その歴史60年以上!映画愛が詰まった目黒の老舗劇場とは!

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

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 雅叙園や白金も近くお洒落なイメージの目黒。でも権之助坂商店街は十分庶民的だし、減ってきているとはいえディープスポットはまだ存在する。マイルス・デイヴィスがこけら落としに出たライブハウス「ブルース・アレイ・ジャパン」の並びに、62年の歴史を持つ映画館がある。

■今月の名画座「目黒シネマ」

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 地下へ階段を降り券売機で“入場券”を買う。上映作品のコスプレをした“夢見る映画少女”のようなスタッフに、モギってもらう。『キングスマン』(2015)と『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)のときスタッフ全員が黒いスーツを着てたが、キマッてなくて笑っちゃって、まさに思うツボ。ロビーの映画関連の本を読んで待つ。やがて開始を知らせる可愛らしいベルが鳴る。チリン、チリ~ン♪

 2作品を交互に上映、全席自由席、前売り券ナシ、入れ替え制ナシ、整理券ナシというスタイルは、古き良き名画座そのまんま。作品にもよるけどお客さんは20~30代の女性が多い。『アメリ』(2001)と『アリス』(1988)なんてキュートな組み合せは、思わず来たくなっちゃう。

 ドアには来館したゲストのサインがびっしり。座席はゆったり。最前列だと、先着4名だけど足乗っけ用のオットマンもあり一度使ってみたい。ロビーで長居しても「まだ帰らないの?」って顔をされず、その気なら一日中居てもOK

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■映画興行の歴史がここに

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『クレイマー、クレイマー』 ダスティン・ホフマン メリル・ストリープ 監督:ロバート・ベントン 1979年

 1955年、大蔵映画を率いた弁士・映画館主・映画制作会社経営者の大藏貢が洋画系の「目黒ライオン座」、地下に邦画系の「目黒金龍座」としてオープン。1975年に現在のビルになり再オープンした「目黒オークラ」は当時全盛のピンク3本立て館に。現在でも上野と横浜に系列館が2館ずつある。1982年から「目黒シネマ」に改名、2000年代初頭まではほぼ洋画専門だった。

 “映画オタクと普通の映画ファンの間”を対象に、あんまりマニアック過ぎるのはやらない。いまも近年の作品の合間にポツンと昔の名作を上映するのが嬉しい。『八月の鯨』(1987)を26年振りに当時の字幕で観て思わず泣いた。またずっと観る機会を逃していた矢崎仁司監督の『三月のライオン』(1992)も、やっと観られた。

■支配人・宮久保伸夫さんに訊く

 「ここの運営だけでなくレジャーランドや映画制作のほうも手伝ってますので、結構忙しいですね」。支配人になって18年、現在の劇場の個性を確立された宮久保さんは48歳。

 「12月は力を入れた特集がめじろ押しで、まず2日から8日まで市川準監督の特集第4弾をやります。監督の誕生日が11月25日で毎年11月にやったのですが、今年は企画の犬童一心監督の都合で12月です。1年間かけネットでリクエストを募りベスト5を選び、『つぐみ』(1990)の牧瀬里穂さん、『BU・SU』(1987)の富田靖子さんをゲストにお呼びします。1回目のときは池脇千鶴さん、2回目は成海璃子さん、宮沢りえさん、と毎回豪華なゲストに来て頂いてます」。

 その次週は、役者さんに俳優を志したきっかけの作品や、思い出の作品を選んでもらう“俳優チョイス”第二弾・津田寛治さんが選ぶ2本。第一回目の田中要次さんのときは、ゲストに森下能幸さん、竹中直人さんも来た。

 その他、自作とのカップリングを選んでもらう“自作と観る監督チョイス”という企画もある。是枝裕和監督には成瀬巳喜男監督の『鶴八鶴次郎』(1938)、大根仁監督には市川準監督の『トキワ荘の青春』(1996)、山田洋次監督には成瀬巳喜男監督の『おかあさん』(1952)、塚本晋也監督には自身の『野火』(2014)と市川昆監督の『野火』(1959)を、宮藤官九郎監督には石井輝男監督の『地獄』(1999)を、自作と併映した。

 それと、劇場が観て欲しい組み合わせの“目黒シネマ名作チョイス”。この3つが目黒シネマの名作企画だ。

■劇場のカラーを創作

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入口に置かれた黒板。上映中の作品からスタッフが抜粋した名言が。

 宮久保さんの打ち出した特色は、企画上映を強めたこと、展示物を豊かにしたこと、そしてスタッフのコスプレだ。「この3つが目黒シネマのカラーになりました。手を替え品を替え、お客様に毎回新鮮な気持ちで来ていただきたくて」。展示物はみなスタッフの手作り。『バクマン。』(2010)のときは原作の少年ジャンプの紙面を壁と天井にびっしり貼って敷き詰めた。「壮観で、お客様も驚いていました。スタッフみんなで徹夜の作業だったんです」。

 ラインナップも変えた。「以前は単館アート系という感じの作品を中心にチョイスしていましたが、僕は大作だろうが小品だろうが面白ければなんでもOK。うちは若い女性スタッフも多いので、意見をどんどん取り入れてます」。

■常にベストを出していく

 『シン・ゴジラ』(2016)と『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)は総て力を出し切った企画で、満員御礼、大好評だった。「東宝の目玉のゴジラと、海外のワーナーのキングコングの組み合せはハードルもありましたが、各位に何とか了承を得て、トークは樋口真嗣監督と開田裕治さん、聞き手に樋口尚文さんにお願いすごく盛り上がりました。我々もゴジラにふんして奮闘しました(笑)」。

