過去から未来へ!新宿のミニシアター震源地「新宿シネマカリテ」

ラジカル鈴木の味わい映画館探訪記

全景
不思議な模様のある、非日常へと誘う階段を降りてゆくと……。

 半年ぶりに連載再開! 世界の受難は続いておりますが、何とか盛り返してほしいっ!! 映画館は6月1日から徐々に、座席数を減らし間隔を空け、できる限りの感染防止対策をして営業再開。以前にも増し、ミニシアターを応援したいっ!

復活!シネマカリテ

 今年100周年を迎えた新宿武蔵野館の武蔵野興業株式会社の系列館で、2012年に開館した新宿駅から最も近い映画館。JR新宿駅東南口、中央東口から徒歩2分で、飲食店中心の商業施設新宿NOWAビルのB1の便利な場所だ。僕はいつも、向いのスターバックスに寄って時間を調整。

NOWAビル
飲食店中心のNOWAビル。

 1994年から2001年まで、武蔵野館ビル3階に、美術館スペース、カフェもある旧シネマ・カリテ1・2・3があった。渋谷を中心に、都内の単館の劇場に当時の若者が殺到した1990年代のミニシアター文化。新宿で7年間、ブームを担う。以降、ミニシアターは減り、シネマ・カリテも新宿武蔵野館2・3・4になり、名は一旦消える。のち10年を経て、名称が復活(シネマ・カリテの・がなくなり、シネマカリテ に)、新規オープンして8年になる。

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桔梗信玄餅アイス
武蔵野館と同じく名物の「桔梗信玄餅アイス オリジナル」で、ほっこりしましょ。

 地下は、新宿アングラ文化に根ざす感じで良い。階段の壁からスチール写真がお出迎え。ロビーには大型ポップ、ポスター、チラシ、衣装や小道具も盛りだくさん。トイレの中まで写真、一瞬たりとも現実には戻らせない。今回は『行き止まりの世界に生まれて』(2018)にちなんだスケートボードが。受付カウンターでは、武蔵野興業にゆかりのある山梨県を代表する銘菓・桔梗信玄餅を使った「桔梗信玄餅アイス オリジナル」を販売。アルコールはブルックリンラガー、御殿場高原ビール、サントリー角ハイボール。その他はスクリーン1の入口目の前にある自販機で購入できる。価格は場外のものと同じで良心的。週末は武蔵野館で作って運んでくる、ポップコーンも販売している。

アルコール
他の劇場ではなかなか置いていない、珍しい飲み物も。

 おや、スクリーンがやや右寄りにある? 元ビアホールだったため、スクリーン1、2共に左右非対称の珍しい配置。やや右側に座るとセンターになる。オペラ座、ベルサイユ宮殿でも使っているキネット社製の座り心地最高のシート。列と列との間はゆったりとしているので快適さMAX! スクリーン1は96席、スクリーン2は78席だ。

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よみがえるか!?ミニシアター文化

 シネマ・カリテ時代から、新宿のニューウェーブ発信源。東京ではここでしか観られない作品も上映、そのチョイスには定評がある。ウェス・アンダーソンの監督作『グランド・ブダペスト・ホテル』(2013)、松岡茉優主演『勝手にふるえてろ』(2017)などがヒット。歴代興行成績1位は、ティモシー・シャラメ主演『君の名前で僕を呼んで』(2017)。名画のリマスター上映も好評 、2017年には『戦争のはらわた』(1977)、今年1月は『ポゼッション』(1981)40周年HDリマスター版が話題になった。

スクリーン1座席
スクリーン1の場内はご覧のような座席配置に。

 今回は『ようこそ映画音響の世界へ』(2019)を観る。映画に命を吹き込む映画音響の世界とその歴史、これこそ劇場で観ないとまるっきり体感ができない。「コロナ禍の中ですが、おかげさまでヒットしています」と常務取締役・河野優子さん。

 さらに来場者に安心して楽しんでいただけるようにと「感染対策をできる限りしていますが、リスクは100パーセントない、と言えないのがつらいところですね。10月6日から顔認証の体温探知機を武蔵野館と両館共に入れています」と新型コロナウイルス対策に努めているという。

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どんな作品でもかけるのが新宿流

 社内公募から採用した「カリテ」はフランス語で、英語の「クオリティー(品質)」。「このビルは、当社とタカノ(新宿高野)さんの共同経営で、ある時、地下にあったビアホールが閉店することになりましてね。以前より劇場を復活させたいという思いが、皆に強くありましたので、この機会に……と決断しました」と武蔵野興業社長の河野義勝さん。河野優子さんと共に以前紹介した武蔵野館に続いて連載2度目のご登場。

スクリーン2座席
こちらはスクリーン2の座席表。

 新宿は年齢も性別も国籍も異なる多種多様な人が行き交うので、どんな作品でも上映する「名画から娯楽作品までが新宿流」。シリアスなドラマ、ティーンエイジャーもの、ドキュメンタリー、B級ホラなどなど。水野晴郎監督の『シベリア超特急』(1996)を、初めて上映したのもシネマ・カリテだった。

