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街中に浮遊する、圧倒的な個性! - ラピュタ阿佐ヶ谷 ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

 中央線沿線は、間違いなく僕は水が合ってる。住んだことはないが、馴染みの店、友人もいて時々遊びに行く。特に阿佐ヶ谷は深~~い味わいのある街。だから昔から漫画家さんや作家さん、“クリエイタア”が多く住む。僕のイベントを時々やる書店&カフェの「よるのひるね」、安くて満足度の高いスナキャバ(スナック・キャバレー)の名店「AMIAMI」、そのまたすぐ近くに象徴のような「ラピュタ阿佐ヶ谷」が!

■今月の名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」

ラピュタ

 JRの駅から、昭和の空気がそのまま残るスターロード商店街を抜け住宅街へ。忽然と姿を表す、緑に囲まれた天空の城……始めて訪れたとき、これが映画館!? と驚いた。“ラピュタ”のネーミングは宮崎駿作品からというより、「ガリバー旅行記」に登場する飛ぶ島から。

 1階は窓から豊富な緑や、金魚のいる池が見えるロビー。こじんまりしてるけど、落ち着いた雰囲気。映画を観終った後でセルフの200円のコーヒーを飲んで歓談ができたり、サロンの機能も果たしてる。マルベル堂の往年のスターのブロマイド、上映作品関連の書籍がお洒落にディスプレイされ販売。建物の全体像の模型があって、一般には入れない最上階の様子も判る。

 外の階段、もしくはエレベーターで2階に上がると、アットホームな雰囲気の劇場が。地下の「ザムザ阿佐谷」は芝居小屋で、こちらも知人の関わるお芝居で何度か来た。3・4階は本格的なフランス料理レストランの“山猫軒”、宮沢賢治の「注文の多い料理店」に登場するのと同名。芝居の後に食事とか、食事の後に映画など、自由に使える複合施設だ

 アニメ専門の劇場として開館したのが1998年。その後、都内の邦画専門の名画座の閉館が相次ぎ、このまま邦画の旧作をかける劇場がなくなってはいけない! とオーナーの才谷遼氏が方向性をシフト。さらに2015年、裏手に「ユジク阿佐ヶ谷」という別の映画館もオープン。こちらは準新作やアニメーション、邦画洋画問わず、ラピュタでかからないものがかかる。

■黄金期の邦画専門館として定着

ラピュタ
『赤い天使』 若尾文子 川津裕介 監督:増村保造 1966年

岡本喜八神代辰巳藤田敏八山下耕作深作欣二、各監督の特集上映で足を運んだが、作品がマニアックというか、専門的で、リアル世代の年齢層はかなり高い。それらを敢えて若者にも届け、ポップカルチャーとしての邦画を再発見しよう! という想いと志を感じる。他館と同じようなものを上映してもしょうがないので、だんだんとこのような路線になってきたが、あまりマニアックなものばかりだとお客さんも来なくなってしまうので、バランスを大切にしているのだそうだ。

 芦川いづみ越路吹雪など女優にスポットを当てたモーニングショー「昭和の銀幕に輝くヒロイン」や、B級映画やカルトな作品が中心のレイトショー「渥美マリ伝説」「残酷!妖艶!大江戸エロス絵巻」といった作品は、既に廃盤となり、DVD発売もテレビ放送もされないものが多く、必見! 朝から晩まで、1日に6本もの作品がかかるが、この5~6年でお客の入らなかった作品はほとんどないというから素晴らしい!

■支配人・石井紫さんに訊く

 まだ30代とお若いが、作品の選定から特集の企画や命名、チラシの宣伝文まで、基本一人でこなす。「アイデアを思い付いたときに書き留めるネタ帳みたいなものがあって、常にいくつかの企画が平行していて、その案を出すタイミングが来たかな、と思ったら実行します」。お客様の反応を見て、長年の経験で養ってきた勘で、そろそろこの人、このテーマで、特集可能なムードが出来つつあるな、と感じるのだという。

 最初は、母体の出版社ふゅーじょんぷろだくとの配給担当で入社。ラピュタには2003年、方向性シフトの直前に配属され、丁度良いタイミングだった。「以前は、どっちかというと洋画のほうが好きでした。その頃はまだ邦画黄金期のスタッフさんが多数ご存命で、ゲストでお越し頂いた際、直接お話を聴き、とっても面白く、楽しくてしょうがなくて、気がつけばズブズブとすっかりこの世界にハマっていました(笑)」。邦画のみでゆく、というのは石井さんの希望だったという。

