には作品を優先します。ただしドキュメンタリーの場合は加害性が強いからこそ、最低限のルールを自分の中で作っています。撮るなと言われれば撮りませんし、撮った直後に「使うな」と言われても使いません。盗み撮りも隠し撮りもしない。でも編集を終えてからカットしろなどと言われても、基本的には応じません。応じていては編集が成り立たない。ただし、一般の人が撮影や編集をわかっていないのは当然のことで、ある意味、僕はそこに付け込んでいるし、明らかにモラルを踏み外していると思っています。だからやっぱり鬼畜なんです。まともな死に方はしないかもと本気で思います。ドキュメンタリーは、その覚悟がなければ撮らない方がいいでしょうね。

 「すごいドキュメンタリーを撮る人は鬼畜が多い」とドキュメンタリー界の先輩・原一男田原総一朗などの名前を挙げる森監督。「怒られるかな。でもきっと大丈夫。後ろめたさを抱えながら、それでも表現を続ける人たちです」。次の作品までまた相当待たなければいけないのか? との問いには、次はホラー映画を撮ってみたいとのこと。満を持しての新作『FAKE』は、フィクションとリアルの垣根を超えて大いに論争を巻き起こすことになるだろう。

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『FAKE』オフィシャルサイトはコチラ>

映画『FAKE』は6月4日より全国順次公開

(C) 2016「Fake」製作委員会

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