映画の余韻に浸りながら世田谷線でコトコト帰路へ…下高井戸の粋な名画座とは ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

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 世田谷線に乗って、三軒茶屋から終点の下高井戸へ。新宿や渋谷のせわしなさとは違い、住宅の中をゆっくり走り、空き地や畑などが見られ、のんびりした空気が流れています。ここ下高井戸には知る人ぞ知る下高井戸シネマが健在! 交通の便の良さに、商店街、銭湯、閑静な住宅と全てが揃う、三茶に負けない最高の町ではないでしょうか?

■今月の名画座「下高井戸シネマ」

下高井戸シネマ

 実は下高井戸シネマは、僕が「にんにく大使」として2009年「地球と食の映画祭」で対談した思い出深い場所。当時、上映されていたのは『南極料理人』『いのちの食べかた』でした。

 階段を登ると、昔ながらの窓口の券売所。ガラス張りのロビーはとっても明るく、すでに次回開場を待つたくさんの人の姿が。正面の壁にはポスターやチラシがズラリと貼ってあって、これらは全て上映予定作品。1日に5本から6本の作品を入れ代わり上映するから、その数は膨大。半年先もの上映予定を告知していて、これを見てお得な会員になる方も多いとか。

 入場すると場内は8割以上が埋まっていく。画面は大きく名画座としては広く、座席は前との間隔が十分でゆったり。こんなに盛況なのは「下高井戸シネマ・友の会」のお客様が多いから。発足後、この2~3年の間に飛躍的に増え、現在は約6,000人もいるそうです。

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■下高井戸シネマのオシャレポイント:ユニークな売店

 売店には、過去上映作品のパンフレット(セールで100~300円!)や、映画の専門的な書籍も販売。またウィンドウ内にオーナーの趣味のアンティークなカメラやレンズが陳列・販売されています。10年くらい前のカメラブームの時、いわゆるハーフカメラが女性によく売れたそうです。

■下高井戸シネマのここがツボ!:映画の余韻に浸れるステキな町並み

下高井戸シネマ
『アニー・ホール』より ウディ・アレン、ダイアン・キートン

 下高井戸駅から3分。1Fは美容院と歯科医で、注意していないと見逃してしまいそうなビルの2Fにある。駅から映画館までの何でもない道がいい。メインの北口レンガ通りや日大通り商店街にあったら、趣は違っていたはず。鑑賞し終わった後、この何でもない道を歩いて、頭の中で印象に残ったシーンを思い出して、余韻に浸れる。鑑賞するにはプラスな立地だと思うんです。

 オーナーの長崎さんは、某配給会社から独立し、会社を立ち上げた方。「裏方が表に出るのは好きじゃないので写真はいつもお断りしています」とお姿の撮影は叶いませんでしたが、インタビューに応えてくれました。

■オーナー長崎さんに突撃!

「お客様のニーズにあった作品に恵まれました」

ラジカル:経営をされてから、近年の流れや変化がありましたら教えてください。

長崎さん:デジタルになって上映できる本数が極端に増えました。でも全てが良い作品とは限らないので選別は以前よりも大変です。良い作品は良い結果をちゃんと残すのでしっかり選びたいです。お陰さまで、昨年末から現在(取材時2月末)まで、稼働率の高い作品が続いています。

ラジカル:メジャーのみでなく、映画マニアにも向けたプログラムも組まれていますが、チョイスで気を使われている点はありますか?

長崎さん:選定は、客観が全てです。たくさんの感性が存在するわけですからメジャー、マイナーに関わらず、主観は一切排除して、幅広く作品を選んでいます。あらゆる情報を吟味しますね。興行的には何といっても、一番お客さんの多い午後2時台の回が勝負です。もちろんメリハリをつけて、1日の組み合わせを大事にしています。

「名画には、総合芸術としての完成度がある」

下高井戸シネマ
映画『手紙は憶えている』より

ラジカル:もともと、どんな映画がお好きですか?

長崎さん:アメリカン・ニューシネマや、ヌーヴェルバーグ、その頃のものは全部好きですね。興行を考えなければ、その辺りのクラシックを揃えて上映したいです。

ラジカル:僕もこちらではその辺りの作品が上映される時に来た記憶が多いです。ロバート・アルトマン監督の『M★A★S★H』『ボウイ&キーチ』『ナッシュビル』『三人の女』とか。あとウディ・アレンの大ファンなのですが、彼の監督作品はヒットした・しないに関わらずほとんどを上映されていますね。今日観た『手紙は憶えている』は、とても衝撃を受けました。クリストファー・プラマーが90才でまだ主演しているのもすごいし、ラストのどんでん返しには、してやられました。昨今の映画に、思うことはありますか?

長崎さん:個人的な感想ですが、最近は結末がハッキリしなくて、お客さんに委ねる作品が多いような気がします。「それってどうなの?」と。ひと昔前は、ハッピーエンドだったり、悲劇だったり、結末ですっきりカタルシスを得られるものが主流でした。まあ、感性も時代と共に変わるものですから、良い悪いは何とも言えませんが。

ラジカル:名画はどんな部分が平凡な作品と違うのでしょう?

長崎さん:自分も若い時は8mmや16mmで撮影や編集などしていたので、やはり総合的な映画芸術、撮影、映像の素晴らしさ、演出、監督の手腕、役者の演技、それに音楽と、映画の基本がしっかりしていることが大事だと思います。家でお酒を飲みながらDVDを観ていて、これは素晴らしい映像だなと思った時は、音を消して自分でBGMを選んで流してみて、「これはしっくりくるな」なんてことをしています。自分の映画への原点は、そういうところなんです(笑)。たとえば『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』は素晴らしかったです。

「とにかく一度足を運んで欲しい」

下高井戸シネマ
映画『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』より

ラジカル:これからの名画座の果たす役割は何でしょうか? また若い映画ファンにメッセージはありますか?

長崎さん:うちは名画座っていう認識がないんですよね。「二番館」だと思っていますが、いろいろと上映するので、たまにロードショー館だと勘違いされている方もいて(笑)。名画座の定義も難しいです。強いて言えば、多種多様な作品を鮮度の高いうちにお届けするのが、役割でしょうか。小さなメディアが普及していますけど、それを映画館で観たら3倍も4倍も素晴らしいのにもったいないなと思います。なかなか若い世代に足を運んでもらえませんが、一度体験してもらえたら実感できると思うんです。

下高井戸シネマ
世田谷線

 帰途、灯りが少ない道にイイ感じの赤ちょうちん。煙にフラフラと誘われ、思わずビールと焼き鳥。さっきの映画とオーナーのお話を思い返しながらの一杯はちょいとオツ。どんな場所にあるかも名画座の魅力だな、と思いながら世田谷線にホロ酔いでゆられて帰宅。このコース、ホントに大好きなんです。

■映画館情報

下高井戸シネマ

〒156-0043 東京都世田谷区松原3-37-26
TEL 03-3328-1008 126席

公式サイト

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ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記バックナンバー

追悼-プリンスと4本の映画 vol.1 大ヒット作~カルト作品編

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ウディ・アレンのワイルドな挑戦と失敗 Vol.1

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