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世を震撼させた殺人事件・犯罪の数々…Netflixのドキュメンタリーが秀作ぞろい!

 実際に起きた犯罪をテーマにしたドキュメンタリー作品をNetflixが次々とリリースしている。実際の事件映像や当時のニュース、関係者のインタビューを使った作品はどれも迫力に溢れている。そこで今見るべき5タイトルをピックアップしてみた。(長坂陽子)

「事件現場から:セシルホテル失踪事件」(2021)

題材にした事件:エリサ・ラム事件

 2013年、アメリカのロサンゼルスを旅行中だったカナダ人女性が、滞在先のセシルホテルから失踪した「エリサ・ラム事件」。警察が捜査を始めると、監視カメラの映像が見つかった。映っていたのはエレベーター内で奇怪な行動をとるエリサの姿。彼女は何かから隠れるように隅に身を寄せたり、大きく腕を振り回したりしていた。警察は手掛かりを求めこのビデオを公開するが有力な情報は寄せられず、公開から数日後、屋上の貯水タンクの中から彼女の遺体が発見される。

事件をドラマチックに脚色しようとする現代社会の怖さ

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 4エピソードから成る「事件現場から:セシルホテル失踪事件」では、捜査にあたった刑事やホテルの支配人、宿泊客の証言をもとに解決までの道のりを描いていく。その中で最も焦点を当てられているのが“ネット探偵たち”の存在だ。監視カメラの映像がネットで公開されたことでSNS上では推理合戦に火がつき、映像に編集された形跡があると主張する者、失踪をこのホテルの暗い過去と関連づける者もいた。遺体が発見されてからは、日本のホラー映画『仄暗い水の底から』 のリメイク『ダーク・ウォーター』との類似性を指摘する者も現れた。ところが、事件は彼らの“期待”を裏切る結末を迎える。警察は彼女がメンタルヘルスの問題に苦しんでいたこと、それが原因で起きた不慮の事故による死だと発表。解決を望んでいたはずの探偵たちはこの結論に不満を抱く。より刺激的、劇的な展開を彼らは望んでいたのだ。本作では、事件のみならず、それをドラマのように消費してしまう現代社会の姿を暴き出している。

Netflixオリジナルシリーズ「事件現場から:セシルホテル失踪事件」(全4話)は独占配信中

「ナイトストーカー:シリアルキラー捜査録」(2021)

題材にした事件:ナイトストーカー事件

 1985年、ロサンゼルスで1人の日系人女性が自宅で射殺された。その後、同一犯によるものと思われる殺人やレイプ、強盗、暴行が続く。被害者は女性のみならず老夫婦、若い男性、さらに子どもにまで及んだ。マスコミは猟奇的な事件に熱狂し、犯人に“ナイトストーカー”の名を与え連日報道した。現場や遺体に悪魔のシンボルとされる逆五芒星が描かれていたことが明らかになり、市民たちを恐怖に陥れる。現場には、特徴のある銃弾やロサンゼルスに1足(!)しか出荷されていないスニーカーの足跡も残されていた。しかし犯人逮捕には繋がらない。犯行は1年近くも続き少なくとも13人が殺害された。

犠牲者に寄り添った視点が事件の残虐さを際立たせる

 リミテッドシリーズ『ナイトストーカー:シリアルキラー捜査録』では、当時捜査にあたった刑事の回想、被害者の家族や生存者の証言をもとに、犯人リチャード・ラミレス逮捕までの道のりを描いている。連続殺人犯を追った作品の多くは加害者、特にその人物が犯行に至るまでの経緯や精神状態に焦点が向けられがちだ。今作もラミレスの生い立ちや彼の発言に言及してはいるが、中心となるのは犠牲者たち。実名と年齢、事件現場の写真や遺族の発言を取り上げることで、命を奪われた人たちの人間性を強調。ある日突然人生が絶たれてしまう残酷さを突きつける。

 彼を逮捕した刑事の1人は「何がラミレスのような男を作ったのかわからない」と語る。この作品は彼を犯行へと駆り立てたもの……心の闇を推測することはしない。事件を冷静に描くことでラミレスの残虐性を際立たせる。

Netflixオリジナルシリーズ「ナイト・ストーカー: シリアルキラー捜査録」(全4話)は独占配信中

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「サムの息子たち:狂気、その先の闇へ」(2021)

題材にした事件:サムの息子事件

 スパイク・リー監督のサスペンス映画『サマー・オブ・サム』(1999)の題材にもなった「サムの息子事件」。1970年代に起きた、ニューヨークで若い女性やカップルを狙った連続殺人事件である。犯人は「サムの息子」と称し、マスコミや警察に手紙を送り続けた。その支離滅裂な内容の手紙は、無差別殺人に怯えていた市民の恐怖を煽った。しかし翌年、地元の郵便局員デヴィッド・バーコウィッツが逮捕。警察と検察はバーコウィッツ単独の犯行と発表した。