 「当時はイ・ビョンホン主演の作品とか、韓国映画をよく上映していました。でもやっぱり、インパクトでは“シベ超”を超える作品は思いつかないな(笑)」(河野社長)

名物のヒーリングアクアリウム

 ロビーの突き当たりには、次回公開作のディスプレイ。くり抜かれたまん中に、大きな水槽! 熱帯魚が泳いでいた。上映作品のイメージに合わせて中の生き物は入れ変わる。『ロブスター』(2015)には本物のロブスターを、またヒキガエル、深海魚、ウツボ、サメなどなど。

水槽
次回上映作品の大きなポップの真ん中に、水槽が!?

 「以前の支配人が、思いついたのが始まりで。 世話や水の入れ替えが大変ですが、旧カリテから、やっぱりカリテには水槽がないと……ということで」(河野常務)

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カリテ・ファンタスティック! シネマコレクション、通称「カリコレ」

 2013年から、通称「カリコレ」という特集上映を、毎夏に開催している。ジャンルや国籍を問わず新作・旧作・劇場公開されずにビデオスルーになった未公開作約70本を5週間上映。今年は残念ながら中止なので、来年に期待だ!

スクリーン
『ポゼッション』(1981) 監督:アンジェイ・ズラウスキー 出演:イザベル・アジャーニ、サム・ニール

 またレイトショー枠で、ここまでやっていいの!? とシアターの概念を覆す「シネマ・リノベーション・オトカリテ」という伝説の企画があった。DVDが発売された劇場未公開作品を、リクエストに応じてチョイスし、スクリーンで上映しちゃう。入場料はワンコイン500円。レンタルや中古ビデオ屋の隅で、忘れられている作品が大スクリーンで観れちゃうので、マニアたちは泣いて喜んだ。現在はやっていないそうで残念!

映画館ごと楽しんでほしい

 コーヒーのドキュメンタリー『A Film About Coffee(ア・フィルム・アバウト・コーヒー)』(2014)では、実際にロビーで試飲を行った。中国映画『閃光少女』(2017)の時は、劇中の学園の校章を模したステッカーをプレゼントし、本物の楽器「揚琴(ヤンチン)」を購入して展示。怖い映画には、扉を作って、決して開けちゃいけません……で開けるとマジ怖~いのが出てくる仕掛けを設置したり。また、リモートでのトークショーも、何度も開催した。先月上映の『行き止まりの世界に生まれて』では、イリノイ州にいるビン・リュー監督と劇場のMCが、ライブトークショーをした。

自販機
スクリーン1の入り口前に置かれたパンやお菓子の自販機。
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これからも面白いこといっぱい考えています

 カリテと2館連動で開催の武蔵野館100周年記念特集は中断してしまった。「来年に延期です、101年目になりますね。“貧しさに負けた~”で有名なデュエット歌手・さくらと一郎のヒット曲から映画になった『昭和枯れすすき』を上映したかった。1975年の作品で、ロケで当時の新宿の風景が出てきます。主演は刑事にふんした高橋英樹秋吉久美子が兄妹でね……」と思い入れいっぱいに話す河野社長。

アクア
このときにいたのは、このお魚。名前や詳しい習性が手作りのカードに。

 さらに「新宿東口映画祭(仮)として、毎年続けていきたいんです。それから、都内でやっている東京アニメアワードフェスティバルクレイジー・アニメ特集をぶつけようと思っていて。テレビアニメ「チャージマン研!」(1973)のフィルムからHD化のクラウドファンディングのお礼の上映会に協力をします。株式会社KnacK(現・株式会社ICHI)の作品なんですが、僕はKnackで製作進行の仕事をちょっとしていたことがあって。ですから、Knackの作品を片っ端から上映できたらいいと思っています。あとアニメ映画『シリウスの伝説』(1981)。製作のサンリオさんはもともと武蔵野館ビルの一画で商品を売っていたことがあり、当社とは関係が深いんです」と河野社長。100年の老舗、多彩なつながりを持っている。

 「他にも2館をリンクさせた企画を考えています。ディアオ・イーナン監督の『薄氷の殺人』をカリテで上映して、その半券で、監督の最新作『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』(2019)が武蔵野館でご鑑賞の際にグッズをプレゼントする……とか」とさまざまなアイデアを生み出していきたいと河野常務。「考えている企画が多くて、ちょっと取材に来るのが早かったね(笑)。面白いことをたくさんやりますよ、また取材に来てね」と笑顔で語る河野社長。

 はい、うかがいます(笑)。この息詰まる時代こそ、シアターで魂を解放しよう!

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映画館情報

新宿シネマカリテ
東京都新宿区3丁目37-12新宿NOWAビルB1
03-3352-5645
公式サイト
Twitter:@cinema_qualite

ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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