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第89回アカデミー賞作品賞候補の9作品スゴイのはココ!<前編>

 現地時間1月24日、第89回アカデミー賞のノミネーションが発表されました。デイミアン・チャゼル監督のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が、『タイタニック』(1997)と『イヴの総て』(1950)に並んで歴代最多タイとなる14ノミネートを記録したことが話題になりましたが、これ以外にもノミネート作は映画ファン必見の良作ぞろい! 昨年より1作多い全9作の作品賞候補のそれぞれどこがスゴイのか、先取りでご紹介します。(編集部・市川遥)

楽しくて切なくて、新しくて懐かしい!ミュージカルの新たな傑作『ラ・ラ・ランド』

 夢を追いかけたことのある誰もが共感し、あの頃の高揚感と苦しさを思い出さずにはいられない本作。『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』『ウエスト・サイド物語』『雨に唄えば』をはじめとしたミュージカル映画、そして夢追い人が集う街ロサンゼルスにオマージュを捧げつつ、とびきりロマンチックで楽しいのに切なく、モダンなのにどこかクラシックな夢のような作品が誕生しました。

『ラ・ラ・ランド』
(c) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

スゴイのはココ!
エマとライアンはまさに運命の恋人!→オーディションに落ちてばかりの売れない女優ミアにふんしたエマ・ストーン、本格的なジャズを演奏したいと願いながらもレストランのバイトのピアニストに甘んじているセバスチャンを演じたライアン・ゴズリングは、これが3度目の共演とあってコミカルな掛け合いは息もぴったり。自分を顧みず互いの夢を応援しようとするひたむきな姿が魅力的で、二人が“運命の恋人”だということがひしひしと伝わってきます。それだけに最悪な出会いから始まる二人の世界が鮮やかに色づき、そして色あせていくさまを見つけるエマの眼差しが切なすぎる! そしてライアンは、優しいいい男をコミカルに演じさせたら最強すぎる!

監督も夢を貫いた!近年珍しいオリジナルミュージカル→ヒットが望めないという理由から、オリジナルミュージカル映画が制作されるのは近年本当に稀。デイミアン・チャゼル監督は長年心に思い描いてきた本作を撮るために『セッション』を撮ったと公言しており、自ら築いた地位でスタジオの意向が入らない、本当にやりたかったことを成し遂げてしまいました。夢をひたむきに追いかけた監督の姿は、二人の主人公の姿にも重なります。また、音楽を担当したのは学生時代からの友人である作曲家のジャスティン・ハーウィッツで、二人は脚本執筆と作曲を一緒に行っただけにストーリーと音楽が完璧にリンク! 音楽部門を総なめにしたのも納得です。

『セッション』をも凌駕する圧巻のラストシークエンス!→そして中でも圧巻なのが、『セッション』のラストを凌駕したと言っても過言ではない映画ならではのセットとカット割りで見せていくラストシークエンス! ある曲を聴くと忘れていた記憶が鮮やかによみがえるという経験を誰もが一度はしたことがあると思いますが、このラストはそんな音楽の特性を最大限効果的に用いており、これぞまさに映画体験! 映画館の大画面&大音量で堪能したい一作です。

『ラ・ラ・ランド』監督・脚本:デイミアン・チャゼル 出演:エマ・ストーン、ライアン・ゴズリング 配給・提供:ギャガ / ポニーキャニオン 上映時間:2時間8分 日本公開:2月24日 第89回アカデミー賞最多13部門14ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、歌曲賞二つ、音響編集賞、録音賞

映画みたいな実話&主人公の心を完璧に視覚化!『LION/ライオン ~25年目のただいま~』

 インドで5歳のときに迷子になり、孤児としてオーストラリア人夫婦のもとに引き取られた少年が、25年後、Google Earth の衛星写真で実の家族を捜し出すさまをつづった感動作。血のつながったインドの家族と育ての親であるオーストラリアの家族、二つの家族の間で揺れ、わずかな記憶を頼りにインドに思いをはせる主人公の心を空撮映像を交えて完璧に視覚化しています。

『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
(C) 2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

スゴイのはココ!
うそみたいだけど実話なんです!→うそみたいな話ですが、これはサルー・ブライアリーさんというインド生まれの男性が経験した正真正銘の実話。説明的なセリフを排し、少年時代のインドパートから青年時代のオーストラリアパートへ巧みに移行する脚本によって、小さなインド人少年の数奇な人生を一緒にたどっているかのような感覚に! 『ゼロ・ダーク・サーティ』の撮影監督グリーグ・フレイザーの手掛けた広大な風景の数々が、Google Earth の衛星写真を使って心を故郷へ飛ばす主人公の姿を見事に表現しています。

フレッシュでかわいすぎる新人子役→第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式で青年になったサルー役のデヴ・パテル(『スラムドッグ$ミリオネア』)と共にプレゼンターを務め、あまりのかわいさに出席者が皆ため息を漏らしたのが幼少期のサルーを演じたサニー・パワールくん。インドで何千人もの中から発掘されたサニーくんはその愛らしさが尋常じゃないだけでなく、迷子になっていきなり一人きりで残酷な世界に放り出された少年の恐れと心細さ、それでもたくましく生きていくさまを表情だけで演じた逸材です。