人生を真相究明に捧げたジャーナリストの孤独

 しかし、この発表に納得しなかった者がいた。IBMの社内ライター、モーリー・テリーだ。今作は彼がこの事件の真相を追求し、家庭も仕事も犠牲にして30年以上も取材を続けた姿を描いたリミテッドシリーズ。当初は興味から事件を調べ始めたテリーだが、そのうちに警察に対する憤りが原動力に。当時ニューヨーク市は市長選挙を控えており、現職の市長は事件を早期解決することで警察、ひいては市政の有能さをアピールすることで再選を有利にしようとした。テリーは、そんな彼らの政治優先の姿勢に反発し、犠牲者たちのために真実を明らかにしようと事件に挑んでいく。そしてテリーは、バーコウィッツに共犯者やカルト教団との関係があったとにらんでいく。

 テリーはマスコミを通じ悪魔崇拝との関連性を訴えるも、警察や一部のマスコミから「事件に執着するあまり事実以外を認めない」「自説に都合よく事実を捻じ曲げている」といったレッテルを貼られるようになる。主張が受け入れられないままテリーは死去。しかし彼の死から3年後、科学技術の進歩によりある驚きの事実が明らかになる。ラストシーンは、真実を追い求める過酷さと孤独を物語っている。

Netflixオリジナルシリーズ「サムの息子たち: 狂気、その先の闇へ」(全4話)は独占配信中

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『アマンダ・ノックス』(2016)

題材にした事件:ペルージャ英国人留学生殺害事件

 2007年11月、イタリアのペルージャでイギリス人留学生の女性メレディス・カーチャーが殺害され、遺体で発見された。事件から4日後、彼女とハウスシェアしていたアメリカ人留学生のアマンダ・ノックスとその恋人でイタリア人のラファエル・ソレチが逮捕される。警察は、遺体に残された性的暴行の痕跡とノックスの過去の男性関係から、ノックスが集団セックスをメレディスに持ちかけ拒否されたことから殺害に至ったと発表した。現地と英米のマスコミはノックスの過去を洗い出し「セックス狂の悪女」という像を作り出していく。事件は多くのニュースやワイドショーで取り上げられ、マイケル・ウィンターボトム監督の『天使が消えた街』(2014)の題材にもなった。

容疑をかけられた女性が出演し、無実を訴える

 今作もこの事件を追ったものだ。しかし、これまでの作品と大きく異なるのはノックス自身が登場し、自分が事件とはまったく無関係であり容疑者に仕立てあげられたと訴える点である。彼女は警察に都合のいい供述を強要されたことやマスコミ報道が捜査に影響したことを切々と語る。

 ノックスとソレチは一度有罪になるが控訴裁で無罪に。その後再び有罪判決を受けるが2015年にイタリアの最高裁判所が無罪の判決を下した。無罪になった理由として、最高裁はDNA鑑定の杜撰さと、報道が過熱したことにより警察が逮捕を焦り十分な捜査を行っていなかったことを挙げている。マスコミと警察、さらに世論が絡み合い捜査や裁判の行方を決定していく。本作では、ネットやテレビが事件や関係者の人生に大きな影響を及ぼす力を持っていることを改めて指摘している。

Netflix映画『アマンダ・ノックス』は独占配信中

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「ガードナー美術館盗難事件 -消えた5億ドルの至宝-」(2021)

題材にした事件:ガードナー美術館盗難事件

 1990年、アメリカのボストンにあるガードナー美術館で盗難事件が発生。犯人は2人の男で、美術史に残る名画13点、5億ドル相当を奪って逃走した。

マフィアの関与など諸説ささやかれた未解決事件

 今作は美術館の関係者、捜査に当たったFBI捜査官や刑事、さらにジャーナリストたちの証言を元に、アメリカ史上最悪と言われた美術品強奪事件を描いたリミテッドシリーズ。事件当夜に勤務していた警備員や美術品窃盗の前科がある男が容疑者に浮上するものの決定的な証拠は見つからず、美術館館主が報奨金を出しても有力な情報は寄せられず捜査は行き詰まった。そんな中、マフィアとの関連性が浮上する。ボストンはアイリッシュマフィアの活動拠点だ。美術品がIRA(アイルランド連合軍)の資金になったという説、マフィアが警察との取引のために持ち去ったのではないかという見方が浮上した。美術品の返還と引き換えに、他の犯罪で服役しているマフィアメンバーの減刑を要求するという事例はそれまでにもあった。

 この事件は現在も未解決で、美術品も見つかっていない。奪われたものの中にはレンブラントが描いた唯一の海洋絵画「ガラリアの海の嵐」、生涯に30数作品しか残さなかったとされるフェルメールの「合奏」なども含まれていた。ドキュメンタリーには、事件が起きる前に美術館が撮影していたこれらの絵画の映像も登場。今は犯人以外見ることができない作品が見られる。同じくアート界を舞台に繰り広げられる現代アートの贋作詐欺を追ったドキュメンタリー映画『だましだまされアート界:贋作をめぐる物語』(2020)と並び、美術ファンにとって貴重な作品だ。

Netflixオリジナルシリーズ「ガードナー美術館盗難事件 -消えた5億ドルの至宝-」(全4話)は独占配信中

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