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夢はろう映画祭がなくなること!~映画界のバリアフリーって?(4/4)

映画で何ができるのか

ろう者専用のネット上での映画祭や動画配信サイトを開設!?

パートナーシップの盾
東京国際ろう映画祭からCINEDEAFに贈られたパートナーシップの盾(写真:CINEDEAF)

今井:会場からの質問も受け付けましょう。

観客:牧原さんがおっしゃっていた動画配信ですが、ネット上で国際ろう映画祭を開催するのはいかがでしょうか? ただその方式になった場合、ろう者同士が集うという機会がなくなりますので、やはりどこかの場所で開催した方が良いのでは? となるのでしょうか。

ルカ:配信サイトを立ち上げるための新しい技術、スタッフetc……簡単ではないですね。ネットを使って(視聴者を)拡大した方がいいのか、実際に集うことの方を尊重すべきか。その場合、ろう者同士のコミュニケーションをどうするのか。やはりそういうことを考えると、どこか1か所に集まって開催した方が良いのかなと思います。

マイケル:どちらとも言えませんね。いい面も、問題点もあると思います。

ルカ:以前、欧州にはろう者専用の動画配信サイトがありましたが、もうクローズされてしまいました。というのも、上映する作品がなかったのです。なので、先ほども申し上げているように、まずは作品を生み出すことであり、配信サイトにどんな番組を入れるかが重要なのです。

例えばCINEDEAFでは、イタリア映画にもサブタイトルを付けて、配信番組に提供していたこともありました。それぞれの国のろう映画祭も、字幕を付けた作品はたくさん持っているはずなのです。ただ作品そのものに権利があり、(権利を持っている会社に)上映料を支払う必要があるので、まとめて公開するにはお金がかかります。そうなると、中心となる組織がある程度のお金を持っていないと動画配信は難しい。Netflixあたりがその気になって取り組んでくれたら可能かもしれません。

牧原:確かにそうですね。実はネットを使ってろう者の映画を募集して配信しようという計画があったのですが、資金がなく流れてしまった。字幕制作にお金がかかるのです。まず機材を用意しなければなりませんし。やはり、お金に余裕のある会社がスポンサーになってくれたらと思います。

マイケル:映画を買ってきたとして、誰に観せるのかという意見もあるのです。きちんと考えておかないと問題が起きてしまうというのがあると思います。わたしたちには、まだまだやらばければいけないことがたくさんある、ということですね。

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まとめ

2014年の第67回カンヌ国際映画祭で、全編手話によるウクライナ映画『ザ・トライブ』が批評家週間でグランプリを獲得した。映画冒頭には「この映画の言語は手話である。字幕や吹き替えは存在しない」と表記され、聴者はおおいに戸惑ったと同時に、映画にはまだまだ新たな表現方法があるのだと気付かされた人も多いはずだ。今、ろう者は映画の情報保障の環境づくりはもちろん、自分たちの生活・文化に根ざした映画作りに向けて活動している。TDFでも8月16日~20日、ろう中高生映画制作ワークショップをアーツカウンシル東京などが主催している「TURNフェス5」イベントプログラムの一つとして開催する。

ただ映画を学び、公開するに当たっては聴者とのコミュニケーションが必要不可欠となってくる。そのための相互理解、交流および情報発信の場として映画祭が重要な役割を担っている。日本の映画界は2017年よりUDCastを導入して、障害や言葉の壁をなくして誰もが映画を楽しめるようにと尽力しているが、まだまだ全ての作品の普及には至っていない。それにはさらなる聴者の理解の浸透がカギを握っていると言えるだろう。

ルカさんの夢「ろう映画祭がなくなること」は、何らかのハンディキャップを背負ってなかなか映画に接することができない人たち全ての願いではないだろうか。これまでも映画は人種や言葉などさまざまな壁を乗り越え、相互理解のツールとして発展してきた。映画ができることはまだまだあるはずだ。

●UDCast

●東京国際ろう映画祭(TDF)公式サイト

●シアトルろう映画祭(SDFF)公式サイト

●ローマ国際ろう映画祭(CINEDEAF)公式サイト

●文化庁、障害者による文化芸術活動推進事業サイト

●社会福祉法人トット基金公式サイト

●シズオカ×カンヌウィーク公式サイト

●さがの映像祭公式Facebook

●TURNフェス5サイト

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