貫禄のニコール・キッドマン→そしてサルーを養子にしたオーストラリアの母にふんし、輝きを放っているのがニコール・キッドマン。初めてサルーと対面するときに見せた「新しい家族を気に入ってもらえるだろうか」と不安げな儚い表情から、子供たちにたゆまぬ愛情を注ぐ強い母の姿まで網羅! 青年版サルー役のデヴとの共演シーンで、これまで口にしなかった胸の内を明かすシーンは涙を誘います。

『LION/ライオン ~25年目のただいま~』監督:ガース・デイヴィス 脚本:ルーク・デイヴィス 出演:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン 配給:ギャガ 上映時間:1時間59分 日本公開:4月7日 第89回アカデミー賞6部門ノミネート:作品賞、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞

『6才のボクが、大人になるまで。』的な感動!ゲイの黒人少年の成長を追った『ムーンライト』

 過酷な環境で生まれ育ったゲイの黒人少年の成長を三つの時代にわけて描き、『6才のボクが、大人になるまで。』的な感動をもたらす本作。ゲイで黒人という居場所を見つけられないマイノリティーな少年を主人公にしながら、誰もが共感せずにはいられない普遍的な成長物語に昇華させています。

『ムーンライト』
(C) 2016 A24 Distribution, LLC

スゴイのはココ!
三人一役の主人公がそっくり→薬物依存症の母に怯える小さな少年時代、ゲイであることを意識したティーン時代、そしてドラッグディーラーとなった青年時代と三つの時代を演じたのは、年齢の異なる3人の俳優。ささいなしぐさや時折見せる儚げな眼差しから、本当に同一人物の成長過程に見えてしまうのがスゴイ!

助演陣が抜群にパワフル!→主人公の少年時代に、薬物依存症の母親に代わって何かと彼を気に掛けるドラッグディーラーにふんしたのがマハーシャラ・アリ。男らしさを体現したかのような彼が密かに抱える優しさや、ふとした瞬間に見せる繊細な表情に目を奪われます。また、『007 スペクター』のマネーペニー役で知られるナオミ・ハリスが洗練された美しさをかなぐり捨て、主人公を怯えさせる薬物依存症の母親を熱演しているのにもびっくり!

きらめくカメラワーク&色使い→学校ではクラスメートにいじめられ、母親からはののしられ、麻薬や暴力と隣り合わせの過酷な環境で生きるしかなかった主人公ですが、流れるようなカメラワークが映し出すのは色鮮やかな世界。月光が差し、夜の浜辺が一面青の世界となるシーンなど、主人公の大切な思い出が美しいビジュアルと相まって胸に迫ります。

『ムーンライト』監督・脚本: バリー・ジェンキンズ 出演:マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス 配給:ファントム・フィルム 上映時間:1時間51分 日本公開:2017年春 第89回アカデミー賞8部門ノミネート:作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、作曲賞

挑発的なセリフの数々と兄弟&子弟愛が深い!『最後の追跡』

 銀行強盗を繰り返す兄弟、そして彼らを追う定年間近のテキサスレンジャー&先住民の血を引く相棒の追跡劇を、テキサスの広大な土地を捉えるワイドショットを駆使して描いたクライムドラマ。アメリカの社会問題にもテキサスの空気のごとく乾いた視線で切り込み、挑発的なジョークに思わずニヤリ。

『最後の追跡』

スゴイのはココ!
ベン・フォスター&クリス・パインの尊い兄弟愛→家族の農場を差し押さえから守るために銀行強盗を繰り返す兄弟にふんしたのは、ベン・フォスター&クリス・パイン。銀行強盗が趣味で刑務所に入ってばかりの兄(ベン)と乱暴者の兄に手を焼く優しい弟(クリス)という正反対の二人なのに、互いに何よりも必要とし合う兄弟愛の美しさといったら! わざと汚い言葉でののしり合ったかと思えばじゃれ合ったりと、二人の兄弟ぶりがとんでもなくリアル。

絶えず繰り出される人種ジョーク→そんな兄弟と対をなすのが、彼らを追う定年間近のテキサスレンジャー&先住民の血を引く相棒のコンビ。ジェフ・ブリッジス演じるレンジャーは人種に絡めた際どいジョークで相棒をいじりますが、それが癪に障らないのは、ちょっとした目配せから彼ら二人が確固とした絆で結ばれていることがうかがえるから。助演男優賞ノミネートも納得のジェフのシーンでは、本作が脚本賞にノミネートされた理由も明らかです。

ワイドショットを駆使した銃撃戦の緊迫感がヤバい!→ワイドショットを駆使して描くラストの銃撃戦は並々ならぬ緊迫感! 観客としては兄弟サイドもレンジャーサイドも全てが見えているだけに、いつ引き金が引かれるのか、流れるような編集だからこそ近年稀に見る緊張感が生まれました。

『最後の追跡』監督:デヴィッド・マッケンジー 脚本: テイラー・シェリダン 出演:クリス・パイン、ベン・フォスター、ジェフ・ブリッジス Netflixで独占配信中 上映時間:1時間42分 第89回アカデミー賞4部門ノミネート:作品賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞

第89回アカデミー賞作品賞候補の9作品スゴイのはココ!<後編>

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