 出来ることを出し惜しみしないで、常にベストを尽くす。「昔はロードショウ館でも劇場独自の動きがありました。それをやってます。小さいから出来ることがある。個性の競い合いになっていくと面白いんじゃないかと」。

■当時の映画への渇望は、今と比べものにない

 映画どっぷりの青年だった宮久保さん。制作をしたくてフリータ-をしていたが、29才のとき、一度職についたほうがいいか、と思う。「勤めても夢は持ち続けられますから」。昔の新宿ピカデリーでバイトをしていたとき、知人から「目黒シネマ」が支配人候補を募集していることを聞き、結果、めでたく入社。

 「若き三船敏郎に夢中でした。黒澤明の『醜聞〈スキャンダル〉』(1950)の主人公が、画家だけどバイクに乗っていて - 僕も絵を描くのですが -最高に格好良くて。『羅生門』のギラギラとした盗賊も、圧倒的でしたね。自分もあんなふうになりたい、と思いました(笑)」。

 当時、黒澤作品はビデオもなかった。作品を反すうするには脚本を読むしかなく、シナシオ集を買って読んでいた。いま沢山の作品が様々な手段で簡単に観られるが、あの頃の映画への渇望と欲求は、今と比べものにならない

 「好きな作品は沢山あり過ぎて挙げるのが難しいですが、ジョン・カサヴェテスの『グロリア』(1980)、シドニー・ポワチエの『招かれざる客』(1967)、黒澤の『生きる』(1952)、(ミケランジェロ・)アントニオーニの『欲望』(1966)、タランティーノの『レザボア・ドッグス』(1992)、『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(1987)……やっぱりキリがありません(笑)」。

■名画は、“頬をひっぱたいてくれる”

 ある年輩のお客様の言葉が印象に残っているという。「自分は学がないけど、学校が映画だった。若いときに映画に頬をたくさん“ひっぱたかれ”て、そのお陰でいまの自分がある」。話題だから観るだけじゃなく、自分の頬を"ひっぱたいてくれる"作品に出逢うまで、たくさん出かけてほしいと願う。

 「僕らの時代は、自分が何に興味があるか、年間230本は観て、探してました。情報誌“ぴあ”の小さなスチール写真からイメージを膨らんで、確かめに行ったり(笑)、受け取るだけじゃなく想像力、妄想力が豊かで。アタリ・ハズレもあるけど、ダメな映画のほうが、飲みながら話して盛り上がるんですよ。僕だったらラストはこうするのに、とか。年末には、その年の自分のベスト10なんかを言い合いっこしてましたね」。

 とめどなく話が溢れる宮久保さんは本物の映画ファン。「昔はやることがなければ、とりあえず映画館に入ったもんです。イヤなことがあるときも逃げ込んで。2時間の間、主人公に感情移入して自分をすっかり忘れて。沢山観れば、自分の人生をいい意味で“狂わす”1本に出会えます」。

■目黒から愛を込めて

 新宿育ちだが、落ち着いた目黒が大好きだという。「この場所は繁華街でないから、駅まで余韻に浸るのを妨害するものはない。気が向いたら白金、インテリアストリート、中目黒まで散歩してもいい。こんな素晴らしい場所に62年もある劇場に携れて光栄です。僕の代で潰したくない、と強く思います」。永遠に続けて欲しい大切な空間だと、あらためて思った。

 坂を下ってすぐにある居酒屋“蔵”で一杯ひっかけ、家系の魂心家、野方ホープ、じゅる麺池田、食無双、天下一品、今日はどこに入ろう。次の五輪を控え再開発著しいのは同じ。東口駅前のロータリーに面してあった“ミリオンサウナ”は映画、メシの後によく入ったけど7年前に取り壊された。かつての都電、都バスの停車場跡地には高層のマンションとオフィス、商業施設もオープン。しかし、最高に味わい深い銭湯“高松湯”が、目黒シネマと共に健在だから、まだまだ大丈夫!

■映画館情報

目黒シネマ

目黒シネマ名作チョイスVol.23 市川準監督傑作選 観客が選んだBEST5
■日程:2017年12月2日(土)~12月8日(金)1週間開催
■上映作品
第1位『大阪物語』(1999)/第2位『BU・SU』(1987)/第3位『つぐみ』(1990)・『トニー滝谷』(2004)※同票/第5位『ざわざわ下北沢』(2000)
☆スペシャルトーク
・12月2日(土)17:25 『つぐみ』上映終了後 登壇予定:牧瀬里穂・犬童一心/司会:尾形敏朗
・12月5日(火)17:35 『BU・SU』上映終了後 登壇予定:富田靖子・犬童一心/司会:尾形敏朗

目黒シネマ俳優☆チョイス第二弾
2017年12月9日(土)~12月15日(金)1週間開催
■上映作品
『ソナチネ』北野武監督1993年公開作品
『イズ・エー』藤原健一監督2004年公開作品
☆スペシャルトーク:12月9日(土)2回開催
[トークA]12:10『ソナチネ』上映終了後スタート
登壇予定:渡辺哲、大杉漣、津田寛治
[トークB]14:55『イズ・エー』上映終了後スタート
登壇予定:小栗旬、藤原健一監督、津田寛治

住所:品川区上大崎2-24-1 目黒西口ビルB1
TEL:03-3491-2557
席数:100席
URL:http://www.okura-movie.co.jp/meguro_cinema.html FB:http://www.facebook.com/megurocinema Twitter:http://www.twitter.com/megurocinema Instagram:http://www.instagram.com/megurocinema

ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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