■往年のスターも来館

ラピュタ
マルベル堂の往年の男優・女優のブロマイドも販売

 印象に残っている企画を挙げていただくと、まず昨年末から今年2月にかけての「ピカレスク スクリーンで味わう“悪”の愉しみ」。犯罪もの特集は、特にたくさんの集客があり、自らも楽しんだという。「悪の世界を堪能しましたね。個人的にスーパーヒーローよりも、アンチヒーロー、ダークヒーローのほうに惹かれます(笑)」このときは、緑魔子さんを迎えトークショウを開催した。

 昨年の「稀代のエンターテイナー!フランキー太陽傳」(フランキー堺の特集)では、バイトのスタッフたちと一緒に、ロビーのディスプレイに凝ったり、作品もどれも素晴らしく、お客さんにも満足していただいた。同じく昨年の「東京映画地図 2回目」は、キネマ旬報から本が出る出版記念の企画として、こちらも大好評。

 普通に男優さん、女優さんが観に来ていたりする。「江原達怡さん、宝田明さんらもいらっしゃいました。こちらが気づいた場合は大体、ずうずうしく声をかけて、お客様の前でご紹介します」俳優や監督ならまだ判るが、スタッフだと気が付かないことのほうが多く、逆に声をかけていただくと有り難い。「そんなとき貴重なお話が聞けて本当に嬉しいですね」とどこまでも貪欲な石井さん。

■かけたいフィルムは、自らプリント!

 上映は100%フィルムを使用している。企画を立ててもフィルムがあるかどうか判らなかったり、無い場合が多いのが頭痛のタネ。映写機のメンテナンスの問題もあるが、「デジタル上映に関しては、設備を入れるのにお金がかかるのと、一度それをやってしまうと、ラピュタの存在自体が変わってしまいかねないので、怖くて手を出せないです」と石井さん。

 上映したい作品はプリント代を持ってまでフィルムを用意する、ここまでやっている名画座は他にないのでは?  そのプリントはあくまで映画会社のもので、ラピュタは費用を負担するだけなのだが、「ウチは宣伝とか、他になるべくお金をかけない代わりに、コンテンツにはお金をかけたい。お客さんが入れば収支はトントンにはなります。結果、劇場の実績にもなるので、ここまでやっています」。

 東映の『警視庁物語』シリーズは、リクエストが多かったので、着々とプリントを揃え、来年の開館20周年記念企画の一つにすべく準備中!

■愛する街、そして若い人たちへ

 この地について訊くと、「オーナーも長年阿佐ヶ谷に住んでいますが、私もこの近くで15年になります。中央線の駅は、それぞれカラーがありますよね。高円寺は若者の街。阿佐ヶ谷はどちらかというと大人、落ち着いていて、うるさくなくて、暮らしやすい。ただ最近は変化が激しく、大きなビルが建って個人商店が減ってしまい、どの町とも同じようになってきて個性が無くなりつつあるのが、何ともつまらないです」いやまったく! スターロード商店街、そしてラピュタは変わらない欲しいです。

 「若い子には昭和20~40年代の邦画なんて接点もないし良く判らないのが当然です。私自身もきっかけがなかったら興味を持てなかった。でも、飛び込んだら、こんなに面白いんだ、もっと早く知っていれば良かった! と。一度観てもらったら沢山の発見があるはずです。ウチが気軽に来られる入り口として、機能すれば良いと思ってます」

 映画を観終わった後、昭和ムードまんまの安酒場で一人、気分に浸ってると道端で、泥酔した川谷拓三や室田日出男にバッタリ出くわすんじゃないかと……そんな幸せな妄想に酔える……嗚呼、素晴らしき哉、阿佐ヶ谷!!

■映画館情報

ラピュタ阿佐ヶ谷

住所:東京都杉並区阿佐谷北2-12-21
TEL:03-3336-5440
座席:48席
音響:DS・SR・SRD
URL:http://www.laputa-jp.com/

ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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追悼-プリンスと4本の映画 vol.1 大ヒット作~カルト作品編

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